商業施設新聞
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第395回

(株)カワボウ 代表取締役社長 川島政樹氏


マーサ21、足元商圏を活かす大改装実施
地域共生を意識した施策が光る

2023/8/29

(株)カワボウ 代表取締役社長 川島政樹氏
 岐阜市にあるショッピングセンター「マーサ21」が、この春大型改装を完了した。マーサ21はイオンを核とした単館系SCだが、周辺には全国的にも知られるSCがひしめく。そうした中、「今回の改装では周辺のSCを過度に意識せず、地域の皆様に“ずっと”使い続けてもらえることを意識した」という。マーサ21を運営する(株)カワボウ代表取締役社長の川島政樹氏に話を聞いた。

―― 施設の沿革から。
 川島 もとは繊維系の会社で、オイルショックを経て事業の転換を模索し、工場用地を活用する形で1988年にマーサ21を開業した。イオンをキーテナントとした施設で、数回の増築を経て、現在は延べ4万8000m²、約130店の体制だ。

―― 周辺環境は。
 川島 岐阜駅から車で5~10分と近いが、一番の特徴は肥沃な足元商圏。岐阜の中心市街地は、空洞化しドーナツ化現象が進んだ。その結果、マーサ21の足元が岐阜市内で最も人口が多いエリアとなり、車で20分圏に40万人以上が居住する。ニューファミリーが多く、県下では学校が多い文教地区でもある。

―― 周辺にSCが多いエリアでもあります。
 川島 イオンモール各務原、カラフルタウン岐阜、モレラ岐阜など全国的に知られるSCがあるが、足元商圏はマーサ21が一番多く恵まれている。その特徴としてイオンをはじめマーサマルシェ(専門店)の需要が高い。寿司店「じんごろう」は開業当初から出店いただき、持ち帰り寿司と飲食ができる。もともと地元の繁華街「柳ヶ瀬」にあった本格的寿司屋を誘致し、35年を経て地域一番店に成長した。マーサ21ならではのリーシングだ。食以外ではファッション、家電、ホームセンター、書店、アミューズメントなどがあり、ワンストップで揃う。

―― 直近、大型改装を実施しました。
 川島 改装53店、新店21店の大規模改装を行い、2022年春~23年春にかけてオープンした。コンセプトは『ずっと、こころ動く、出会いを。』。7年前の15年に大規模改装をした際のコンセプトは、周辺の競合と差別化できるよう『もっと、心動く、出会いを。』を掲げ、機能の拡大や強化を進めた。今回のリニューアルでは、今後も施設の拡大を続けることを、我々はお客様に求められているのかと考えた。お客様が一番困るのは我々が持続できず、なくなってしまうこと。そこで今回〝ずっと〟として持続可能な施設となることを意識した。

―― 具体的にはどんなことを行いましたか。
 川島 主な取り組みとして、イオンは開業以来の最大の改装をしていただいた。食料品売り場では冷凍食品の機器を一新し、イオンの最新フォーマットになった。イオン食料品売り場の周辺は、食の専門店エリアのマーサマルシェがあり、「スーパーマーケット成城石井」、食のセレクトショップ「こととや」などを導入した。館の北エリアにはイベント広場も移設したので特に賑わうエリアになった。大型のテナントとしては欠落MDを補完するためホームセンターの「コーナン」を導入、家電テナントは「テックランド」、書店テナントは「丸善」に改装させていただいた。また、1階のフードコートは420席から630席に増席した。

―― 開業35年を迎えますがきれいな施設です。
 川島 ビルメンテナンス業者の力だ。今回のリニューアルでは、持続できるSCとするため一部エリアの床や壁面も刷新した。授乳室の整備も行い、ニューファミリーが使いやすい施設にした。また使いやすい平面駐車場を増やすため、あえて建屋を一つ取り壊したのも大きな点だ。ショッピングセンターとしてリース面積は減ってしまうが、平面駐車場は約100台増設し約2800台確保した。

―― 1階のフードコートはどのように増席したのですか。
 川島 物販区画だった場所を転換した。1階は賃料を稼ぐ場所とされ、施設によってはフードコートを上層階に入れることもあるが、マーサ21は身近な施設として1階に置くことをポリシーとしている。フードコートに隣接する「チェリーガーデン」という屋外広場も緑化し、お子さまが遊べる広場へ改装した。08年の増床改装の際、緑を少し減らしたことからお客様から残念だと多くの声をいただいた。今回、天然芝など緑あふれる空間に戻したことで再び多くの人で賑わうようになった。一連の改装で約35億円を投資したが、やはり“持続可能”を意識した『ずっと』の取り組みを通じてお客様に満足いただくことを意識している。

―― 35億円は少なくない額です。
 川島 我々は全国に施設があるわけでなく、この施設で得た利益はこの施設に還元する。この施設で事業を続けるためにも地元に貢献できる施設をつくらないといけない。今回の改装工事も地元のゼネコンなどの繁栄につながるし、地域貢献は、当施設の投資以外にも岐阜城への寄付なども行っていく。県立岐阜商業の生徒たちの販売実習先としてスペースを貸し出したり、いかに地元と繁栄するかを考えている。

(聞き手・編集長 高橋直也)
商業施設新聞2509号(2023年8月22日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.415

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