商業施設新聞
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第360回

(株)ひらまつ 代表取締役社長兼CEO 遠藤久氏


新中期経営計画がスタート
店舗のリモデルなどに投資へ

2022/12/13

(株)ひらまつ 代表取締役社長兼CEO 遠藤久氏
 (株)ひらまつ(東京都渋谷区)は、フランス料理、イタリア料理、和食など様々なレストランを軸に、ブライダルやホテルなど人々のあらゆるハレの日に寄り添う事業を展開している。2023年3月期からスタートした新中期経営計画では“食を通じた体験価値の向上”を掲げ、高品質な空間・サービスを提供することでブランド力強化や収益性向上を図り、最終期の25年3月期に売上高144億3200万円、営業利益10億円を目指す。同社代表取締役社長兼CEOの遠藤久氏に聞いた。

―― 直近の状況から。
 遠藤 これまでに比べて新型コロナもだいぶ落ち着き、当社も業績回復の兆しが見え、23年3月期第1四半期は好調だった。売上高は計画比で約12%増となり、コロナ前を上回るところまできた。事業別で見ても、レストランが計画比で約20%、ブライダルが同約4.6%増、ホテルが同約7%増で、いずれも計画を上回り順調に推移した。
 第1四半期以降の7~8月にかけてコロナの第7波が発生し、ブライダルやホテルの予約が一時的に落ちたが、レストランでは“外食で美味しいものを食べたい、優雅な時間を過ごしたい”というお客様のニーズが結果的に上回った。上期を総括しても「とても良かった」と感じている。
 その反面、ブライダルは計画こそ上回ったが、コロナ前に比べると完全に戻りきってはいない。業界的に厳しい状況がまだ続くかもしれない。だが、当社が強みとするゲストとの距離が近いレストランブライダルは時代のニーズとも合っているので、良い状況になりつつある。

―― 新中期経営計画がスタートしました。
 遠藤 「マーケティングとブランド」「店舗営業」「人材」の3つを柱とし、ブライダル営業の強化、マーケティング・ブランディング改革、店舗オペレーション改革などに取り組むが、全社的に今一番やるべきことはシンプルで、「いかに体験価値を引き上げ、単価を上げていけるか」だ。体験価値が高ければ、お客様はその価値を求めて来店される。“ペイフォーマネー”の考え方で、価値が上がれば集客につながるので、いかに価値やストーリーを作るか、そこに注力していく。これらがしっかり達成できれば、新中期経営計画の数値目標もクリアできるだろう。
 当社の価値の源泉は“ライフタイム・バリュー”だ。レストラン、ブライダル、ホテルを有し、全事業において“ハレの日の価値”を提供している。ハレの日の最大のピークがブライダル(=挙式)だとすると、例えば大事な日の大切な人との食事だったり、家族旅行の際のホテルだったり、お客様のあらゆるハレの日に一気通貫で関わっていける。

―― 投資計画について。
全面改修を行うイタリアンの「リストランテASO」
全面改修を行うイタリアンの「リストランテASO」
 遠藤 前述した3つの柱において、マーケティングとブランドに約5億円、店舗営業に約11億5000万円、人材に約4億5000万円を投じる。店舗のハード面では、リフレッシュやリモデルに大きな投資を行う予定で、例えば東京・代官山にあるイタリアンの「リストランテASO」は当社のフラッグシップストアだが、老朽化が進んでいるため24年3月期中に大規模な全面リニューアルを行う計画だ。また、他の既存店でも中心を担うような店の大型リフレッシュに加え、設備更新、内装のリニューアルなど順次ピックアップして投資を進める。

―― 今後、ひらまつが目指す姿は。
 遠藤 ハレの日のあり方を変えていく。当社は、レストランブライダルやオーベルジュなど、時代の最先端を創ってきた。さらには海外シェフたちとも連携し、ポール・ボキューズ氏などミシュランの星を持つ超一流のシェフと提携したブランドや店舗も持っている。もっと我々ならではの価値を提供しながら、当社にしかできない唯一無二の価値提供を一気通貫で行い、新たな価値を作る。これがハレの日のあり方を変えることにつながっていく。

―― 人材に注力する理由は。
 遠藤 我々は食を支える圧倒的な強みを持ち、その一つが人材だ。今現在もシェフやパティシエなど270人の料理人が高品質な料理・サービスを提供しているが、この豊穣な人材が事業の枠を超えて横のつながりで融合し、全員で価値を作ったら、想像できないほど大きな価値が提供できる。実際にレストラン、ブライダル、ホテルの各事業は、連携できているようで、できていない部分がある。常に全社でお客様に寄り添う体制を目指すためにも、人材の強化に注力していきたいと思っている。

―― 最後に抱負を。
 遠藤 新しい体験や価値の創造で、日本を食体験によって活性化するリーダーになる。決して夢物語ではなく、当社がやらなくてはいけないと思っている。また、全国各地に店舗があるので、その出店地域の活性化を図り、地方創生にもつなげていく。同時に、世界に日本の新しい時代の文化、食、おもてなしの事業モデルを発信し、もう一度、時代を先行くリーダーになることを目指していきたい。

(聞き手・副編集長 若山智令)
商業施設新聞2474号(2022年12月6日)(8面)
経営者の目線 外食インタビュー

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