サンフロンティア不動産(株)(東京都千代田区)は1999年の設立以来、東京都心の中規模オフィスビルなどの再生事業やリーシングマネジメント、プロパティマネジメントなどを含む不動産サービス事業を展開してきた。2015年からは新たにホテル事業をスタートし、地域創生にも貢献するなど多岐にわたった活動を見せている。同社の代表取締役社長 齋藤清一氏に話を聞いた。
―― 貴社の概要から。
齋藤 当社は、東京都心の中規模ビルの不動産活用をメーンに行っている。中でも、不動産再生により新たな価値を生み出す“バリューアップ”を得意としており、再生からテナントの仲介、ビルの管理など、自社内で一貫して行えるのも特徴だ。
東京都心部には中規模のビルが多く、それらが活用しきれていないことも多々ある。そういったビルをバリューアップし、新たな価値を生み出していくことで、その街自体にも賑わいや付加価値を生み出すことを目指している。そのほか15年からは、ホテル・観光事業もスタートした。
―― 不動産再生事業について。
齋藤 東京都の中央区や千代田区、港区などをメーンに、中規模のオフィスビルを購入し再生事業を行っており、再生件数は450件ほどとなっている。ビルは建設からおおむね20年ほど経つと、老朽化も目立ってくるが、設備更新が必要となってきても更新が進まないビルも多い。そういったビルを購入し、エントランスや外壁、空調や水回りの更新といった全体のリノベーションを実施している。
中には立地している場所の特性を鑑みて、用途自体を転換する場合もあり、一般的な事務所ビルを店舗・飲食テナントの入る商業ビルにする場合もある。以前、東京都中央区の築地周辺でビルを購入した際には、中央区が人口増加傾向にあり保育園が足りないという課題を受けて保育園を誘致した。
―― 15年から開始したホテル・観光事業について。
齋藤 我々は東京都心部に集中して事業展開を進めてきたが、今までの事業で培ったノウハウを用いて、地域創生に貢献できないかと考え、ホテル・観光事業をスタートした。不動産再生と同じように、既存のホテルを再生するという案件もあるが、新築のケースの方が多い。価格帯もラグジュアリークラスの「HIYORIオーシャンリゾート沖縄」からバジェットクラスの「スカイハートホテル」と幅広く、23年1月時点では日本全国に22施設約2600室を展開している。
―― コロナ禍は観光産業に大きな打撃を与えました。
齋藤 当社グループのホテルも影響を大きく受けており、一部施設では稼働率が20%を下回る時期もあった。客室平均単価も20~30%ほど落ちてしまったこともあったが、最近ではコロナ前の水準にまで戻りつつある。コロナ禍真っ只中であった20年から22年9月にかけては、先を見据えて7棟のホテルを新築するなど、積極的な投資を継続した。
―― 新潟・佐渡島や沖縄・宮古島での地域創生について。
齋藤 「しま夢事業」として、佐渡島や宮古島でホテル、レンタカー、レストランの運営などを行っている。佐渡島では「佐渡アウトドアベース」という施設も運営しており、様々なアクティビティの紹介やキャンプ用品などを販売するアウトドアショップ、カフェ、自転車やキャンプ用品などのレンタルなども行っている。沖縄の宮古島では、みやこ下地島空港ターミナル内に3つのレストランをオープンしており、地元ならではの食材を使用して宮古諸島の魅力も発信している。このように、観光産業で地方に元気を与えるべく事業に邁進している。
―― 今後の展望は。
齋藤 ホテル・観光事業において今後伸ばしていきたいと考えているのはスモールラグジュアリークラスと、宿泊特化型ブランドの「たびのホテル」だ。スモールラグジュアリーは、“人の笑顔や幸せに寄り添う”といった当社の考えに沿った、丁寧な接客やサービスが提供できる業態であるため、我々の力を存分に発揮できると考えている。
たびのホテルは宿泊特化型であり、ビジネスから観光需要まで、様々な需要に対応し多様な立地に出店できるのが強み。宿泊特化型と言っても、どの施設でも画一的なサービスを提供するような形態ではなく、出店立地に合わせたアメニティやサービスを充実させることで居心地のよい宿泊体験を提供していく。これらを通じて、当社グループホテルのファンづくりを進めていきたい。
オフィスビルなどについては、今後も既存資産の活用として再生事業を続けていく。合わせて、スタートアップフレンドリーな「セットアップオフィス」などの展開も加速していく。様々な付加価値創出により、多くの人々を幸せにできるような、そんな不動産活用を行っていきたい。
(聞き手・編集長 高橋直也/新井谷千恵子記者)
商業施設新聞2483号(2023年2月14日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.396