(学)獨協学園 獨協医科大学日光医療センター(栃木県日光市高徳632、Tel.0288-76-1515)は、栃木県日光市内で移転新築し、2023年1月1日に新病院を開院する。医療機器は血管撮影装置やマルチスライスCTなど最新のものを導入し、患者の負担軽減やより精度の高い画像提供、検査を実現する。また、手術室には新たな空調システムを採用し高機能化に取り組んだ。診療科目では患者から要望の多かった眼科を導入するなど、新たな診療科目を追加し、提供医療の強化を図った。
新病院の医療機器では、アンギオ室にフィリップス・ジャパンの「血管撮影装置 Azurion7 B12」、MRI室にシーメンスヘルスケア(株)の「磁気共鳴診断装置(MRI) MAGNETOM Sola」、CT室にフィリップス・ジャパンの「128スライスCT Incisive CT」を導入している。血管撮影装置 Azurion7 B12は、シンプル・直感的なデザインで検査時間の短縮に貢献するほか、低被ばくで高画質な画像の提供や造影剤量の低減を実現、さらには患者の負担を軽減でき、より安全な治療をサポートする。
左:広い廊下幅、右:外来診察室
磁気共鳴診断装置(MRI) MAGNETOM Solaは、被検者の体型や生理学的な違い、特性に基づいて地場環境を整え、装置が自動的に呼吸や心臓の情報を認識して画像収集に反映させる技術を採用。加えて、人工知能が収集した情報をより精細に画像化することで患者の検査の負担を軽減し、診断や治療に大いに役立つ画像情報の提供が可能になる。128スライスCT Incisive CTは、最新AI機能を搭載したマルチスライスCTで心臓領域も含めた前身高速撮影を可能とする。また、AI機能を搭載することで精度の高い画像の提供と低被ばく検査を実現する。
「血管撮影装置 Azurion7 B12」
これらの最新医療機器に加え、「スマートベッド」(患者の睡眠状態や呼吸数、心拍数などをベッドが検知してスタッフステーションで確認することができ、より細やかで安全な看護の実践につなげる)、「AI問診」(患者の訴えに応じて質問を出し分け、AIとつながったタブレット端末で事前問診することで診察の充実・診察時間の短縮を可能にする)、「アミボイス」(職員の音声を文字としてスマートフォンに自動入力できる自動音声入力システム。煩雑な電子カルテの記録などに使えるため、教職員が患者に向き合う時間を増やせる)なども導入し、病院のスマート化にも取り組んでいる。
手術室は新空調システムの「クリーンコンポ デュアルエアー」を採用。従来の空調方式は、手術を受ける患者の状況や術式に合わせた空調を行うことを前提に、手術台の直上の天井面にある吹き出し口から執刀医や患者のいる術野に向けて、空調およびHEPAフィルタによってろ過された空気を吹き出す空調方式が主流だった。これには室内の空気が一部滞留し、また麻酔科や外回り看護師などがいる周囲エリアでは上下で温度差が生じ、足元が冷えるなど空調の改善を求める声があった。今回採用したクリーンコンポ デュアルエアーは空気の流れに着目し、温熱環境の要求条件が異なる術野エリアと周囲エリアの空調において、異なる2系統のシステムを用いることで、1室に2つの温度帯を作ることに成功。術野エリアは従来と同じく下降気流によって温度と清浄度を保つが、周囲エリアは術野エリアの環境を乱すことなく気流による不快感を感じさせないようにするため、天井付近の隅角部壁面の対角に設けられた吹き出し口によって、水平方向に旋回する空気の流れを作り出し快適性を確保する。これにより、室内空気全体を余すことなく動かし、手術室全体の洗浄度を高めるほか、換気効率も向上。さらに空調を術野エリアと周囲エリアで別系統にすることで、各エリアでの個別温度に設定温度が変更できるため、手術内容や手術工程に合わせた柔軟な温度管理が可能になり、手術室環境の高機能化を図った。
「128スライスCT Incisive CT」、右:手術室の様子
診療科目では患者から特に要望の高かった眼科、救急・総合診療科を新設。診療科目の拡充により提供する医療の幅を広げた。眼科は診察室2室、処置室1室などを備えた。救急・総合診察科は、県西地区が栃木県の中でも特に少子高齢化が進んでおり、総合的に診察を行う医師が必要だというニーズに応えて立ち上げた。
新設した眼科にも様々な機器を用意、右:眼科検査室の様子
化学療法室は今後の増床にも対応する、右:透析室には25床を設置
新病院では今後、地域医療連携推進法人「日光ヘルスケアネット」との連携のもと、地域における安定的かつ効率的な医療・介護体制の構築を目指していく。また、安心安全な機能別医療体制づくりから急性期医療を担当し、日光ヘルスケアネットにおける各医療機関と連携を密にして日光全体の医療を行うこと、さらには旅行者にも安心な医療体制を整備し、世界的観光地・日光の復活と発展に貢献していく。
若山智令記者
(この稿終わり)