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第578回

(株)安川電機 上席執行役員 ロボット事業部長 岡久学氏


次世代自律ロボに多くの引き合い
日本、米国、欧州で拠点を拡大

2024/6/7

(株)安川電機 上席執行役員 ロボット事業部長 岡久学氏
 (株)安川電機(北九州市八幡西区)は、ロボット事業を強化している。データの活用による変種変量生産など製造現場の高度化に向けた対応力を高めているほか、ロボットの活用拡大に向けて次世代ロボットを市場に投入。日本、米国、欧州での拠点整備も進めている。同社の上席執行役員でロボット事業部長の岡久学氏に話を伺った。

―― 直近の需要動向について。
 岡久 2024年2月期におけるロボット事業の売上高は前期比約5%増の2347億円だった。中国などにおいてエレクトロニクス関連の投資が弱含んだが、高水準だった23年2月期の受注分を着実に納入したほか、欧米や韓国などでティア1を含めたEV関連の投資が堅調に推移したことで増収を達成した。

モートマンネクスト
モートマンネクスト
―― 製品面での取り組みは。
 岡久 自律性を備えた次世代ロボット「MOTOMAN NEXT」(モートマンネクスト)を開発し、23年末から販売を開始した。ロボットシステム自身が周りの環境に適応しながら作業を判断することが特徴で、センサーの位置情報から周囲状況の認識・判断処理し、動作計画を立てて実行する。そして作業の状況をロボットシステム自身がチェックし、その状況に合った方法で作業を完結できる。23年末に東京ビッグサイトで開催された「2023国際ロボット展」では、モートマンネクストを用いた食器の下膳作業、不揃いの野菜を箱詰する作業、医療器具の滅菌作業などの自動化デモを実施し、多くの引き合いをいただいている。ロボットをすでに活用している業種だけでなく、ロボットを初めて活用するような業種への提案も強化している。

―― 注力されていることはありますか。
 岡久 自動車関連やエレクトロニクス関連など、ロボットをすでに多く活用しているお客様において、データ活用による変種変量生産など製造現場の高度化に向けた取り組みが進んでおり、当社としても「i3-Mechatronics」(アイキューブメカトロニクス)などを活用した提案を強化している。アイキューブメカトロニクスは、当社の自動化技術に、デジタルデータのマネジメント技術などを統合して生産状況をリアルタイムで可視化し、作業状況のデジタルツインなども利用しながら、変種変量生産にも柔軟に対応できる自動化ラインを構築するソリューションコンセプトで、ビッグデータの活用によるタクトタイムの短縮や、品質データの分析と解析による検査の均一化などに貢献している。

―― そのほかの取り組みを強化されていることは。
 岡久 産業用ロボットの一般産業分野での活用範囲の拡大だ。例えば、食品メーカーと惣菜用の蓋閉めロボットを共同開発したり、産業用ロボットの技術を農業分野に応用したりする取り組みも進めている。

―― 貴社における生産体制も強化されていますね。
 岡久 国内では、本社内にロボット用機械加工部品(基幹鋳物部品)の生産棟を24年2月期に整備した。そして現在、本社棟の隣接地にモーターとロボットの一貫工場「第5工場」を整備している。こうした取り組みは部品の内製化や生産体制の強化といった面に加え、アイキューブメカトロニクスなどを自ら活用し、その価値を高めるといった狙いもあり、第5工場については、モーターとロボットというサイズや生産規模が異なるものを同じ棟内で生産するというチャレンジングな取り組みでもある。
 海外では、米オハイオ州の拠点にあるロボットシステム工場を増床しており、アイキューブメカトロニクスをはじめとした生産の高度化に向けた提案をさらに強化する。また、企業間連携の面でもオハイオ拠点は重要な役割を担うとみている。米国はAIや半導体をはじめとした先端技術の集積地でもあり、例えばモートマンネクストには、米エヌビディア社の高性能コンピューティングユニットが搭載されている。米州での事業を強化していくなかで、先端技術を持つ企業との連携も拡大してきたい。このほか、スロベニアにおいても現拠点の近接地にロボット生産と流通機能を持つ新工場の整備を進めており、25年末~26年の稼働を予定している。

―― 25年2月期を含めた今後の方針について教えて下さい。
 岡久 25年2月期は、EV、新エネルギー、半導体といった成長市場の投資を的確に捉えていき、ロボット事業の売上高は前期比4%増の2451億円を目指す。また、アイキューブメカトロニクスやモートマンネクストなどの提案を強化し、生産の高度化や自動化の拡大などに貢献していきたい。
 7月4~6日には愛知県国際展示場で開催される「ロボットテクノロジージャパン」に出展する予定であり、アイキューブメカトロニクスやモートマンネクストに関するデモのほか、車載電池の搬送などに最適な可搬重量1tのスカラ型ロボットなども展示する予定だ。ぜひブースにお越しいただき、自動化に向けた困りごとをご相談いただければと思う。

(聞き手・副編集長 浮島哲志)
本紙2024年6月6日号11面 掲載

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