商業施設新聞
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第350回

福岡地下街開発(株) 取締役 太田敏也氏


20代向け店舗導入で客層拡大
地下鉄延伸で食物販を強化

2022/10/4

福岡地下街開発(株) 取締役 太田敏也氏
 福岡地下街開発(株)は、福岡市で、1日20万~30万人の通行量を誇る「天神地下街」を運営している。近年はコロナ禍の影響で、アパレルから生活雑貨や食関連のテナントへ転換すると同時に、20代をメーン顧客としたテナントも積極的に導入し、売り上げの拡大を図っている。天神エリアの再開発竣工や2023年3月には地下鉄の延伸も控える中、今後の戦略について同社取締役の太田敏也氏に話を聞いた。

―― 施設の概要を。
 太田 当施設は1976年に開業した商業施設で、天神エリアの主要施設や駅に面しているのが特徴だ。全長は南北590mあり、アパレルや生活雑貨、飲食も含めた食関連テナントなどが約150店出店しており、21年度(21年9月期)の売上高は約129億円であった。

―― コロナの影響は。
 太田 21年度(21年9月期)の売り上げは、コロナ禍前の19年度と比べ、30%減程度で推移しており、回復には至っていない。特に厳しかったのは、当施設の主力となるアパレル関連のテナントで、感染者数の増加などの影響が大きかった。アパレルテナント数も19年度は約50店あったが、現在は44店まで減少している。一方で、コロナ禍でも飲食やドラッグ・コスメは好調で、売上高はアパレル関連のテナントに比べ平均10%増で推移しており、デイリー性の強い業種が堅調である。

―― 現在注力していることは。
 太田 客層を拡大するため、20代をメーンターゲットにした若者向けのテナントを積極的に導入しており、レディスファッションの「ココディール」やスキンケア・コスメブランドの「オルビス」などを新たにオープンした。この効果に加え、天神エリアの再開発に伴って若者向けの商業施設が閉館していることもあり、当施設は30代がメーン顧客であるが、20代女性を中心に売上高が増加し、客単価が上昇している。また、入れ替えの際には生活雑貨や食関連のテナントへの転換を推進している。

―― 天神エリアの再開発への対策は。
 太田 福岡市が主導する再開発プロジェクト「天神ビッグバン」に伴い、雇用者数が約9万7000人(14年比2.4倍増)まで拡大する見込みで、オフィスワーカーに加え、近隣居住者の増加も推測されている。そのため当施設も、「(仮称)新福岡ビル」などが竣工する24年前後をめどに店舗入れ替えを計画している。再開発ビルに不足しているテナントを補完するとともに、オフィスワーカーに買い物してもらえるようなテナント誘致やMDを策定していく方針だ。

―― 23年3月には福岡市営地下鉄七隈線が博多駅まで延伸するが。
 太田 七隈線の延伸は、乗り換えなしで博多駅まで行けるので、天神南駅での乗り換えのお客様が減少するリスクを抱えている。一方で、利便性の向上により延伸部分の1日あたりの乗降客数が新たに約2万3000人増加すると福岡市が試算しており、当施設で買い物されるお客様の増加も期待できる。そのため、天神南駅に面した南エリアでは、日常使いしやすいように食関連のテナントを強化しており、食品を扱う「カルディコーヒーファーム」や芋けんぴがメーンの「芋屋金次郎」の売り上げが好調だ。さらに、南端エリアのベーカリーやスイーツなど期間限定のテナントも好調な売上高を上げており、23年春をめどに日常使いを意識したテナントをさらに集中的に配置していく。

―― サービス面は何を強化するのか。
 太田 現在25万人のカード会員向け施策の実施により集客力を強化するだけでなく、21年からは当施設の公式アプリを導入し、「てんちかマイル」を貯めて、様々な特典やテナントアイテムを提供することで買い物をより楽しめるようにしている。加えて、SNSも活用し、新規会員獲得に取り組む。

―― 今後の抱負を。
 太田 当施設は、商業機能に加え、天神エリアにあるいろいろな施設と接続し、回遊してもらうための公共地下歩道という役割も果たしてきた。今後も、商業を通じて利便性とデイリー性を強化し、新規顧客の取り込みに注力するだけでなく、ヨーロッパ風の環境をさらに50年維持することなど公共地下歩道としての役割を果たせる取り組みにも尽力していく。そのため、当施設だけでなく、周辺施設とより連携し、お客様のために何が必要かを考え、当施設の価値を上げていかなければならない。

(聞き手・北田啓貴記者)
商業施設新聞2464号(2022年9月27日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.385

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