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第54回

シェールガスブームで期待高まる天然ガス車


多い導入メリット、国内ではホンダとマツダが開発

2014/7/18

 シェールガスブームが北米地域を中心に活況を呈するなか、にわかに注目されているのが、天然ガスを燃料として走行する天然ガス車(Natural Gas Vehicle:NGV)だ。

 NGVの世界的な業界団体であるNGVグローバルの統計によると、NGVの世界累計出荷台数は、2012年で1670万台に達した。過去10年間の平均成長率は21.6%となっている。NGVの普及が進んでいる地域は、北米や東南アジア。特に北米では、大型長距離トラックや路線バス、小型の輸送用カーゴ、特殊車両などの商用車においてガソリン車からのシフトが進んでおり、路線バスなど公共交通分野向けの新車のうち約3割をNGVが占めるほどに急成長している。

 一方、一般社団法人日本ガス協会(東京都港区)によると、国内のNGV出荷台数は、12年度が1127台、13年度が1011台。累計出荷台数は13年度までで4万3601台。車種別比率は、トラックが43.5%、軽自動車が22.6%、小型貨物車が13.0%、塵芥車が8.9%、フォークリフトなどが4.7%、乗用車およびバスがそれぞれ3.6%。導入者別比率は、一般企業(ガス事業者以外)が65.7%、ガス事業者が19.4%、地方自治体などが14.9%。

レジリエンスの主要車両

 NGV導入のメリットは、(1)低環境負荷、(2)高い経済性、(3)長期エネルギー確保などが挙げられる。
 (1)では、酸性雨や光化学スモッグなどの原因となるNOxやSOx、喘息など健康に影響する黒煙や粒子状物質などの排出を少なくできる。また、ガソリン車と比べてCO2発生量が20~30%低いため、地球温暖化への影響も小さい。
 (2)は、シェールガスの生産拡大や採掘の低コスト化、さらには北米やカナダにおけるLNG輸出プロジェクトの本格化などにより実現する。また、LNG調達国の増加により低価格化や安定調達も期待できる。現状、ガソリンや軽油よりも2割以上安い。
 (3)は、現在の石油依存から天然ガスへシフトすることで実現するもの。石油の可採年数は約50年、従来型天然ガスが同60年と推定されているのに対し、シェールガスをはじめとした非在来型ガスは100年以上と言われている。

 こうしたNGVは、我が国が進めている防災や減災に対する政策「ナショナル・レジリエンス(国家強靭化)」の主要車両として位置づけられている。現在、首都直下地震や南海トラフ巨大地震などを想定し、大消費地に供給できるガスパイプラインを構築する計画が進行中だ。

2社が開発競う

 自動車メーカーの動きも活発だ。国内では、ホンダがNGV「シビック・ナチュラル・ガス」を商品化したほか、マツダが北米や東南アジア市場を狙って開発したCNGとガソリンのデュアルフューエル車「Mazda3 SKYACTIV-CNG」を開発している。
 シビック・ナチュラル・ガスは、110馬力、1.8Lの直列4気筒SOHC i-VTECエンジンを搭載。燃費性能は、市街地で27マイル/ガロン、高速道路で38マイル/ガロン、両方の組み合わせで31マイル/ガロン(いずれもガソリン換算ガロン)となっている。また、ドライビングの状況に応じてエンジンレスポンスを最適化することで、走行性能を向上できる「ドライブ・バイ・ワイヤー・スロットルシステム」も採用した。

 一方、Mazda3 SKYACTIV-CNGは、北米、カナダで需要が急増している天然ガス燃料に対応したもの。あくまでコンセプト車だが、今後需要に応じて量産車を投入していく考えだ。

Mazda3 SKYACTIV-CNG
Mazda3 SKYACTIV-CNG
 最大の特徴は、ガソリンタンクとCNGタンクの2つを搭載し、ガソリンとCNGの両方の燃料を使用できる点。排気量2.0Lのガソリンエンジン「SKYACTIV-G 2.0」に、CNGインジェクター、CNGタンク、CNG圧力レギュレーター、CNG給油口、CNG電子制御ユニットなどのCNGを使用できるユニットを追加した。SKYACTIV-Gは高圧縮比を特徴とし、高圧縮状態で燃焼させるCNGエンジンのベース技術として適しており、最小限の変更でCNGエンジンに転用できたとしている。

 CNGタンクは、圧力20MPaに対応し、最大で7.5Lの圧縮天然ガスを格納することが可能。同社によると、CNGエンジン車は同排気量のガソリンエンジン車と比較してCO2排出量を2割前後削減できるとしており、より多くのカスタマーに対しクリーンかつ「走る歓び」を提供できるとしている。

 同社はまた、天然ガス、ガソリン、水素などのマルチフューエルに対応し、ロータリーエンジンを搭載した電気自動車(EV)「RE レンジエクステンダー」を開発している。同社のEV「デミオEV」をベースに開発されたものだが、ロータリーエンジン発電により航続距離を同車の2倍の400kmに伸ばした。同社によると、ロータリーエンジンはガソリンエンジンやディーゼルエンジンより静粛性に優れるほか、よりコンパクト化が可能という。

 同社はエネルギー多様化に向けて、ハイブリッド車、クリーンディーゼル車などあらゆる環境対応車に対応する「マルチソリューション」を推進。キーとなるのが環境性能とダイナミックパフォーマンスを大きく向上するエンジン技術「SKYACTIV」だ。

半導体産業新聞 編集部 記者 東哲也

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