九州旅客鉄道(株)(JR九州)は、住みたい、働きたい、訪れたいを街づくりのコンセプトに九州の主要駅で商業やホテル、オフィスなどを複合開発してきた。コロナ禍の中でオープンした熊本駅や宮崎駅の再開発事業では就業者や居住者、中心市街地から駅前へ訪れる人を増やすなど効果を示しつつある。今後の展開も含め、同社執行役員事業開発本部開発部長の中村勇氏に話を聞いた。
―― 熊本駅周辺の開発が活況です。
賑わいを創出している「アミュプラザくまもと」
(写真はJR熊本駅ビル)
中村 行政側が熊本駅周辺を熊本の「副都心」と位置づけて再開発を進める中、当社もこの動きに合わせて「アミュプラザくまもと」やオフィスビル、マンションなどを一体的に開発した。効果としては駅ビルで約3000人、オフィスで約1000人の計約4000人の就業者、当社グループのマンションだけで約1000人の居住者を生み出している。熊本駅周辺では当社以外のマンション建設も進められており、買い物や仕事で人が訪れ、周辺に住む人が増えるという好循環ができつつある。
―― 宮崎駅はどうですか。
中村 百貨店の「山形屋」などがある中心市街地と宮崎駅前を一体で活性化するため、地元企業と共同で「アミュプラザみやざき」を開発した。宮崎駅と山形屋前までを結ぶ高千穂通りの歩行者交通量が増加しており、駅前に賑わいが生まれつつある。また最近では、西日本電信電話(株)(NTT西日本)が高千穂通り沿いに所有する建物の再開発を発表した。周辺ではマンションも建設されつつあり、さらなる賑わいの創出が期待できる。
―― 鹿児島中央駅や佐賀駅でも再開発が進んでいます。
中村 鹿児島中央駅西口では、鹿児島支社の用地を活用し、商業やオフィスを取り入れた複合ビル「JR鹿児島中央ビル」を建設した。1~3階に配置する商業施設「AMU WE」は(株)JR鹿児島シティが運営を担当し、「アミュプラザ鹿児島」との一体性を高める。さらに、4~10階には駅直結のオフィスを導入し、周辺で働く人を増やすことで拠点性の強化を図っていく。
佐賀駅では、西九州新幹線の開通をきっかけに、高架下西側エリアのリニューアルを実施した。地元の飲食店を中心にゾーニングした新たな商業施設をオープンし、利便性を強化している。
―― 博多駅周辺での取り組みは。
中村 福岡市が博多駅周辺の再開発を促進するプロジェクト「博多コネクティッド」を進める中で、福岡地所(株)、(株)麻生と共同で「福岡東総合庁舎敷地有効活用事業」に取り組むなど他社と連携した街づくりを展開している。当社単独でも、博多駅線路上空にオフィスやホテルなどを導入する「博多駅空中都市プロジェクト」に取り組んでおり、賑わいの創出を図っている。さらに博多駅周辺では、当社が主体となって「博多まちづくり推進協議会」の活動に取り組んでおり、博多駅周辺が歩いて楽しい街、美しく安全な街となるように清掃活動を実施するなど、再開発計画以外でも活性化に努めている。
―― 今秋には長崎駅の再開発も完了しますね。
中村 国際観光都市長崎にふさわしい陸の玄関口を形成するという目的で、駅ビルを増築している。建物の1~4階に「アミュプラザ長崎」の商業施設、5~6階にオフィスを配置。7~13階には外資系の「長崎マリオットホテル」(24年初頭開業)が200室でオープンする。西九州新幹線の累計利用者数も2月に100万人を突破しており、さらなる成長が期待できる駅だといえる。
―― 今後の展開は。
中村 これまで、九州各地に「アミュプラザ」を開発してきたが、今秋の「アミュプラザ長崎」の増築完了でいったん終了する。今後はさらにアミュプラザ周辺の拠点性を高めるため、オフィスやマンションの取得・開発に注力していきたい。福岡市内では沿線エリアの開発を進める方針で、参画のチャンスがあれば検討していく。
加えて、4月27日に開業した複合体験型アウトドア施設「ABURAYAMA FUKUOKA」や、物流施設の開発といった新たな事業にもチャレンジし、アセットの強化を図っていく。
(聞き手・北田啓貴記者)
商業施設新聞2496号(2023年5月23日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.407