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日揮の金光 健氏、「海外医療事業展開と課題」を講演(2)


「脳外・健診・内科主体のERと50床、35億円投じトップブランド目指す」

2014/5/7

金光 健氏
金光 健氏
 日揮(株)事業推進プロジェクト本部の理事・副本部長の金光 健氏による、JPI(日本計画研究所)主催の特別セミナー「日本政府の成長戦略『医療パッケージ輸出』の先駆的事業に位置づけられた、日揮(株)の海外医療事業展開と課題、キーポイントの開示~カンボジア救命救急センター病院プロジェクトの概要~」を紹介する2回目は、計画が進むカンボジア病院の概要について伝える。

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◆北原茂実氏がカンボジア事業参画を要請
 日揮のカンボジアプロジェクトは、2010年10月に日揮が紹介を受けて(医)社団KNI(北原国際病院)の北原茂実理事長を訪ね、北原氏から事業参画を要請されたことからスタートした。11~12年度に経産省「日本の医療サービスの海外展開に関する調査事業」の調査に参加、13年から事業計画、資金調達の協議を進め、13年12月に出資を機関決定し、この春に事業会社の設立を予定している。
 カンボジアは、18.1万km²と日本の半分ほどの国土に1541万人が住み、GDPは132億米ドル。周辺国では、医療ツーリズムが盛んなタイより、ベトナム(人口8800万人)、ラオス(650万人)、ミャンマー(4800万人)、インドネシア(2億4000万人)あたりが、カンボジア開設以降の次の病院を展開する有力候補と見ている。
 カンボジアは、ASEAN随一の平均7%台の成長を遂げ、13年から17年までの平均成長率は6~7%と予想されている。医療の状況は、日本と比べ、人口1万人あたりの医師数は10分の1以下の2人、看護師・助産師は5分の1以下の8人、病床数は23分の1の6床にとどまっている。カンボジアの外資病院は、本国への患者転送を優先し、カンボジア国内で患者を完治させることに積極的ではない。カンボジア資本の私立病院は、カンボジア人医師の態度の悪さや汚職の面で人気がなく、医師の技術への不信感も存在する。さらに、国立病院は、支払能力の低い患者が主に利用する病院であり、日揮が計画する病院とは競合せず、これらのことから、日本人医師による病院は既存病院にない差別化を図れると見ている。

◆小さいながらもトップブランドの医療施設を
 カンボジアの死亡者数トップ5は、順に、インフルエンザ・肺炎、結核、冠状動脈性心臓病、脳卒中、高血圧であるが、実際には成人病やがんの患者の増加も隠れており、今後の経済成長とともに、それらが顕在化する可能性が高く、感染症、急性期では救命救急や専門医療(がん・脳疾患・心臓)、慢性医療(糖尿病、生活習慣病など)、予防医学といったニーズが求められている。
 こうしたことから、カンボジアに設置する新病院は、「充実したスタッフ」「優れた施設・設備」「日本式の医療サービス」を志向し、医療レベルだけでなくアメニティー、情報システムの先端性などを複合的に備えた、小さいながらトップブランドを持つ医療施設の実現を目指す。スタート時は、「高度専門医療」として脳神経外科を行い、「地域密着型」医療として「救急」「リハビリ」を実施し、「日本式予防医学」として「健診・ドック」「生活習慣病管理」を実施する。
 カンボジア進出の背景に、(1)経済水準と比べて医療水準が低いため病院ニーズが大きい(自国の医療に対して不満が高い、医療目的の海外渡航者が年間21万人いる)、(2)法規制が少なく参入障壁が低い(日本の医師のライセンスを利用できる、100%外資での設立が可能である)、(3)パートナーの北原脳神経外科病院が先行して実績を積んでいる、(4)高度医療、サービスの質、環境で差別化を図りやすい(ただし昨今、外資病院の参入が増加し医療環境は変化している)、(5)他国への広がりや関連サービスへの展開のステップとなる(ASEANにおける大手病院との提携や、周辺ビジネスなどへの展開)を挙げる。

◆脳外・救急、健診・内科主体に50床、3500万ドル投資
 事業概要は、総投資額3500万ドルのうち、2800万ドルを出資金、残る700万ドルを政府系金融機関からの融資でまかない、出資金は日揮が1470万ドル(出資比率52%)、産業革新機構が1230万ドル(46%)、KMSI((医)社団KNI系のKitahara Medical Strategies International)が50万ドル(2%)を負担し、(仮称)カンボジア日本病院を経営する事業会社を設立する。事業会社は、建物や医療機器などの資産を所有し、診療を実施するKMSIと提携し運営を行う。(医)社団KNIと関連のKMSI、NPO日本医療開発機構は、カンボジアでの調査とクリニックの運営を通じて、マーケットの把握と運営ノウハウを蓄積している。
 施設は、RC造り4階建て延べ4600m²の規模となり、1階にエントランス、救急処置室、更衣室、倉庫とサービスヤード、2階に外来、画像診断、生理・検体検査、薬局、救急処置、人間ドック、3階に手術、ICU(10床)、リハビリ、医局・事務、4階が病棟、屋上に庭園を整備する。診療は脳神経外科、一般内科、健康診断サービスを手がけ、病床数は50床。画像診断機器はCT、MRI、汎用X線診断装置、多目的血管造影装置、ポータブルCアームなどを装備し、電子カルテシステム、患者問診システムといった情報システムも導入する。
 スケジュールは、これまでの予定より若干遅れる見通しで、これから詳細設計に移行する。詳細設計と施工業務は分離して委託し、施工委託先の選定を設計終了後に進める。
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