三井不動産(株)(東京都中央区)は、「フォーブス・トラベルガイド2023」において2年連続で5つ星を獲得した「ハレクラニ沖縄」や「HOTEL THE MITSUI KYOTO」などのリゾート・ラグジュアリーホテルを運営している。立地を厳選しながらその土地の特徴を生かした開発・運営を展開する。同社ホテル・リゾート本部 ホテル・リゾート運営二部長の洲戸渉氏に話を聞いた。
―― リゾート・ラグジュアリーホテル事業の概要から。
洲戸 現在、当社では伊勢志摩と沖縄でリゾートホテルを5施設、東京と京都で都心ラグジュアリーホテルを2施設運営しており、総客室数は約1100室を誇る。
アクティブシニアやインバウンドの増大などの社会環境の変化を捉え、2000年代から同事業を新たな成長分野の1つに位置づけ、注力してきた。
―― ホテル開発において重視していることは。
洲戸 中長期的に競争力を持つ立地に厳選して展開することだ。当社は07年以降、伊勢志摩エリアで3施設のホテルを運営してきたが、さらなる事業拡大のためにはより大きなマーケットを獲得する必要があると感じ、沖縄本島と京都を重点エリアとした。沖縄は日本を代表するリゾートエリアとして、今後富裕層が増大するアジアの中心に位置する地理的優位性を持つ唯一無二の場所で、世界的な観光地である京都も独自の伝統・文化を含めて極めて高いポテンシャルを持っている。どちらもラグジュアリーホテルマーケットの成長余地があり、また、場所に特別な魅力があることから直営のハレクラニ沖縄とHOTEL THE MITSUI KYOTOというブランド展開とした。
―― 貴社は外資系の有名ホテルを複数持っています。
洲戸 ホテルチェーンという発想より、地域らしさや再開発の特性を踏まえたブランド選定をしており、外資系では、「NEMU RESORT」の敷地内に世界的なセレブ層にファンが多いアマンを誘致したほか(「アマネム」)、東京・大手町では「フォーシーズンズホテル東京大手町」をオープンした。
―― 今後も外資系ラグジュアリーホテルの開業を控えています。
洲戸 4月4日には、東京駅の目の前の「東京ミッドタウン八重洲」の40~45階でブルガリ ホテル 東京をオープンする。八重洲は当社も参画する再開発などで街が一新している。徹底的にクオリティを追求し、歴史的なブランドであるブルガリの顧客も最大限に楽しめるホテルとなっている。また、26年にはヒルトンの最上級ブランドであるウォルドーフ・アストリアを東京・日本橋で開業する予定だ。
―― ラグジュアリーホテルの存在は街にどのような影響を与えるのでしょうか。
洲戸 ラグジュアリーホテルが集積すると街のプレゼンスが高まると考える。例えば、タイのプーケットはかつて若者たちが集う街だったが、「アマンプリ」の開業以降はラグジュアリーホテルが集積するようになり、富裕層が訪れる街へと変化を遂げた。当社も、26年にはフォーシーズンズ、ブルガリ、ウォルドーフ・アストリア、マンダリンオリエンタル(三井不動産からマンダリンオリエンタル東京に区画を賃貸)といった複数のラグジュアリーホテルを東京駅~日本橋エリアに集積させることとなる。これにより、エリア一帯の価値向上に貢献できる。
―― 足元の状況は。
洲戸 リゾートホテル5物件の22年4月以降のRevPARは、コロナ前の19年を大きく上回っている。都心ラグジュアリーホテル2物件も、22年10月の水際対策緩和以降はインバウンドの宿泊客が増加し、本来の軌道に戻ってきている。20年以降は緊急事態宣言が発出されて人が減り、GO TO トラベルキャンペーンが実施されると人が戻ってくる、という激しい波にさらされてきたが、家族などの大切な人と一緒に過ごしたりリフレッシュしたりする時間が重要視されるなど、良い方向に向かっている。
―― 今後対応すべき課題はありますか。
洲戸 人材を安定的に確保する必要性を感じている。ゲストに最大限楽しんでいただくためには、スタッフがホスピタリティマインドを持ち、生き生きと誇りを持って働くことが重要だ。当社ホテルの口コミでもスタッフに関する内容のものが圧倒的に多く、そこに高評価を付けたユーザーがリピーターになる。そのため、コロナ禍の休業中も雇用を維持しトレーニングの時間に充てるなど、離職防止には力を入れてきた。人の三井といわれるグループとして、今後も「人」にこだわり、「人」を大切にすることで、当社グループならではの特別な体験をご提供していきたい。
(聞き手・安田遥香記者)
商業施設新聞2489号(2023年3月28日)(9面)
再浮上!!ホテル業界 No.4