国内調査会社では、2024年の世界新車販売台数は、新興国での需要拡大などにより5年ぶりに9000万台(23年8815万台)の大台へと回復すると予想していた。だが9月までの累計販売台数をみると、中国では新エネルギー車が牽引し前年比2%増、欧州ではHEVが大きく伸長し同1%増となっているものの、米国は同1%減、日本にいたっては同9%減とマイナス成長で推移しており、9000万台に手が届くかは微妙な状況となっている。
中国自動車工業協会(CAAM)が発表した24年9月の新車販売台数は、前年同月比2%減の280.9万台となった。車種別の内訳を見ると、乗用車が同2%増の252.5万台、商用車が同24%減の28.4万台で、このうち新エネルギー車(NEV)は同42.3%増の128.7万台と大きく増加し、NEV比率は45.8%と5割に迫ってきている。
なお、1~9月の累計販売台数は前年同期比2%増の2157.1万台で、内訳は乗用車が同3%増の1867.9万台、商用車が同2%減の289.2万台で、このうちNEVは同33%増の832万台と好調に推移しており、自動車販売台数全体に占めるNEV比率は38.6%となっている。
中国に次ぐ世界第2位の自動車市場である米国の7~9月期の新車販売台数は、前年同期比2%減の390.9万台となった(モーターインテリジェンス調べ)。車種別では、小型乗用車ならびにピックアップトラックがプラス成長となったものの、中型・大型乗用車、ミニバン・フルサイズバン、SUVなどは軒並みマイナス成長となった。米国ではディーラー在庫が改善傾向にあり、メーカーが提供するインセンティブも増加している。しかしながら、FRB(米国連邦準備制度理事会)による政策金利引き下げを前に、消費者が自動車ローン金利の低下を期待し、新車購入を先延ばしにていることが伸び悩みの主な要因とみられる。
一方、1~9月累計の販売台数は、前年同期比1%減の1169.9万台。動力別では、BEVが同8%増の94.4万台、PHEVが同12%増の22.9万台、FCVが同84%減の435台、HEVが同33%増の112.8万台、そしてガソリン車が同5%減の939.8万台となっており、中国市場と同様、HEVを含むクリーンビークルが市場の牽引役となっていることが見て取れる。
国内OEMの24年4~9月の販売・生産
トヨタ自動車の連結販売台数は、認証問題への対応などにより、生産停止を余儀なくされたことを受け、前年同期比4%減の455.6万台。また、トヨタ・レクサス販売台数も同3%減の502.9万台となった。電動化比率は、北米や欧州、アジアなどでHEV(ハイブリッド車)の販売が好調に推移し、前年同期比から9.1ポイント増の44.4%まで増加した。
なお同社では、上期における台数減と、下期の生産回復を織り込み、通期の連結販売台数を、前回見通しの950万台から10万台減の940万台へ下方修正した。また、トヨタ・レクサスの販売台数も、前回見通しの1040万台から30万台減の1010万台へ下方修正し、電動車比率は46.0%を見込んでいる。
下期以降の生産台数の回復に向けて宮崎副社長は、「上期の国内生産台数は、認証課題への対応と安全・品質を最優先とする環境を見つめ直すため、期初見通しの163万台を下回る153万台となった。下期は、トヨタらしいクルマづくりの基盤を活かし、期初見通しプラスアルファの175万台に回復させる。稼働を一部停止していた米インディアナ工場も10月から再開しており、下期はグローバルで年間1000万台の生産ペースへ戻していく」と語った。
日産自動車の世界販売台数は、欧州、その他地域でプラス成長となったが、主要市場である北米、中国、日本でマイナス成長となり、前年同期比2%減の159.6万台にとどまった。なお、上期の状況を受け、通期の販売台数見通しを、前回見通しから25万台減の340万台へ下方修正した。また、通期生産台数も前回見通しの345万台から25万台減の320万台へ修正している。
一方、同社では、現在の業績悪化と厳しい事業環境に対応する、事業再生計画を明らかにした。具体的には、26年度までに年間350万台レベルの販売台数でも将来の成長に向けた投資を継続的に可能とする収益構造に変革する方針。
日産自動車が示した事業改革の概要
内田社長は、「すでに複数の取り組みを実行しているが、健全なキャッシュフローを維持し、収益性を向上させるため、グローバルの生産能力を20%削減し、9000人の人員削減を行う。製造原価の削減については、次世代EVでの部品種類の最小化、仕様の最適化をICE、e-POWERモデルにも前倒しで適用する。あわせて、会社資産の合理化や設備投資、研究開発費の優先度の見直しを実施。これらにより26年度までに、24年度比で固定費を3000億円、変動費を1000億円、それぞれ削減する」と語った。
