フタバ産業(株)(愛知県岡崎市橋目町字御茶屋1、Tel.0564-31-2211)は、中期経営計画において経営課題として、(1)BEV(バッテリー電気自動車)化による売り上げ減、(2)カーボンニュートラルの追求の2点を挙げており、これに対応する成長戦略として(1)ボデー部品・外販設備事業の拡大、付加価値増、(2)成熟市場(エンジン搭載車)でのシェア向上、(3)新規事業の取り組みの3点を進めている。同社では、幸田工場(愛知県額田郡幸田町大字長嶺字柳沢1-1)で、この中計の進捗状況などを紹介した。
この中計では、22~24年度にフリーキャッシュフロー60億~150億円、営業利益率2.6~5.0%を目標としている。競争力強化により損益分岐点を改善し、変化に強い企業にすることを目指しており、ベストプラクティス活動を基軸とした競争力向上、新規生準投資最適化、キャッシュフローベースの投資管理、将来の成長に向けた戦略の確実な実行と変化に即応する企画推進を実施している。
幸田工場は1993年5月に操業開始し、敷地面積23万6742m²、建物面積10万1006m²、従業員数1151人。1~4号棟とプレス棟、パーツセンターがあり、1号棟では主にマフラーを製造、2号棟ではエキマニ、造管、3号棟1階ではDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)、ボデー部品の生産、2階ではサービスパーツの生産、4号棟ではホットスタンプを行っている。8月には4号棟の屋上に太陽光発電設備を導入した。
マフラーは、フランジ、パイプ、キャタリックコンバーターなどの部品をアーク溶接して組み立てる。同工場では3ラインで1日あたり2000台分程度の生産を行っている。現在、情報の滞留に着目した生産性の向上を進めており、生産性15%向上、リードタイムの7日から4日への短縮、設備故障の50%低減を目指す。
生産のデジタルプラットフォーム化に向け、オリジナルのプラットフォーム「TPLS(トータル・プロダクション・リンク・システム)」を導入。現状リアルタイムでの生産実績を収集しており、最終的には全自動化を目指す。幸田工場では21年度数ラインで導入開始、22年度には全ライン35工程で運用中。生産性が5.6%向上し、残業時間は30分減、1時間ごとの帳票記入が不要となった。
同工場では、消費電力の削減に向け可視化を進めている。照明の節電、設備の節電、設備負荷低減や太陽光発電による再生エネルギー活用などでカーボンニュートラルに向けた取り組みを進める。従来、建屋単位での電力量を把握していたが、設備ごとの電力を把握し、設備の待機状態での電力の無駄、ピークカットによる電力の山の頂点を下げるなどの活動を進める。ロボット設備で導入し、ロボットの速度を下げることで、ピーク電力を下げ、同時に待機時間をなくすことに成功した。今後各種設備にも導入していく方針。モデル設備を設定、測定し原単位化すればすべての設備を測定することなく可視化できる。22年度でモデルラインを導入しており、23年度に実測化する。
また、各ラインでの消費電力の予実管理も行う。計画値と実施値を測定し、計画値に近づける作業を実施。達成後は目標値を定め、それに近づけていく。今までは生産性を最優先していたが、今後は消費電力にも着目していく。
また、投資の最適化も進める。従来はモデルごとに専用ラインを設置し、生産期間中に償却をしていたが、今後は汎用ライン化を進めていく。同社が生産しているマフラーを11グループに層別、さらに最適工程数でタイプ分けを行い、4つのタイプに分別し、それぞれに最適なラインで生産する。タイプをまたいだ生産の移管も可能で、ラインの負荷が平準化できる。汎用化ラインでは、治具の入れ替え時間が増加することが課題となるが、治具の入れ替えを従来ついている設備を活用して自動化することで、コストをかけずに自動化を実現した。製品の切替え段階でラインを見直し、余剰設備を汎用化することで、23年度以降の新規投資が30%削減できる見通し。汎用化したラインは現状1ライン、23年度にもう1ライン追加し、25年度までに6ラインの導入を検討している。
同工場では、生産管理業務のワンロケーション化も進めている。工場生産管理をスリム化し、リソースを重要課題に振り向けることが狙い。現状では、同工場内に設置されたコントロールルームで、同工場内のTPLS導入設備の管理が行えるが、今後国内各工場の生産管理をバーチャル・ファクトリー化し、25年には国内拠点のすべての生産管理を幸田工場のコントロールルームに集約する方針だ。
(編集長 植田浩司)