(株)アーバンリサーチ(大阪市西区)は、「URBAN RESEARCH DOORS」のスピンオフとして、キャンプイン型フェスティバルを2013年から開催している。そのイベントから派生して、19年9月にキャンプ場「TINY GARDEN蓼科」を長野県茅野市に開業した。同施設について、TINY GARDEN 事業 ディレクターの中馬剛仁氏に話を聞いた。
―― TINY GARDEN蓼科をオープンしたきっかけは。
中馬 「商品の作り手の顔や想いを直接伝える場を設けたい」という想いから始まったTINY GARDEN FESTIVALは、おかげさまで毎年盛況で、来場者も年々増えてきていた。その中で、毎年セットを作って壊すことの繰り返しではなく「イベントの空気感をいつでも感じることができる場を作りたい」という声が上がった。それを受けて、15年ごろからキャンプ場運営を構想し始めた。
―― なぜ蓼科という立地を選んだのでしょう。
中馬 晴天率が高い、四季を感じられ、シーズンごとに異なる表情を見ることができる、都心からのアクセスが良い、など様々な条件で場所を探していたところ、蓼科周辺が目に留まった。そんな折、蓼科でキャンプ場を運営していた前オーナーと出会い、話し合いを進めるうちに、その施設を引き継がせていただけることになった。
―― 新しい建物は建てていないのですか。
中馬 施設はすべて、既存の温泉旅館やバンガローなどをそのまま使用し、内装だけを整えた。蓼科は比較的湿度が低く、建物が長持ちする。元の建物はどれも築40年以上だが、そのまま活用できるくらい保存状態が良かった。
―― 主な客層は。
中馬 フェスに毎年参加していたリピーターや、アパレルブランドファンの利用も多いが、アーバンリサーチのキャンプ場だとは知らない地元の方にも来ていただいている。そのような方でも、キャンプ場内で衣服を購入したり、カフェで食事をしたりすることで、当社の新たな顧客になっていただくこともある。
コロナ禍における変化としては、最近は三世代で利用される方が多い。蓼科で落ち合い、父と祖父はロッジでゆったり、子どもたちはキャンプで楽しみ、食事はみんなで、という使い方はコロナ禍ならではだろう。開業当初から設けていたワークステーションも利用者が増えた。
―― キャンプ場としての見どころは。
中馬 我慢なく過ごせるよう、ウォシュレット付きの綺麗なトイレや、お湯が出るキッチンを設けた。レストランでは地元の美味しい野菜や果物を提供。そのほか、地域の方と協力してオリジナルのクラフトビールの製造も行った。
―― 運営ノウハウはどこから得たのですか。
中馬 当社は東京・立川で飲食店「TINY GARDEN KITCHEN」を展開しており、それがキャンプ場を運営していく助けになった。設けたい席数に対する厨房の大きさや人員数を設定する際などに、これまで培った経験を活かすことができた。
―― 今後の展開は。
中馬 現状、冬期は電源を確保できる湖畔のキャンプサイト以外は閉鎖しているが、冬キャンプに対する需要も高まっている。今後は冬も開ける可能性がある。
同時に、スキーやスノーシューなどのスノーアクティビティの面白さを伝えたいと考えている。キャンプ場周辺にはロープウェイやスキー場があり、蓼科は雪質的にも家族でスキーを楽しむのに最適だ。また、1時間ほどで行ける白馬で遊ぶこともできる。オウンドメディア(URBAN RESEARCH MEDIA)でも、冬の蓼科の魅力を発信していきたい。
―― 別の場所でのキャンプ場開業の可能性は。
中馬 今はキャンプブームでキャンプ場を新設する状況ではないだろうから、できれば違う方向でTINY GARDEN 事業を蓼科以外でも広げたいと考えている。ただ、新しく作ることはせず、空き家や廃校などすでにあるものを利活用することが理想だ。適切な場所や人とご縁があれば、新たな場づくりを行いたい。
TINY GARDEN 事業を通じて、URBAN RESEARCHやURBAN RESEARCH DOORSといった他ブランドの価値が上がり、色々な方にECを利用いただいたり、実店舗の来店促進となることを目標としている。そのためには、事業の拡大ばかりを狙わず、機会を慎重に見極めていきたい。
(聞き手・安田遥香記者)
商業施設新聞2461号(2022年9月6日)(5面)