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第379回

(株)すかいらーくレストランツ 営業政策チーム ロボット導入責任者 花元浩昭氏


配膳ロボット3000台を導入完了
客数2%増、人材確保にも貢献

2023/5/9

(株)すかいらーくレストランツ 営業政策チーム ロボット導入責任者 花元浩昭氏
 (株)すかいらーくレストランツ(東京都武蔵野市)は、2022年末までに3000台の配膳ロボットの導入を完了した。約1年の間に一斉導入し、スムーズな運営の裏では様々な工夫がされていたという。同社によるとロボットは、人と人のコミュニケーションをより濃密にする手段の一つだと語る。同社営業政策チーム ロボット導入責任者の花元浩昭氏に話を聞いた。

―― DX戦略について。
 花元 2019年からデジタルメニューブックやセルフレジをガスト、しゃぶ葉、バーミヤン、ジョナサン、夢庵をメーンに導入してきた。配膳ロボット導入は21年8月から実験開始し11月から展開。22年末に3000台の導入が完了した。

―― どのような配膳ロボットを導入していますか。
ガスト新座片山店での使用の様子
ガスト新座片山店での使用の様子
 花元 「BellaBot(ベラボット)」という猫型のロボットを導入しており、店舗面積に縛られず使用できる。現状の最大稼働はガストの渋谷駅前店など3台。台数が増えるごとにすれ違い幅として約150cm必要になるので、新業態や新店を開発する際は通路幅を広く設けるなど慎重に台数を選定している。

―― 導入の背景は。
 花元 従業員がイキイキ働けることやお客様にとって利便性を感じてもらうことを目標に進めてきた。ただ、少子高齢化などの時代の変化によって働き方も変わってきたことも導入背景のひとつだ。
 また、働く人材の確保が難しくなるため、今の従業員数を維持したまま売り上げを伸ばしていくことも理由にある。ロボットを導入することで従業員が別のサービスに充てる時間が生まれ、お客様とのコミュニケーションをより密に取れるようになってほしいと思った。

―― 3000台を一気に導入できた要因は。
 花元 実は、我々も実験を開始するまでは半信半疑な部分があったため、当初は一気に導入する予定はなかった。だが、ガスト渋谷駅前店をはじめ、DXに慣れている若者が多く集う店舗で実証実験を行ったところ、非常に有効だと手応えを感じ大多数の店舗への導入へと踏み切った。
 ただ導入するだけでなく、全国各地の店舗で設定や運用の仕方をフォローするインストラクターという役職を社内に作った。インストラクターは最大17人おり、ロボットを含めたオペレーションを構築することなども請け負う。こうした役割を作りマニュアルなどをアップデートしていくことで、多くの台数をスムーズに導入できたと考えている。
 導入ブランドごとのオペレーションの特徴をしっかり把握することが重要だと思っており、だからこそ社内からエキスパートとしてインストラクターを作った。これが成功の秘訣だと思っている。

―― 実際に導入されて。
 花元 狙いどおり、これまでよりお客様とのコミュニケーションをより多くとれる環境作りができた。ピークタイムも手が空くので回転率を上げることができ、ランチ客数が約2%アップした。加えて、従業員のトレーニングを簡素化できるので外国人やシニア層など幅広い人材が活躍できるようになった。

―― 課題はありますか。
 花元 9割のお客様は肯定的に受け入れてくれている。しかし、ロボットは万能ではないため、人との協働が欠かせない。例えば、席まで料理を運んでくれるが、最終的に机にはお客様自身で乗せてもらうことになる。シニア層を含め数パーセントは抵抗感のある方もいらっしゃる。こうした面はお客様の特徴を従業員が把握して適切な接客を行うことが重要だと考えている。

―― 運営面での変化は。
 花元 人件費だけでなく目に見えないコストの改善で回転率や売り上げが向上して利益達成に貢献してくれている。トレーニングなどが簡素化され、店舗において新人さんが即戦力として活躍してくれている。

―― 今後の展開は。
 花元 新たにできる業態はロボットを前提とした設計になり、いったん3000台の導入が済んだ形だが、今後の新店舗にも導入していく。セルフレジ、デジタルメニューブック、配膳ロボットと次々にデジタル化が進んできた。これらをどんどんバージョンアップさせていきたい。例えば、注文端末で決済ができたり、数年後には、バージョンアップしたロボットをローンチするなど新しいサービスを提供していきたい。
 一方で、お客様とのコミュニケーションをなくしてはいけないと思っている。むしろ人と人との触れ合いは重要でなくならないと思っており、ファミリーレストランの価値のひとつだと考えている。時代とともに変化するお客様や従業員のニーズにしっかり応えながら、企業として売り上げや利益が生まれれば嬉しい。

(聞き手・鈴木さやか記者)
商業施設新聞2491号(2023年4月11日)(6面)

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