商業施設新聞
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第355回

(株)ジェクトワン 代表取締役 大河幹男氏


「アキサポ」で空き家問題解決へ
近畿など地方もニーズ増加

2022/11/8

(株)ジェクトワン 代表取締役 大河幹男氏
 (株)ジェクトワン(東京都渋谷区)は、社会課題のひとつである空き家問題の解決を目指す、空き家活用事業の「アキサポ」を2016年から展開している。これまでは首都圏を主な事業エリアとしていたが、21年には「アキサポネット」をスタートし、地方の事業者と連携することで事業エリアを全国へ広げた。実績を積み上げ、今では空き家を活用したいという所有者からの問い合わせも多くなっているという。同社代表取締役の大河幹男氏に聞いた。

―― アキサポ立ち上げのきっかけは。
 大河 ジェクトワンの設立から7年が経過し、既存事業がある程度成熟化してきた中、新しい分野にチャレンジしようと思っていたタイミングで「空き家対策特別措置法」が制定された。16年当時、空き家率は全国で約13.5%、約860万戸あり、33年には全国で約30%、約1950万戸になると言われるなど、空き家の増加が大きな社会課題としてクローズアップされ始めた。今後ますます注目を集める空き家のマーケットに対して、当社がリーディングカンパニーとしてビジネスモデルを構築するという考えのもと、空き家を活用した新しい事業としてアキサポを立ち上げた。これに伴い、NPO法人「空き家活用プロジェクト」も設立し、自治体とも連携しながら事業を進めている。

―― アキサポの概要は。
 大河 空き家をアキサポが借り受け、当社の全額負担で物件をリノベーションし、所有者様と定期借家契約を結ぶ。リノベーションした物件は転貸し、家賃収入を得ることで当社はリノベーション費用を回収するほか、所有者様には賃料を支払う。定期借家契約の終了後は物件をそのままお返しするので、物件の資産価値向上につながる。

―― アキサポの特徴は。
 大河 空き家活用として、新しい住宅にすることはよくあるが、アキサポは非住宅への転換を特徴とする。非住宅への転換は難しいものだが、住宅以外の用途にすれば、その地域に新しい価値が提供できる。
 また、非住宅への転換と言っても、「何にするか」の見極めが大切であり、企画力が重要となる。その点において、当社は企画力に大きな強みを持っている。対象の空き家を何に変えるか、変えた空き家に借り手を付けられるかどうかなど、実際に空き家周辺を歩いて現地調査を行う。周辺住民へのヒアリング結果から導き出した地域課題を企画にも活かしている。

―― 1号案件とこれまでの実績について。
1号案件の「小石川かふぇ」の店内
1号案件の「小石川かふぇ」の店内
 大河 1号案件は、事業開始のおよそ半年後、東京都文京区の茗荷谷にある空き家をリノベーションし、バル&カフェの「小石川かふぇ」に転換した。アキサポでは住民のニーズに合わせた用途への転換を心掛けており、ここを飲食店としたのも地元の声を反映した結果である。その後も、店舗をレンタル倉庫に、倉庫兼工場をバイクガレージにしたりと、幅広い転換を行っている。また、渋谷にある東京電力関連会社の社宅をリノベーションし、シェアオフィスとした。
 実績としては、問い合わせ件数が累計3800件、現在契約中や結果的に解体したものを含め約103件だ。特にここ2、3年は多く、前期は37件の契約があり、今期も31件の契約を見込む。現在進行形で39件ほどの案件が動いている。

―― 21年5月にアキサポネットを開始しました。
 大河 アキサポは当社単独で行っていたため、事業エリアは首都圏が中心だった。だが、空き家問題は地方でも深刻な問題だ。アキサポの地方展開は、その地域の事業者と提携するのが良いと考え、全国への拡大策としてアキサポネットを開始した。スタートから1年半ほど経ったが、解体業やリフォーム業など幅広い業種の方々と提携し、提携業者数は11府県・12社に広がった。今後5年で80社との提携を目標にしている。
 アキサポネットの実績は、特に近畿圏で多く、20件近く契約できている。近畿圏は首都圏に次いで空き家件数が多いため、それが結果に出ている。また、他のエリアも含め順調にスタートしており、ニーズは確実にある。

―― 今後の展開は。
 大河 例えば空き家が100件あり、活用できるものが50件だったとして、残りの50件にも売買、賃貸、解体など空き家を放置させない提案をしていくような粘り強い営業などでアキサポを成長させ、空き家問題を解決したい。実際、空き家はビジネスモデルが構築されていない状況だと思う。当社がビジネスモデルを構築することで、他社も含めた様々な不動産会社が空き家活用を手がけられるようにしたい。それによって空き家率の低下を目指し、地方においては地方創生などにもつなげたい。

(聞き手・副編集長 若山智令)
商業施設新聞2468号(2022年10月25日)(4面)

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