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厚労省の宮永敬市氏が講演、再興戦略における介護ロボ実用化支援(下)


宮永氏「『福祉機器が介護保険を変える』という意気込みで開発を」

2013/11/12

宮永敬市氏
宮永敬市氏
 JPI(日本計画研究所)主催の特別セミナーで、厚生労働省老健局振興課 福祉用具・住宅改修指導官 介護支援専門官の宮永敬市氏による講演「日本再興戦略における新介護ロボット実用化支援の具体施策と重点活用~『ロボット介護機器開発5カ年計画』の実施 介護現場ニーズ 実証試験普及啓発等」が行われた。宮永氏の講演は、(1)介護保険をとりまく状況について、(2)介護ロボットに関する施設の現状について、(3)介護保険制度における福祉用具サービスについて、(4)介護ロボット実用化支援に関する取り組みについて、の順で進められた。2回目の今回は、その(2)~(4)の内容に沿って伝える。

◇   ◇   ◇

◆福祉用具の特徴2点を知ることと提示が重要
 宮永氏は、介護ロボットを含む福祉用具の特徴として、福祉用具は利用する方が望む生活を達成するための手段(「杖の利用は、歩けるようになることが目的でなく、何かをしたいために杖を利用して歩き、それができるようになる」というように、生活目標を達成するための手段)であることと、福祉用具が効果的に活用されるためには援助技術が必要(一般の電化製品などと異なり、利用する方の状況に応じた援助技術が必要、適切な利用がなされない場合、かえって利用する方の身体機能などの低下を招く恐れがある)を挙げ、福祉機器の利用者に対し、この2点を提示していかなければいけないとアドバイスした。
◆介護ロボットの情報提供が不可欠
 施設における新規の福祉・介護機器の導入状況では、「新たな機能」の付いた福祉・介護機器を導入した施設は1割台にとどまり、その導入の目的は「介護職員の負担軽減」が6割以上を占めた。
 介護ロボット導入についての意識では、「適切なものがあれば導入を検討したい」と回答したのは、施設管理者の3割以上、介護スタッフは5割近くに達した。
 また、介護ロボット導入を現在の介護の現場にあてはめて考えた場合の評価は、「現場は介護ロボットに関する認知がなく評価できる状況ではない」の回答が、施設管理者で50.0%、介護スタッフで59.4%を占め、宮永氏は、情報提供の必要があると指摘。「導入により介護負担が軽減されることへの期待はある」との回答はそれぞれ43.9%、45.3%に上り、関心の強さが表れた。
◆介護ロボットで介護負担軽減と産業再生へ
 社会福祉施設の労働災害(腰痛など)の増加が目立っており、福祉・医療分野における腰痛予防対策指針(改訂)が6月18日に提示され、対象者の残存機能などの活用、福祉用具(機器・道具)を積極的に使用すること、原則として人力による人の抱え上げは行わせないことなどが定められた。
 宮永氏は、(4)介護ロボット実用化支援に関する取り組みについては、介護する家族の高齢化や介護従事者の腰痛問題を背景に、介護ロボットの活用により職場環境の向上、介護負担の軽減が期待されるとした。その一方で、日本再興戦略において介護ロボット産業の活性化が挙げられ、高齢者や障がい者の自立支援の促進、介護者の負担軽減を図ることができる実用性の高い介護ロボットの開発を加速化させる「開発5カ年計画」を実施することとされ、介護ロボットを保険給付対象とする際の考え方など、今後、専門家を交えた議論を行い、方向性を定めていくと概説した。
◆移乗介助/移動・排泄支援/見守りが重点分野
 そのうえで、介護ロボットの開発支援について、経済産業省と厚生労働省による13年度からの開発の重点分野として、移乗介助(1)(ロボット技術を用いて介助者のパワーアシストを行う装着型の機器)、移乗介助(2)(ロボット技術を用いて介助者による抱え上げ動作のパワーアシストを行う非装着型の機器)、移動支援(高齢者等の外出をサポートし、荷物を安全に運搬できるロボット技術を用いた歩行支援機器)、排泄支援(排泄物の処理にロボット技術を用いた設置位置調節可能なトイレ)、認知症の方の見守り(介護施設において使用する、センサーや外部通信機能を備えたロボット技術を用いた機器のプラットフォーム)を挙げ、開発支援をするロボットは、要介護者の自立支援促進と介護従事者の負担軽減に資することが前提と説明した。
◆5カ年で優秀機器を国内市場から海外展開へ
 また、今年のターゲットとして在宅の高齢者の生活を支えるといった観点から、検討を進める必要があることを示した。
 経済産業省が主導する「ロボット介護機器による自立促進・介護負担軽減5カ年計画」は、重点分野において(1)ニーズ志向の、(2)安価に、(3)大量の供給を目指し、13年度に採択審査で補助金対象者や一般事業者を決め、14~15年度に研究開発を促進し、16年度以降にコンテストを実施、優秀事例は国内で本格導入し、海外展開を目指すもの。
◆厚労省は14年度に介護ロボットの実用化支援
 14年度厚生労働省予算概算要求においては、福祉用具・介護ロボットの実用化支援(一部新規)として、1.8億円を盛り込み、福祉用具や介護ロボットの実用化を支援するため、介護現場の機器に関する有効性の評価手法の確立、介護現場と開発現場のマッチング支援によるモニター調査の円滑な実施などを推進する。また、実用性の高い製品化された介護ロボットの市場化を推進するため、介護現場への試用機器の配置や機器を使用した援助技術の指導・講習を実施する。こうして、介護ロボット産業の活性化を実現、介護負担の軽減など働きやすい職場環境の推進、地域包括ケアシステムの構築を推進する。
 宮永氏は、「『福祉機器が介護保険を変える』という意気込みで(開発に)取り組んで欲しい」と、有用な介護ロボットの製品化に期待を込めた。
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