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メディポリス指宿、世界初のリゾート滞在型がん治療は2年半で840症例


菱川センター長「乳がん/膵臓がん治療の研究開始、海外からも患者誘致」

2013/11/26

指宿陽子線治療施設
指宿陽子線治療施設
 鹿児島県指宿市といえば、砂むし温泉と竜宮伝説で知られたところ。最近では観光特急「いぶたま」人気で観光客が急増しているという。この指宿で2011年4月から先進医療である粒子線(陽子線)治療を開始したメディポリスがん粒子線治療研究センター(指宿市東方5188、Tel.0993-23-5188)は、世界に類を見ないリゾート滞在型がん治療施設として今や国内外の注目を集めている。
 「南九州から世界に向けて光を放つ医療」を基本コンセプトとし、04年7月に旧グリーンピア指宿の跡地(103万坪=東京ドーム77個分)を(株)新日本科学が落札し、このプロジェクトはスタートした。06年3月に運営主体となるメディポリス医学研究財団が設立され、「切らずに治療する」粒子線(陽子線)によるがん治療施設の取り組みを決定し、中核施設のがん粒子線治療研究センターの建設に着手、11年春に開業した。センターの延べ床面積は6000m²。ベッド数は19床、職員数は67人(13年10月末時点)。
 同センターの粒子線治療装置(陽子線)は最新鋭のものであり、三菱電機製を採用している。360度あらゆる角度から粒子線照射可能な回転ガントリーが最大の特徴であり、この照射室は3室(そのうち、1室は研究用)を持つ。
 事務部長である住吉一彦氏は、この設備についてこうコメントする。
 「ガントリー(陽子線照射装置)は、約175tもあり、360度あらゆる角度から照射可能になるように回転するが、実に1mm単位で制御している。その巨大な重量を支えるコンクリートの壁厚も3mあり、安全・安心の治療ゾーンだ。施設全体としては、陽子線治療室、加速器(シンクロトロン)、回転ガントリー、がん診断装置(CTおよびMRI)、X線TVで構成されている」。
 メディポリス指宿の特徴は、世界に類を見ないリゾート滞在型医療であることだ。隣接するリゾートホテルでは、森の緑に囲まれた自然環境の中でゆっくりと温泉に浸かりながら滞在し粒子線治療を受けることができるのだ。
 これまでに累計840人以上が治療を受けている。これまでは、九州エリアの患者が9割を占めていたが、最近では関東・関西などの遠方から来る人も増え、全体の2割強を占めるほどになっているという。リゾート滞在医療のニーズが増えていることがうかがえる。
 また、世界中からの患者受入体制も整備が進み、すでに中国人患者の治療実績もある。13年9月には、国際的な医療施設認証機関であるJCI(Joint Commission International)の認証を取得している。日本の医療施設では8番目(西日本では初)の取得となるが、粒子線がん治療施設としては世界初となる。
 菱川良夫センター長は、患者さんの表情は「治療とともに明るくなってくる」として次のようにコメントする。
メディアポリスセンター長 菱川良夫氏
メディアポリスセンター長 菱川良夫氏
 「やはり、指宿という抜群の自然環境にある施設が患者さんに安らぎを与えていると思う。竜宮伝説の地であり、いくつものパワースポットもある。開聞岳や池田湖などの美しさ、そして何よりも海のすばらしさ、山のすばらしさ。私たちは病院らしくない病院、患者さんらしくない患者さんがいる病院を目指している」。
 菱川センター長は、神戸大学医学部卒業で医学博士。日本粒子線治療研究会代表世話人、日本放射線腫瘍学会大会長などを歴任し、鹿児島大学、神戸大学などでも客員教授を務めてきた。
 13年10月現在、粒子線がん治療施設は世界で四十数カ所、日本国内では千葉、兵庫、静岡、福島、福井など12カ所ある。メディポリス指宿は九州では初の施設となるが、菱川センター長は兵庫県立粒子線医療センターの初代院長(終身名誉院長)であり、多くの経験を活かし指宿の施設を世界的なものにする、との強い意思を見せている。
 ところで、ドイツのシーメンスなど粒子線がん治療施設に取り組む外国メーカーは多いが、まずこの分野では三菱電機、日立、住友重工などの日本勢が圧倒的シェアを占めており、さらなる装置の開発が求められている。
 粒子線治療の適応とされるがんは、頭蓋底、頭頚部、肺、縦隔、肺臓、膵臓、腎臓、前立腺など数多い。ただし、胃や大腸など消化管のがん、複数のリンパ節転移のあるがん、血液のがんなどは治療の適応にはなっていない。メディポリスがん粒子線治療研究センターは今後の取り組みとして新規分野の適応に全力を挙げていくという。
 「現在、乳がんの陽子線治療について研究を行っており、それに伴う機器や技術の開発も進めている。また、九州大学先端医療イノベーションセンターとの共同研究による乳がんおよび膵臓がんの陽子線治療に関する研究も開始している。センターの使命は『幸せな医療の提供』であり、今後は国内だけでなく、国外の患者さんの期待にも答えたい」(菱川センター長)。
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