住友重機械イオンテクノロジー(株)(東京都品川区)は、1983年4月に設立、現在は住友重機械工業の100%出資カンパニーである。半導体製造装置としてのイオン注入装置の開発・設計・製造・販売・サービスを一手に手がけている。事業売り上げは約400億円であるが、先ごろ立ち上がった期待の愛媛県西条の新工場効果を期待し、売り上げを50%増の600億円に設定するというアクティブな姿勢を見せているのだ。代表取締役社長の月原光国氏にお話を伺ってみた。
―― イオン注入装置は国内トップシェアですね。
月原 大変ありがたいことに、お客様の高い評価をいただき、国内では60%程度のシェアを獲得させていただいている。10年余り前からは世界市場に乗り出すことを掲げ、台湾、上海などに打って出ており、シェア拡大も狙っている。
―― 貴社の製品群が評価される理由は何でしょうか。
月原 イオン注入装置は、不純物を添加し、望みの量、望みの深さでイオンを打ち込むものであるが、電気特性と直接かかわるだけに、かなり難しい技術なのだ。今のレベルは面内均一性で0.2~0.5%の精度を達成している。何しろイオンビームはまったく目に見えないものであるため、このコントロールには高い技術が必要である。様々な条件で、注入量の均一性と、イオンビームの当て方の質と両方を達成しなければならない。この総合的な技術で評価をいただいている。
―― 300mm装置のラインアップについては。
月原 イオン注入装置は高電流装置、中電流装置、高エネルギー装置の3種類があるが、当社の場合は、高電流条件であっても中電流条件であっても、1台でできるハイブリッド性を持つオールインワンタイプを業界で唯一、製造している。これらを合わせて4つの機種を持つのは、当社だけなのである。高電流についても、スキャンビーム方式で枚葉高電流装置を実現し、優れた均一性、高ビーム品質を達成している。
―― 現状の用途、および今後の展望は。
月原 一番多いのは、イメージセンサー向けとロジック向けであり、この2つで全製品の約70%を占めている。イメージセンサー市場は今後もスマートフォン(スマホ)に加えて、自動運転をはじめとする自動車市場での伸びが期待できる。ロジック向けは最先端からローエンドタイプまですべてカバーしている。
パワーデバイスのお客様も多く、今後さらに強化したいと考えているが、オールインワンタイプがパワーのユーザーに多く受け入れられていることは嬉しい。シリコンの厚み方向にデバイス構造を作るため、最後は薄く削ったウエハーに注入しなければならないところが難しく、お客様のカスタマイズにしっかり合わせ込むことが重要だろう。
―― 愛媛事業所(西条)の概要は。
月原 敷地面積5万3260m²に、A~G棟まで7棟の建物が連結されて建っているが、22年に大型の新工場を立ち上げた。投資額は120億円と過去最大である。これにより、工場全体の延べ床面積は2.3倍になった。新工場効果により、現状の売り上げ約400億円を1.5倍の600億円に持っていく。
―― SDGs対応と女性力活用については。
月原 現状を鑑みれば、この社会問題の解決に全力を挙げる姿勢が問われている。でき得る限り再生可能エネルギーを活用したいと思っており、LEDは全社で採用している。また、太陽光パネルの設置も検討中だ。しかし、製造装置メーカーとしては、装置のライフサイクル全体の環境負荷を下げることに取り組むことが一番重要だ。
人員は、グループ全体で正社員は500人強であるが、拠点の愛媛事業所はこのうち300人が働いている。愛媛は協力社員まで含めれば600~700人にはなっているだろう。女性比率はまだ高くないが、当然増やしていく。昨年からは女性管理職も出てきており、新卒採用でも理系女子も増えている。
―― 地域貢献活動は。
月原 基本的に工場を増強し、雇用を増やしていくことが最大の地域貢献と考えている。一方、産学連携にも注力している。愛媛県下の大学にとどまらず、関東の大学とも共同開発を実行している。素材系や新しいイオン源、さらには新しいデータ処理方法などはどうしても学の力が必要になるのだ。最近では、メモリー向けなどにも注力しており、海外での拡大を急ピッチで進め、世界における住友重機械イオンテクノロジーの存在感を一気に高めていきたい。
(聞き手・特別編集委員 泉谷渉)
本紙2023年5月25日号1面 掲載