―― 2013年の総括を。
吉澤 13年の売上高は前年比6%減の7億2300億ドルとなった。主力のタッチスクリーンコントローラー「TrueTouch」が業績を牽引したものの、スマートフォン(スマホ)が急速にコモディティー化し、中国市場の台頭も著しかった。これに訴求する製品を用意できていなかったことが要因だ。
しかし14年に入って回復しており、第1四半期(1~3月)の売上高は前期比1.5%増の1億7030万ドル、第2四半期も同9%程度増加する見通しだ。
―― 日本市場について。
吉澤 日本セグメントの業績は14年第1四半期が底となった。国内市場はスマホベンダーが縮小したため、TrueTouchが金額、数量ともに11年比で12年は50%減、13年はさらに50%減と縮小している状況だ。また、日本企業が強みを持つデジタルカメラでも、コンパクト市場が30%近く縮小した影響を受けている。
しかし、一眼レフについては堅調で、タッチパネル向けやUSB3.0の採用が進んでいるほか、コピー機の操作パネルが大型化・静電容量式タッチパネル化していることでTrueTouchの採用が増え、第2四半期以降は回復する見通しだ。
―― 売上高の7割を占めるTrueTouchへの依存からの脱却を図っていますね。
吉澤 これまではスマホ向けが圧倒的だったが、製品シフトを進めてきたことが奏功し、売上高に占める製品構成は変動している。現状は、国内外ともに(1)車載、(2)産業機器、(3)白物家電向けが好調だ。
(1)では、カーナビでTrueTouchの採用が進むほか、オーディオや空調部分などの機械式ボタンが静電容量タッチボタンに置き換えられたことで、センサーコントローラー「CapSense」の採用が増えている。また、エンジン回転数の書き込み用などにFRAMの採用が拡大している。
なお、FRAMは12年に買収したラムトロン社の製品で引き合いが多く、多分野で採用され、年率25%の勢いで伸長している。
(2)では、工作機械などFA向けで強く、インフラ投資の復活を背景に低消費電力の非同期SRAMの採用が進むほか、メモリーアクセスが高速なnvSRAMの採用も増えている。
(3)では、13年に発表した、CPUコアにARMコアM0を搭載したPSoC 4000シリーズが好調で、引き合いが拡大している。
―― 生産体制について。
吉澤 11年からマニラ(フィリピン)の後工程拠点でオートメーション化を進め、生産工程の改善を図ってきた。ASEにも協力いただき、製品輸送工程の短縮などを実施した。恥ずかしながら、11年当時は納期遵守率が82%程度だったが、現在は99.5%まで改善し、さらに継続している。納品までに8週間を要していたが、4.5週間にまで短縮できた。
前工程は米ミネソタ州のファブ4とグレースセミ(上海)で90nmまで、65nm以降をUMCに委託している。
―― 注力製品について。
吉澤 14年に入ってから精力的に新製品を発表しており、すでに11週連続で実施している。14年はこれら製品の種まきの年となる。特に5月に発表した65nmプロセスの16Mビット高速非同期SRAMは、世界初のECC(エラー訂正コード)内蔵型で、FAやコピー機向けに引き合いが好調で、採用も決まっている。
14年は半導体市場の成長が前年比横ばいと予測されているように、当社も微増程度を見積もっているが、15年を収穫の年にできるよう、新製品の拡販を進める考えだ。
(聞き手・本紙編集部)
(本紙2014年6月4日号1面 掲載)