商業施設新聞
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第357回

(株)富澤商店 取締役 クリエイティブディレクター 富澤文氏


巣ごもり需要後も好調維持
海外での展開も計画

2022/11/22

(株)富澤商店 取締役 クリエイティブディレクター 富澤文氏
 (株)富澤商店(東京都千代田区)は、1919年に東京・町田の地で乾物屋として創業し、現在は製菓・製パン材料から和・洋食材などを幅広く販売している。創業103年目の2022年6月には、ブランドロゴと企業ロゴを統一し、新たな一歩を踏み出した。同社の取締役クリエイティブディレクターである富澤文氏に話を聞いた。


―― 概要から。
 富澤 当社は東京都町田市で創業した。当初は乾物をメーンに取り扱っていたが、戦後すぐに小麦粉の取り扱いを開始し、70年ごろには小麦を一般家庭向けに小さいパッケージに小分けして販売をスタートした。従来は卸売りとしてプロ向けに製菓・製パン材料を販売していたが、これらを小分けに販売することで、プロが使う食材を家庭用のサイズで購入できるのが大きな特徴となっている。
 現在、実店舗は90店で、東京や神奈川、名古屋、大阪、福岡、札幌といった主要都市などで展開している。また、実店舗以外にも、スーパーの「明治屋」に棚を設置して、売れ筋商品を展開する形態での出店も行っている。

―― コロナ禍では製菓・製パン材料へ注目が集まりました。
 富澤 コロナ禍では“おうち時間を充実させる”といった観点から、家で作るものにこだわる人が増えたと感じた。当社でも、初心者の方も手軽に作れるミックス粉や、製パンに欠かせないイーストなどに人気が集まり、巣ごもり需要後の今でも好調な販売をキープしている。
 緊急事態宣言下では施設の休業などに伴い、当社店舗も30店超が休業した。もちろん店舗での売り上げは減少したが、従来店舗を利用していたお客様がECへとシフトした傾向が見られた。また、当社は店舗とECを比較すると、店舗の方が年齢層が高い。特に年配の方はコロナによって行動を制限していることから、年配層の方の来店が減少した。それに伴い、年配の方々が手に取っていた和乾物類や即食性のある豆菓子などの売り上げも多少落ち込んだ。

―― ECについて。
 富澤 当社がメーンで取り扱っているのは“食品”という多くの人にとって身近な商材だ。食材の中でも、小麦粉やイーストといった「購入した後に作る」という行為がセットになったものが多い。そのためECでは、レシピ提案や初心者向けのレクチャーなどを行うことで、ECでもさらなる付加価値の提供を行っている。

―― 商品はニッチなものから初心者向けまで、幅広く扱っています。
 富澤 店舗を訪れるお客様の中には「どこにこの商品があるか分からず、富澤商店ならあると思って来た」という方もいらっしゃる。そういった方たちの需要にも応えていきたいと考え、ニッチな商品も取り扱っている。実際、売れ筋商品ではないが、当社以外ではあまり取り扱っていない商品についても、終売することなく販売を継続している。
 当社の企業理念として「適正な商い」というのがある。よく価格面で意味を捉えられがちだが、それだけではない。品質がプロ仕様であり、なおかつそれを適正な価格で販売するという部分にこだわっている。

―― 6月にはロゴを統一しました。
新しいロゴを配した「そごう横浜店」
新しいロゴを配した「そごう横浜店」
 富澤 「TOMIZ」という名称を使い始めたのが15年ごろで、呼びやすく親しみやすいニックネームのような形で使ってもらえればと考えていた。しかし、お客様の動向を見てみると“富澤商店なのか、TOMIZなのか”と迷わせてしまっていることが分かった。そこでロゴを統一することで、より分かりやすくした。
 また、当社は創業から103年を迎えた。次の100年に向けて進もうとする中で、自分たちの強みに対して認識が薄れているのを感じた。そこで「富澤商店とはこのような会社である」というのをきちんと伝えるべく、ロゴを刷新した。ロゴには、本店で使用してきた屋号を使用しているが、昔に戻るという感じにはならないように、次の100年に向かうように過去・未来・現在の表現を追加。起業当初からの初心を忘れずに、未来をみんなで作っていくという思いを込めた。

―― 次の100年に向けた抱負などは。
 富澤 最近では海外展開も計画するなど、事業のさらなる拡大を目指していきたい。海外展開は、主に東南アジア諸国で検討しており、日本発の企業としての引き合いも感じている。また、日本国内での出店についても、23年度も2桁の出店数を見込んでおり、主に主要都市で展開していく。地方では、認知度向上に向けて、スーパー内への棚出店も進めていきたい。
 当社の強みは、知識のあるスタッフが良い商品を選定し、それを適正な価格でお客様にきちんとお届けしていること。そういった理念を自社内できちんと意識するだけでなく、お客様にも伝えていきたい。今までも良い商品を提供するということを続けてきたが、今後はその先にある価値や体験、そして生活を豊かにするきっかけを、当社の商品を通じて届けられればと思っている。


(聞き手・新井谷千恵子記者)
商業施設新聞2471号(2022年11月15日)(7面)
 商業施設の元気テナント No.250

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