電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第495回

東京工業大学 特任教授 栗田洋一郎氏


チップレットコンソーシアムを新たに設立
要素技術~システムまで一貫志向

2022/10/7

東京工業大学 特任教授 栗田洋一郎氏
 チップレットに代表される先端半導体パッケージング技術に大きな注目が集まるなか、日本国内でも国家プロジェクトが発足するなど、研究開発活動が活発化している。ここにきて、東京工業大学を主体に新たなコンソーシアムが立ち上がった。NEC、ルネサス、東芝で半導体技術者としてのキャリアを積んできた栗田洋一郎氏が中心となって誕生した「チップレット集積プラットフォーム」がそれだ。
 栗田氏は東工大の特任教授であり、大阪大学、東北大学などの実学系国立大学、企業各社と共同でチップレット集積のコンソーシアム形式での共同研究を行う。同氏は一方で、独立系国内OSAT大手のアオイ電子にも籍を置き、企画の立場を持つ。2つのポジションの相乗効果で産学を結び、研究開発で終わりがちな日本の研究を産業につなげていきたい考えだ。同氏にコンソーシアムで進める研究内容を聞いた。

―― まずは、これまでのご経歴から教えて下さい。
 栗田 大学では通信用光デバイスを専攻、東工大卒業後、96年にNECに入社して先端半導体パッケージ開発に従事してきた。NEC在籍時代はエルピーダメモリ、沖電気工業(OKI)とともに積層DRAM向けのTSVを用いた3次元実装プロジェクトに参加したり、NEC独自の3次元集積技術である「SMAFTI(スマフティ)」や独自のFOWLP技術の開発に従事したりしてきた。当時からICチップを積層/集積するプラットフォームとなるインターポーザーがキーになると考えており、その中で考案したのが「SMAFTI」であった。ポリイミド絶縁膜を用いた微細配線のインターポーザーと、シリコンと線膨張が整合した接合を用いた技術であり、昨今よく耳にする「RDLインターポーザー」「RDL-First Fan-Out」と同じものである。

―― NEC退職後は。
 栗田 短期間、ルネサス エレクトロニクスにも所属、事業戦略を担っていたが、12年に東芝に転籍し、メモリ事業部でTSV-NANDの開発などに従事したほか、半導体研究開発センター、コーポレートの研究開発センターに異動後は主に技術研究組合の「PETRA(光電子融合基盤技術研究所)」で光電融合技術開発のプロジェクトを推進してきた。

―― その後、東工大に戻ったきっかけは。
 栗田 国内にはメーンストリームの半導体メーカはなくなってしまったが、やはり、この分野の研究開発をやりたいという思いが強かった。事実上、総合電機を失った日本では、特に装置/材料のサプライヤーにとっては研究開発目標の設定が海外企業依存になりがちだ。一方で、海外は自国での装置/材料産業の育成に力を入れており、将来、国内に何もなくなってしまうという危機感がある。その意味で国内OSAT大手のアオイ電子にも所属させてもらっており、彼らのところにはファブレス/システムの具体的顧客とのつながりがある。これを利用して、要素技術のサプライヤー~OSAT~ファブレス/システムのバリューチェーンを構築したい。

―― アオイ電子はLEDなど汎用パッケージが主力分野の印象が強いです。
 栗田 アオイ電子は国内企業では唯一パネルレベル・パッケージの実用化をしている企業であり、先端パッケージなど新領域への進出に強い意欲を持っている会社だ。また、青梅エレクトロニクス(カシオマイクロエレクトロニクスを原点する国内有数のWLP・RDLライン)を傘下に収めたことも1つのきっかけとなっており、ここは将来のチップレット集積では重要なポテンシャルを持つ。10月から正式にスタートしたコンソーシアムでも、アオイ電子には中心メンバーとして参画してもらっている。

―― コンソーシアムで行う研究内容は。
 栗田 現在決まっているものでいえば大きく3つあり、「ブリッジ技術によるチップレット集積」「3D集積」「光集積」だ。ブリッジ技術はインテルの「EMIB」が有名だが、コンソーシアム内ではより洗練された新しいアイデアを用いた方式の研究を進める。3D集積は、現在主流のハイブリッド・ボンディングで用いられるものとは異なる方式の装置/プロセスを、さらにこれに適したアプリケーションに向けた開発を進める。光集積は電子チップと光チップ間の超高周波伝送に向けた実装技術の開発を行う。

―― コンソーシアムの期限などについて。
 栗田 コンソーシアム自体は研究テーマが明確になっているので、まずは来年から3年ぐらいのスパンで現在のテーマを進めていき、その後、状況に応じて新しいテーマが出てくれば取り組んでいく。さらにシステム寄りの研究も視野に入れたい。基本的にはアプリケーション志向で要素技術をドライブするかたちでいきたい。また、今後は国家プロジェクトとしても申請していければと考えている。

(聞き手・編集長 稲葉雅巳)
本紙2022年10月6日号1面 掲載

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