ホンダの四輪車販売台数は、前年同期比8%減の177.9万台にとどまった。日本、北米、欧州などの主要マーケットではプラス成長となったものの、アジアが前年から26.8万台減と振るわなかった。なかでも中国では同23.5万台減となり、早期のてこ入れが不可欠な状況にある。
上期の状況を踏まえ、同社では通期の販売台数見通しを、前回計画の390万台から10万台減の380万台へと下方修正した。アジアでの減少を反映したもので、このうち7万台が中国での販売減としている。
一方、上期における四輪電動車のパワートレイン別の販売台数は、ハイブリッド車(HEV)が前年同期比横ばいの42.1万台、プラグインハイブリッド車(PHEV)が同18%減の0.9万台、バッテリー電気自動車(BEV)が同4倍の2.8万台、燃料電池車(FCEV)が前年と同じく0台となった。
なお、同社ではBEVの通期販売台数として10万台を計画しており、このうち7万台弱が北米市場向け。「インセンティブは北米中心に使っている。特に26年イヤーモデルから本格的な自社開発のBEV投入を予定しており、そこに向けたモメンタム形成がまずは一時的にある。一方で、環境規制対応にミートさせるための台数といったことやクレジットの売買といったことも勘案しながら、いろいろとミックスさせて展開していく」と副社長の青山真二氏は語った。
スズキの世界販売台数は、主戦場であるインドでマイナス成長となったものの、日本、欧州、アジア(インド除く)、その他でプラス成長となり、前年同期比2%増の156.6万台となった。
地域別の販売台数を見ると、インドでは、小型車の販売が期初想定を下回ったことから、同3%減の86.1万台。日本市場では、軽自動車、登録車ともに増加し、同10%増の34.3万台と高成長を果たした。安定した生産と軽自動車の新型スペーシアギアの販売が好調に推移した。下期に向けてはSUVのフロンクスを10月に市場投入。10月末時点で1万台の受注を獲得しており、下期の拡販が期待される。
一方、通期の販売台数見通しについては、日本や欧州において上方修正したが、インドでの上期実績を踏まえ、前回予想から9000台減の324.4万台へ下方修正している。
マツダの生産台数は、前年同期比2%増の60.3万台。23年7月に2直操業を開始した米アラバマ工場およびメキシコ工場の稼働が改善し、生産台数が増加した。一方、グローバル販売台数は前年同期比2%増の63万台となった。日本、中国、欧州、その他地域はマイナス成長となったものの、最も収益性の高い北米市場でトップラインの成長を果たした。
北米市場では、CX-50やCX-90の拡販が貢献し、米国とメキシコでは過去最高の販売とマーケットシェアを達成した。日本における販売減は、CX-8の生産終了や初期に生産したCX-60の品質問題が主な要因。中国市場では、NEV車(新エネルギー車)の攻勢や値引き競争の激化により販売が苦戦した。
なお同社では、上期の状況を踏まえ、通期販売台数を8月の前回見通しから5万台減の135万台(前年実績比9%増)へ下方修正。「ほとんどの市場で前年を上回る販売を目指すが、北米が最も貢献する見通し。米国販売は前回好評から5000台上方修正し、45万台を計画している。北米には今秋にCX-50ハイブリッドモデルを投入する。そのほか、日本・欧州にはCX-80、中国にはセダンモデルのEZ-6を導入する。新商品の高い商品力をてこに、下期の台数成長と通期台数見通しの達成を目指していく」(毛籠社長)としている。
三菱自動車のグローバル販売台数は、前年同期比5%増の40.8万台となった。中国他の販売は、23年度に実施した構造改革(中国市場からの撤退)により、大幅な減少となったものの、ASEAN地域、豪州、日本、北米、欧州などの主要地域でプラス成長を堅持した。
日本では、一部OEMの出荷停止の影響などにより、自動車総需要が減少したが、三菱自動車では、デリカミニの販売モメンタムが全体を牽引し、市場シェアの拡大とともに、販売台数が増加した。また、北米地域の大半を占める米国では、自動車需要そのものは、前年並みで推移したが、各社の車両供給増加に伴い販売費を積み増すなど、競争が激化。同社のインセンティブも市場動向に合わせて増加したもよう。
SUBARUの世界生産台数は、海外生産が前年同期比3%増の17.7万台と堅調に推移したものの、国内生産が年度初めの生産調整の影響により、同7%減の29.8万台となったことから、同4%減の47.5万台にとどまった。
また、グローバルでの連結販売台数は同4%減の45.0万台のマイナス成長となった。国内はレイバックを含むレヴォーグシリーズなどの登録車販売を中心に増加し、同11%増と好調に推移。主力市場である米国では、販売奨励金を業界平均に対して抑制しつつ拡販に注力したものの、厳しい競争環境により、同3%減の31.7万台とマイナス成長を余儀なくされた。
なお、上期の業績を踏まえ通期の生産台数は期初発表値から1万台減の95万台、また販売台数も同様に3万台減の95万台へ下方修正した。
電子デバイス産業新聞 編集部 記者 清水 聡