電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第42回

スマートウオッチなどウエアラブルデバイスが切り開く医療の未来像


~一方で半導体の最大消費アプリのパソコンは一気凋落でついに3億台~

2014/1/24

(株)産業タイムズ社 代表取締役社長 泉谷渉

 現在のIT全体が少し元気がないなかにあって、スマートフォンやタブレットは爆発的成長が続いている。スマホは2012年で6億5000万台、2013年は一気に伸びて9億5000万台を達成したと見られる。ここ2~3年内には20億台に近づくと予想されている。ケータイの主役はいまやスマホなのだ。これに連動するタブレット端末もついにノートパソコンを台数ベースで抜き去り、2013年は1億5000万台に達したと見られている。

 最近ではスマホやタブレットを使ったヘルスケア事業も着々と準備が進んでいる。病歴データをやり取りしたり、健康状態を定期的にスマホで管理したりすることは充分にできることなのだ。

 ところで、LEDという半導体は、医療に関して貢献できる独自性能を備えているチップなのだ。紫外線LEDは照射するだけでがん細胞を抑制できるという実験結果がすでに出ており、本格的研究が進んでいる。赤色LEDは指の先に照射すれば、血液中のヘモグロビン酸素の濃度が測れるという優れものだ。スマホの画面上にLEDを仕込み、そこに指を当てれば血圧などの重要データが測れるという機種の開発も目前に迫っている。いつも持ち歩くスマートフォンならば、わずらわしさがなく健康管理ができるのだ。

 「スマートフォンに続く大型商品としてスマートウオッチ、スマートグラスが次世代端末として高い注目を集めるようになった。スマホとの連携でショートメッセージや通話ができ、内蔵センサーによるデータ収集を活用することで、ヘルスケアなどへの応用も期待されている」
 こう語るのは半導体産業新聞の清水聡記者である。スマートウオッチについては韓国サムスンが2013年9月に「GALAXY Gear」を発表し世界を驚かせた。眼鏡状の端末であるスマートグラスは米グーグルがすでに試験販売を開始、2015年にも一般販売を開始する見込みだ。韓国と米国に先行されたものの、日本勢もこの分野については、徹底的に世界市場で戦う体制を固めている。ソニー、セイコーエプソン、東芝、日産など高いデバイス技術を持つ日本勢が挑戦状を叩きつける日は近づいている。こうしたスマートウオッチやスマートグラスに代表されるウエアラブルデバイスは、クラウド時代のヘルスケアモニタリングとして大きく活躍することは間違いないだろう。

 脳内血流、心臓拍動、呼吸、脳波、血流、血中酸素など生体現象のセンシングこそ予防医学の重要なファクターとなるところなのだ。理想を言えば、24時間、365日、常にこれを測定するべきなのだ。しかしウエアラブルになれば、こうしたこともかなりは実現できることになる。

 東京大学名誉教授の板生清氏は今後のウエアラブルの見通しについて次のように語るのだ。
 「これからは自分を自分が守る時代なのだ。健康を守る情報システムの基本構成は何といってもセンシングに始まる。脳波センサー、心電・心拍センサー、加速度センサー、体温センサー、呼吸センサーなどが必要であり、ここには電子部品技術、MEMS技術、バイオ技術などが駆使されることになるだろう。ヒューマンレコーダーをワンチップでできるようにならないか、といつも願っている」

 さらに驚嘆のウエアラブルも出てきている。それはスマートリング(指輪)である。指輪を動かすだけでスマートフォン、タブレットと連動してかなりのことができるようになる。またクラウドとつながれば、リングをはめた指を動かすだけで電子機器や照明、自動車が作動する。もちろんヘルスケアにも大きな武器となってくるのだ。

 一方、これまでのITの主役であったパソコンの凋落ぶりは目を覆うばかりだ。ピークで4億台を超えていたパソコンは、2013年に至ってついに3億台強の水準に激落してしまった。2012年に対しては10%を超える2桁台のマイナス成長であり、落ち込み幅は過去最大となってしまった。年末商戦についてもスマホやタブレットに押されまくり、パソコンの伸びは非常に低かったのだ。こうした傾向に対して、半導体アナリストの古参である南川明氏は次のようにコメントする。

 「なんだかんだといっても、パソコンを主役とするコンピューターは半導体の出口として最大であり、全アプリの35%を占めている。この激落が半導体に与える影響は大きい。一方でスマートフォンは非常に伸びており、ポストスマホの製品群もラインアップが出揃った。しかしながら、半導体消費という点でいえば、こうした小さな端末はビッグインパクトがない。パソコンに代わる大型商品は、なかなか出てこないだろう。また先ごろTSMCは、16nm世代からもはやメタル線幅を変えないことを明らかにした。微細化の時代はまさに終焉のときを迎えたのだ」

パソコンの世界出荷台数は2年連続の前年割れ

サイト内検索