ニッケグループで商業施設の運営およびプロパティマネジメント業務を担うニッケ・タウンパートナーズ(株)。「ニッケコルトンプラザ」(千葉県市川市)や「ニッケパークタウン」(兵庫県加古川市)といったショッピングセンター2施設に加え、4施設のPM業務を請け負うなど、順調に業容を拡大している。各施設の状況や今後の課題について、代表取締役社長の清水泉氏に聞いた。
―― 貴社は日本毛織(株)から独立した。
清水 これまでは日本毛織のSC部に所属していたが、2015年12月に日本毛織から独立し、当社を設立した。当社は商業施設の運営やPM業務、リーシング業務を行っており、ニッケグループが所有するニッケコルトンプラザやニッケパークタウンを運営するほか、「船橋フェイス」(千葉県船橋市)や「なぎさモール辻堂」(神奈川県藤沢市)をはじめ、計4施設の外部PM業務を請け負っている。
―― 新型コロナの影響について。
清水 20年度に続き、21年度もニッケパークタウンは休業期間があったが、「万代」や「無印良品」の売り上げが堅調に推移するなど大きな影響は受けず、施設売上高もほぼ横ばいで推移した。同施設は16年の大改装で店舗のラインアップが大幅に変わり、お客様に大いに受け入れられた。新型コロナの感染拡大下では、都心の三宮よりも地元の加古川で買い物を済ませたいという意識の変化もあり、施設全体に大きな影響はなかった。
他方、ニッケコルトンプラザは新型コロナ禍で、施設売上高も影響を受けた。人の志向が変化し、来館頻度は減り、短時間で目的買いを行うお客様が増えた。その分、1人あたりの客単価は上昇したが、客数減をカバーできず、都心に近いこともあって、ニッケコルトンプラザの施設売上高は、影響が大きい時には1割ほど減少した。店舗でのばらつきはあるが、今はほぼ回復している。同施設では現在、西入口付近において店舗の入れ替えを含めたリニューアルを進めている。
―― 改装の狙いを。
清水 ニッケコルトンプラザは店舗面積が約7万1000m²、店舗数は156店の当社最大規模のSCだ。30~50代の女性とその家族をメーンターゲットに設定しているが、19年に敷地内に「Kids Duo International」を開園したことで、所得の非常に高いお客様にも来館していただけるようになった。今回の改装でも、「KINOKUNIYA entree」といったハイクラスのお客様に喜んでいただけるテナントを誘致している。また、市川という文教地区に合った知的好奇心を満たす書店「有隣堂」や、お客様から要望の高かった「ロフト」も入店する。
こうした店舗の入れ替えとともに、1店あたりの区画を大きくし、動線も変更する。これまで「TOHOシネマズ」が入るウエストモールから、専門店が集積する本館への見通しが悪く、施設の連動性に難を抱えていた。改装で本館への動線を新たに整備し、本館とウエストモールの往来を活発化したい。
―― ニッケパークタウンの近況は。
清水 16年の大改装で店舗面積は約4万2000m²、店舗数は90店に増えたが、物販・飲食店ともに好調を維持している。店舗は全体の7割をナショナルチェーン、残りの3割を地元店で構成しており、「カルディコーヒーファーム」や「スターバックスコーヒー」はとても好評だ。アパレル店も「グローバルワーク」を筆頭に好調を維持するなど、最近は飲食店よりも物販店の比率が増えている。今後は焼肉、寿司、中華などの飲食店の強化を図りたい。
―― 両施設の課題は。
清水 ニッケコルトンプラザは開業後30年以上が経過し、設備の経年劣化が目立ち始めた。受電設備はもちろんのこと、エスカレーターやエレベーターも更新が必要になっている。いずれは同施設の建て替えを考えないといけない。一方、ニッケパークタウンは1500台を収容する駐車場を備えているが、土日は渋滞が起きるほど混雑してしまう。しかし、敷地内は空きスペースが少ないので、将来的には立体駐車場を新たに整備することなどを検討している。
―― PM業務も積極的に受託している。
清水 外部施設のPM業務を行っているが、施設の維持・管理やイベント運営は、グループ施設の運営方法と異なっており、すごく参考になる。PM業務では当社から人材を派遣し、拠点の責任者として経験を積んでいる。こうした蓄積、ノウハウ獲得と人の成長が見込めるPM業務は今後も大切にしていきたい。
(聞き手・副編集長 岡田光/日下千穂記者)
商業施設新聞2465号(2022年10月4日)(4面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.386