商業施設新聞
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第354回

(株)阪急商業開発 代表取締役社長 細井和則氏


横浜と京都で3施設を運営
郊外型SCは24年以降に改装へ

2022/11/1

(株)阪急商業開発 代表取締役社長 細井和則氏
 エイチ・ツー・オー リテイリング(株)のグループ会社である(株)阪急商業開発は、郊外型ショッピングセンターや専門店ビルの運営を行っている。新型コロナで明暗は分かれるものの、百貨店の視点と不動産のノウハウを組み合わせ、各施設の売上高は前年実績を上回る好調ぶりを示す。運営する施設の状況や今後の展望について、代表取締役社長の細井和則氏に話を聞いた。

―― 貴社の成り立ちを。
 細井 当社は1992年に(株)阪急百貨店の子会社として設立されたのが始まりである。「神戸モザイク」(現神戸ハーバーランドumie)を皮切りに不動産ビジネスをスタートさせ、96年に「モザイクボックス」(現在は撤退)、2000年には「モザイクモール港北」(横浜市都筑区)を開業した。その後も百貨店の業態転換として、「阪急大井町デイリーショッパーズ」「モザイク銀座阪急」「モザイクダイニング四条河原町」(現在はすべて閉館)をオープンしている。
 転機が訪れたのは14年の親会社とイズミヤ(株)との経営統合である。この統合により、イズミヤが所有する店舗数の多い物件の運営を引き継ぐことになった。具体的には、京都の専門店ビル「京都アバンティ」(京都市南区)と郊外型SC「カナート洛北」を直営化した。カナート洛北は20年に増床リニューアルを行い、「洛北阪急スクエア」(京都市左京区)に改称しており、現在はモザイクモール港北、洛北阪急スクエア、京都アバンティの3施設を運営している。

―― コロナ禍における売上動向は。
 細井 20~21年はスーパーマーケット、食物販、趣味・生活用品の売り上げが伸びたが、22年は巣ごもり消費が落ち着き、代わってお出かけ需要が上昇、ファッションや飲食は回復傾向にある。商品別ではセレモニー関連のファッションや、アウトドア関係の売り上げが好調な反面、楽器や書籍の売り上げは落ち着いている。総じて、22年は洛北阪急スクエアを筆頭に3施設とも数字が良く、新型コロナで大打撃を受けた京都アバンティの売上高も、前年比140%で推移している。

―― 洛北阪急スクエアの近況を。
 細井 増床リニューアル直後にコロナ禍に陥ったが、22年は月次売上高が前年比106~107%で推移しており、絶好調が続く。イズミヤの食品の売り上げが非常に高く、食物販店も好調で、京都市北部地域では地域一番店になったと自負しており、良い手応えを感じている。
 好調の要因の一つは、百貨店のノウハウを取り入れたイベントスペースの活用だ。増床リニューアル後は「パンマルシェ」などのフードイベントや、地域の小学生が絵付けした「ランタン祭り」など、地域に根付いたイベントを開催しており、固定客が付くようになった。百貨店のDNAを持つ当社ならではの取り組みと言えるだろう。

―― 京都アバンティは。
 細井 直営化前は小割店舗が多かったが、直営化後は2階から上に大型店を導入することとし、「ドン・キホーテ」「しまむら」「GU」などが入居している。また、6階は「アニメイト」を軸に「らしんばん」「カードラボ」「ゲームメイト」が出店し、サブカルチャーの集積化を進めている。
 他方、地下1階と地上1階は小割店舗で構成し、地下1階の飲食ゾーンは空き区画もあるが、訪日客を含めた観光需要の回復をにらみ、リーシングを進めている。当ビルの特徴は圧倒的多数の訪日観光客が来店されることにあり、それに対応する店づくりをしっかりと進めていきたい。

―― 注目しているテナントについて。
 細井 個人的にホームセンターの動きに興味がある。家具店や家電量販店に比べ、商業施設内に出店する動きは遅いが、商品力と情報力は確かな力をお持ちなので、それらを生かしたSCへの出店に期待している。DIYやガーデニングなどに潜在的に興味を持つ一般のお客様は多いと思うので、DIY教室を開くなど需要喚起を促す取り組みを備えてSCに出店すると、新たな需要を創造することができるのではないかと注目している。

―― 今後の展望を。
 細井 当面は新規施設の開発を考えておらず、既存の3施設をブラッシュアップする。売上高が前年実績を上回っているモザイクモール港北は、24年に上層階を対象とした改装を計画している。絶好調が続く洛北阪急スクエアも、26年春に大きく改装する機会が訪れるため、改装計画を立案し始めている。
 それに対して、京都アバンティは訪日客が戻ることを見越して、空いている飲食店の誘致や、6階のサブカルチャーゾーンの拡張を進める。今後も単なる商業デベロッパーではなく、百貨店の視点と不動産のノウハウをうまく組み合わせた商業施設を運営することにより、地域社会に貢献できるように努力していきたい。

(聞き手・副編集長 岡田光)
商業施設新聞2468号(2022年10月25日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.389

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