商業施設新聞
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第482回

大和ハウス工業(株) 代表取締役 専務執行役員 ビジネス・ソリューション本部長 下西佳典氏


買い取り型事業が年500億円規模に
商業施設開発はグループ力を結集

2025/5/27

大和ハウス工業(株) 代表取締役 専務執行役員 ビジネス・ソリューション本部長 下西佳典氏
 大和ハウス工業(株)(大阪市北区)は、大和リース(株)などグループ力を結集して事業を進めていく考えだ。商業施設開発は建築費や人件費が上昇し、出店余力があるのは一部のテナントに限られている。ここをグループの力を活かして突破する。買い取り型ビジネスも拡大しており、様々な方法で事業に取り組む。同社代表取締役専務執行役員ビジネス・ソリューション本部長の下西佳典氏に聞いた。

―― 足元の商業施設開発状況は。
 下西 開発環境は厳しい。今日の建築コスト上昇は、法改正でSCの開業数が最多となった2008年と比べると倍以上だ。出店できるテナントも限られ、どの施設もテナントの顔ぶれが同じようになっている。特に郊外ではその傾向が強い。
 食品は値上がりしているため、それに応じた賃料単価に対応いただけるが、それ以外は賃料単価に転嫁できていない。賃料単価が20年前と変わっておらず、テナントも原価や人件費上昇分のコスト増を商品に転嫁できていない。従ってテナントがいない・賃料が出ない、という商業施設開発者にとっては2重の苦しみ。特に新規開発は初期投資が非常にかかり、人手不足の影響で人件費も上昇し、BM・PMも含めてランニングコストも上がり、商業施設の運営原価上昇ものしかかる。

―― 貴社では買い取りコンバージョンするリブネス事業「BIZ Livness」を展開しています。
 下西 BIZ Livnessはビルや倉庫の買い取り販売など、事業領域としては住宅以外となる。商業施設においては、単独店舗、2~3店舗の複合型からSCもある。お話を多数いただくが、市場性や出店できるテナントのニーズがあるなどの条件が揃って初めてできるビジネス。当社が運営する場合と、収益物件なので当社が付加価値をつけて投資家に売却する事例も多い。

―― 取得の状況は。
 下西 24年上期の仕入れ実績は仕入れベースで50件、220億円に上った。24年度下期は24年12月時点で25件、約130億円で推移しており、通期で500億円程度に達する見通しだ。25年度もこのペースで展開する予定だ。

―― BIZ Livnessは今後も注力しますか。
 下西 もちろんだ。だが、土地を仕入れて完成させ、商品にしていく開発型も当然力を入れる。土地を作り出していく力とテナントのニーズを捉える力が一層求められるが、その面は当社が得意とするところだ。
 先ごろ神奈川県内でホームセンター跡を取得した。22年より展開している都市型近郊NSC「コトエ」シリーズとしてコンバージョンし、26年春の開業を目指している。管理・運営はグループの大和ハウスリアルティマネジメントが担う。今後も三大都市圏を中心に全国の政令指定都市周辺で用地を取得する考えだ。

―― ホテル開発も積極的です。
 下西 19年にホテル開発事業(請負と開発売却事業)は約1000億円あったが、20年のコロナ禍では0となった。流通店舗事業全体の売り上げの約25%を占めるため、このインパクトは大きかった。
 だが、開発を止めずに4年間で年2店、計8つのホテルを開発した。そして大和ハウスリアルティマネジメントが、新たなホテルブランド「BATON SUITE」を立ち上げ、リゾート型ホテル事業に参入する。1号店として3月27日に沖縄県北部の古宇利島に「BATON SUITE沖縄古宇利島」を35室で開業した。

―― 大和リースなど、グループの連携を強化中です。
 下西 24年3月から流通店舗事業本部の中に大和リースも加わった。同社は「フレスポ」「BiVi」「ブランチ」などがある。大和ハウスグループの商業施設には「イーアス」「フォレオ」「アクロスシリーズ」などがある。ブランド統一も検討しているが、地域のお客様から愛されているので、軽々に変えられない。まずは屋号の下に「大和ハウスグループ」を入れてもらう考えだ。

―― 今後両社の強みをどう活かしますか。
 下西 今までそれぞれ独自にやっていたことで、開発などでは競合した面もあった。まずはライバルにならないようにしたい。プロポーザルなどで競合しそうな時は互いに情報を共有して、有効な手段を見出す。さらには物件の調査や建築請負など、両社の開発能力を掛け合わせながら共同で行う事例が増えてくる。ブランド統合も含めて取り組むテーマは多い。大和リースは物件を所有するケースが多く、当社は売却することが多いため、そのバランスを考慮する必要もある。

―― 最後に一言を。
 下西 法改正は商業への影響が大きい。08年に借地借家法が改正され、事業用借地期間が20年になったが、当時多数開業したSCが期間満了を迎える。その際、継続か閉鎖かなどの問題が表面化し、転換期を迎えるだろう。その点においても、大和ハウスリアルティマネジメント、ロイヤルホームセンター、スポーツクラブNAS、大和ハウスパーキング、そして大和リースの6社のリソースを結集する。24年度から動き出しているが、互いの行き来がまだ少ないので、より緊密に連携をとっていきたい。



(聞き手・特別編集委員 松本顕介)
商業施設新聞2592号(2025年4月15日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.463

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