(株)日本メディック(神奈川県藤沢市)は、業務用マッサージチェア「あんま王」を開発・販売している。すでに「イオンモール」「ららぽーと」などの商業施設、温泉施設、空港など多くの施設に設置されており、累計設置台数は2万台を超える。商業施設では空きスペースを収益化できると好評だ。一定の買い替え需要も取り込んで、さらなる設置台数拡大を目指す。同社の城田裕之会長に話を聞いた。
―― あんま王が誕生した経緯から伺えますか。
城田 1983年に前身となる会社が創業し、当時は温浴施設や健康ランドで家庭用マッサージチェアの体験販売を行っていた。この事業は家電量販店の台頭などによって継続が難しくなったが、利用者などから「マッサージチェアはこれまでどおり置いてほしい」という要望は多く、新たにコインタイマーを取り付けたコイン式マッサージチェアの運用を開始した。
コイン式マッサージチェアは温浴施設や健康ランド以外に商業施設などでも導入いただけるようになった。しかし、当時取引していたメーカーの体制変更に伴い機器代の分割支払いができなくなり、これをきっかけに当社は民事再生法の適用を受けた。ただ、マッサージチェアの設置により収益を得るという事業には可能性を感じていたため、民事再生可決後は業務用に特化した機器を自社で製造し、様々な施設へ導入していくという手法へ舵を切った。これがあんま王の始まりで、12年3月に1号機を発売するに至った。
―― あんま王の特徴について。
城田 業務用としての耐久性を担保している。一般的に家庭用機器の強度は1日30分程度使用する想定だが、それでは業務用には向かない。1日中稼働していてもすり減りにくい耐久性を意識し、加えて、メンテナンスのしやすさにもこだわっている。すぐに直せないと稼働時間が減り、収益に影響してしまうためだ。軽微な故障であれば現場で簡単に取り換えができる仕様としている。出張修理が必要な場合でも、非稼働時間を少しでも減らせるよう、依頼を受けたら速やかに出向くことを重視している。
最新シリーズの「あんま王Ⅳ」には、人通りの多い場所でも気兼ねなくご利用いただけるようフェイスカバーを取り付け、プライベート空間を創った。またカラーバリエーションも増やし、これまで主流だった黒に加えて白い機器もリリースした。これが、施設内の景観を重視するショッピングモールなどから好評だ。もちろん、身体に一番負荷がかからない姿勢を保つ「無重力感覚」はこれまでのシリーズから引き継いでいる。
―― これまでの導入先は。
城田 温泉施設、スーパー銭湯、フィットネスクラブ、商業施設、コインランドリー、ネットカフェ、駅、空港など、実に様々な場所で設置いただいている。商業施設では「イオンモール」「ららぽーと」「イトーヨーカドー」「アリオ」などへの導入実績がある。24年秋には累計設置台数が2万台を突破した。
収益が見込めるようになると設置台数を増やしていただけるケースも多い。「イオンモール沖縄ライカム」には施設全体で20~30台を設置。アイドルスペースが収益を生み出せ、かつお客様にも喜んでいただけるため、商業施設などから引き合いを多くいただいている。
―― 累計設置台数の目標はありますか。
城田 新しい設置先の開拓や未導入の施設への新規設置などを通じ、累計設置台数を3万台、さらには5万台に増やしていきたい。一方で、導入後数年が経過した施設からは順次買い替え需要が発生する。一定の台数を一度設置すれば、ある程度の買い替え需要が見込めるようになるだろう。
今年は最新シリーズ「あんま王Ⅴ」の販売を開始する予定だ。乗り心地を含めあらゆる面でⅣよりアップデートしており、自信を持ってお届けしていく。
―― 今後の抱負を。
城田 全国各地でより多くの方にあんま王を体験いただき、ゆくゆくは家庭用マッサージチェアの開発・販売にまで事業を広げていきたい。また、あんま王の導入施設、例えばフィットネスクラブに別途導入できるような健康器具などの新規開発も行いたい。
(聞き手・安田遥香記者)
商業施設新聞2592号(2025年4月15日)(6面)