商業施設新聞
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第438回

(株)相鉄アーバンクリエイツ 常務取締役 佐藤洋人氏


ゆめが丘ソラトスなどが完成
24年度に横浜駅西口の方向示す

2024/7/9

(株)相鉄アーバンクリエイツ 常務取締役 佐藤洋人氏
 相鉄線は2023年3月に東急線との相互直通運転を開始し、さらに相鉄いずみ野線のゆめが丘駅前には7月に大規模複合商業施設「ゆめが丘ソラトス」が開業することから、沿線のポテンシャルが高まっている。ターミナルである横浜駅西口の大改造構想の公表も予定されるなど、その動向に注目が集まる。(株)相鉄アーバンクリエイツ(横浜市西区)の常務取締役 佐藤洋人氏に話を聞いた。

―― 相互直通運転開始から約1年が経過しました。
 佐藤 新幹線が利用可能な新横浜にも乗り換えなしで行けるようになるなど、利便性が飛躍的に向上した。当社では新横浜の将来性も踏まえて23年5月に新横浜駅前のオフィスビルを取得した。沿線のまちづくりへの関心の高まりも感じており、この機運を逃すことなく、新たな面開発の仕掛けや様々な事業への取り組みを積極化していく。当社として、相互直通運転の直接的なインパクトをまず取り込めるのは、ゆめが丘駅周辺のまちづくりになる。

―― 7月25日にゆめが丘ソラトスが開業します。
 佐藤 同事業は地権者の方々とともに20年以上まちづくりに取り組んできた。その要となる大規模複合商業施設のゆめが丘ソラトスの開業という一つの節目が見えてきた。同施設は、周辺の豊かな自然環境を活かし、地域と密接に連携して、地域の開かれた「ベース(ハブ)」となるような体験交流拠点としていく。
 MDでは特に食に注力し、地元生産者の野菜などを購入できる「ゆめが丘マルシェ」を設けるほか、地元企業などによる飲食・食物販店舗が複数出店する。さらに今後増える新たな住民と地域の方々の交流ができるようシェアキッチン「Live Kitchen SORATOS」や、交流空間「SORATOS Room」なども設ける。
 1次商圏はドライブタイムで15分程度を想定。また、相鉄線や横浜市営地下鉄ブルーラインによる来館は、全体の4割程度を目指す。

―― ゆめが丘駅周辺では分譲マンションなども建設が始まっています。
 佐藤 様々なニーズに対応するべく、分譲マンションに加え賃貸マンションも供給し、泉ゆめが丘地区土地区画整理事業の計画人口は約5200人を設定している。駅近くには病院もすでに開院し、住宅地としてのポテンシャルは高まっている。相互直通運転による利便性の向上を掛け合わせることで、相鉄線沿線外の様々な人にも選ばれるエリアとなることを目指したい。

―― 横浜駅西口の鶴屋町では再開発事業が竣工しました。
 佐藤 住宅部分の引き渡しに続き、最上階42階の事業共創による社会課題解決のための複合施設「Vlag yokohama(フラグ ヨコハマ」、サービスアパートメントもあり様々なニーズに対応する国内初出店の「相鉄ホテルズ ザ・スプラジール横浜」、そして低層部の商業施設で構成する「THE YOKOHAMA FRONT」が、6月20日に開業した。同施設は鶴屋町エリアの特性を踏まえ「デュアルバリューの創造」をコンセプトとした。商業施設では、1階は地域に開く路面店を、2階はデッキに接続する利便性などを享受できる日常使いをイメージした。同施設の開業で、鶴屋町方面への人流がさらに増加し、エリアのポテンシャルも高まると考えており、エリアの店舗と共存共栄していきたい。

―― 横浜駅西口では大改造構想の公表も予定されています。
 佐藤 横浜駅西口エリアでは、相鉄グループが保有する物件も含めて老朽化が進行し、自然災害への備えも含めて抜本的な対応が必要な状況になっている。将来の建て替えも含めた、相鉄グループとしての横浜駅西口の将来像を24年度中に示す予定だ。横浜駅西口の大改造は当社だけでは実現できず、エリア内の地権者や関係者、行政などとの協力・連携が不可欠であり、この公表をきっかけとして対話や協議をさらに積極化していきたい。

―― このほか沿線での開発事業などは。
 佐藤 神奈川県海老名市の中新田丸田地区で土地区画整理事業が始動し、当社を含む共同企業体が業務代行者として参画する。当社は商業施設の開発・運営に携わる予定だ。また、相鉄沿線の駅前施設は老朽化やライフスタイルの変化などを踏まえ、順次建て替えやリニューアルを推進する。

―― 今後の展望は。
 佐藤 事業領域の拡大も進めており、東京都羽村市で着工した当社初の物流施設「CREDO羽村」が24年中に竣工予定だ。さらに5月には、当社初の海外事業として、シドニーのオフィス・商業複合施設へ出資した。
 現状、当社の収益資産は横浜駅と沿線に集中しているが、首都圏を中心に海外にも事業を拡大することで、ポートフォリオを最適化していく。7月には相鉄不動産投資顧問(株)を設立する予定で、ファンドなども活用し収益の多様化を図ることで事業基盤を強化し、横浜駅西口の大改造の実現にも結び付けていく。


(聞き手・特別編集員 松本顕介/新井谷千恵子記者)
商業施設新聞2551号(2024年6月25日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.438

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