元衆議院議員で現在タレントとして活動している杉村太蔵氏は、自身の出身地である北海道旭川市の賑わいづくりや地域活性化を目指し、(株)CocoHareteを設立。去る7月10日、旭川市の中心市街地、買物公園通りと5条通りが交差する場所に飲食店25店からなる商業施設「旭川Harete」をオープンした。街づくりにかける思いなどを聞いた。
―― 施設の概要から。
杉村 平屋建て一部2階建て7棟(A~G棟)、総延べ700m²規模に、飲食店25店からなる商業施設で、地域の賑わいを創出するサードプレイスの役割や、「北北海道」の産物を主体的に使い地域の食文化を発信する。
―― テナント誘致は。
杉村 昨年9月に出店者募集説明会を旭川市民文化会館で行った。400人が集まり、そこから84人が応募した。7次面談まで実施し、厳選を重ね25人選んだ。旭川市の中心地、買物公園通りの元気がなくなって久しいが、今年買物公園通りが50周年を迎えこともあり、これからの買物公園をつくっていきたい。
また、選ばれたのは旭川を中心とした北北海道の人たち。なお道外は沖縄からもいる。
―― 1500m²の敷地で広場に500m²を充てました。もう少し縮小して店舗にする考えは。
杉村 少しでもお金を生んでもらいたいのでつい事業者はそのように考えがちだが、それをやっては価値がなくなる。これだけ広い空間をつくることで、市民の皆さんにくつろいでもらう。そこに価値がある。この広場はビアガーデンや、できるならば毎晩キャンプファイヤーをやりたい。大学院で研究したことのひとつにアイヌがある。アイヌの辞書には孤独がなく、火を囲んで語らい踊り、歌い、集う。この施設のテーマは「今日もきっと誰かに会える」。各店の店舗面積はほぼ23m²で、8席にカウンターという仕様。そこに会話が生まれる。コロナで閉塞した今、もう一度人と人のつながりを取り戻したい。
―― 出店形態がユニークです。
杉村 3つ用意した。Aパターンは店舗運営委託契約、Bパターンは当社の社員になっていただく有期雇用契約、Cパターンが定期借家契約だが、結果、全員が店舗運営委託契約だった。
店舗の売り上げの80%が収益となり、20%が当社に入る。その代わり敷金・礼金・保証金が一切なく、内装、外装、厨房機器は当社持ち。辞めたい時はいつでも辞められ、違約金は発生しない。
また、商品開発、メニュー開発などのサポートも行う。
―― この狙いは。
杉村 通常この規模の店舗を旭川市内で出店すると費用に数百万円はかかる。やる気、意欲、能力があっても経済的リスクがあまりにも大きすぎて新規出店できない。非常にもったいない。そのリスクを私が持つ。万が一成功して大儲けできるよりも、万が一失敗しても多額の借金が残らない、そういうスキームの方が創業しやすいのではないか。これはある意味壮大な社会実験。このスキームを施設開発にあたり、尽力していただいた街制作室(株)の代表取締役の国分氏と全国に広げていきたい。
―― 山口県下関市でも展開されています。
杉村 パートナーの自治体を探していたところ、下関の唐戸商店街が是非やりたいとお声がけいただいた。「唐戸旭川Harete」として、来夏オープン予定だ。将来、旭川と唐戸で両施設に出店し合えたらと思う。
―― 「旭川Harete」において補助金は。
杉村 事業再構築補助金はいただいたが、旭川市からは補助金の助成はない。補助金ありきの街づくりは限界があり、補助金をもらうことがゴールになりがちだ。書類提出など煩雑な作業が増え、事業に集中できないところもある。
―― 最後に一言を。
杉村 旭川は決して小さな街ではない。全国の県庁所在地がある自治体で、旭川市よりも人口が少ない自治体は17ある。旭川市は北海道・東北のなかで、札幌、仙台市に次ぐ3番手で、北北海道をリードしていく存在。それをもっと旭川市民は誇りに思うべき。また、民間投資が入っていない。そこに腹立たしさを感じる。地方活性化と声高に叫ばれるが、最も厳しいのが中核市。ただ、逆にチャンスがあるのも中核市だ。インフラが整備されて、病院があり、学校もあり、住むには困らない。ただわくわく感・ドキドキ感が足りない。「旭川Harete」でわくわく感を創出したい。
(聞き手・特別編集委員 松本顕介)
商業施設新聞2463号(2022年9月20日)(4面)