商業施設新聞
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第347回

(株)メトロプロパティーズ プロジェクト推進部 シニアマネージャー 吉田陽一氏


変化するニーズに柔軟に対応
地下駅ナカ、地上物件を強化

2022/9/13

(株)メトロプロパティーズ プロジェクト推進部 シニアマネージャー 吉田陽一氏
 「エチカ」「エチカフィット」「メトロピア」「エソラ」などの駅ナカ・駅ウエ商業施設を東京メトロ180駅のうち約50駅で運営する、東京メトログループの(株)メトロプロパティーズ(東京都台東区)。コロナ禍で変容するニーズや市場への柔軟な対応や、新たな事業提案が奏功している。今後は地上での事業に力を入れるという。プロジェクト推進部のシニアマネージャーの吉田陽一氏に聞いた。

―― コロナ禍での消費行動をどう見ていますか。
 吉田 EC台頭や顧客の消費行動の変化はコロナで始まったわけではないが、コロナで一気に加速した。我々も客数主体のビジネスモデルから脱却しなければならなくなった。

―― 具体的には。
 吉田 以前は流動客数を重視していたが、客数が2~3割下がり、いくつかのテナントが立ち行かなくなった。2021年度も東京メトロの乗降客は19年度比で7~8割程度。つまり2~3割売り上げが減る中で、人件費、原価、物流費などが上昇し、退店も増えた。一方で、EC企業や、駅未出店ブランド、地方で安定した業績を確保し、東京で挑戦したいところが増えるなど、プレーヤーが変わった。EC企業は顧客の購買や、何をクリックしたかなどのデータを持っている。売り上げが一定規模になると今度はお客様の生の声が聴きたくなり、駅ナカに出店したくなる。
 コロナで退店は増えたが、駅ナカにおいては空き区画は片手程度にとどまる。コロナで変化したお客様の望むものや、マーケットの変化に対応したMDを意識するようになった。

―― 新たな消費の担い手としてZ世代が話題に上ります。
 吉田 その消費パワーには目を見張るものがある。古いブランドの、例えばスニーカーをリデザインしたものがZ世代に売れる。また、ブランドで選ぶのではなく、SDGs、モノづくりの背景、社会的意義を重視する傾向が強い。

―― 購入はECですか、リアルでしょうか。
 吉田 それを分けることに意味はない。探す手法が雑誌からネットに変わったかもしれないが、駅ナカで見つけて気に入った店舗・商品があればSNSで共有する。興味があれば駅に来る。店舗で買い物するリアルの体験を求めている人が意外と多い。
 最近ではECの送料が高いから駅ナカで受け取るケースが増えて、データを見ると、ついで買いも目立つ。店に来ると欲しくなる。それがリアル店舗の面白い点だ。

―― 駅ナカ商業施設は今後も積極的に展開しますか。
 吉田 東京メトロの駅はほとんどが国道や都道の下にあり、店舗や施設設置は道路管理者の許可が必要で商業施設の用地はない。使わなくなった駅員の居室や、定期券売り場の需要がなくなった場所を探して開発するものの、残された開発用地は少ない。それでも定期券売り場の転換を数駅で仕込み中だ。暫定利用として、王子駅では定期券売り場の半分を使い野菜を売ったり、豊洲駅の定期券売り場で醤油を販売するなど、調査しながら本開発に向けてお客様のニーズや何が必要かを探ったりしている。

―― コロナで何か新たなニーズはありますか。
 吉田 出店を検討していた総菜店が、駅ナカの区画では面積が取れず店内調理が難しかった。そこである地上の物件をセントラル工場として活用し、駅ナカのA店、B店に運ぶ仕組みとした。これをテナントとビルオーナーに提案したところ双方から快諾を得て弁当業態となるなど、コロナ禍で生まれた業態となった。

―― DXの取り組みは。
 吉田 集客の手法として新しいテクノロジーを使うのは当然だが、商業においてデータ活用は難しく、最終的には定性データによる、仮説と検証の繰り返し。データを活用してどう仮説を立てるのかが重要だ。
 今、GPS機能を取り入れて顧客の動きを捉えている。さらに属性分類を検討している。駅ナカなどに商業施設や店舗を展開している50駅を分類して属性、グループ化し、同じグループなら同じMDで通用する部分について検証する。例えば同じグループでA駅とB駅は類似しているとすると、テナントにこの点が似ているから両方出店して下さいなど、データを使ってリーシングや開発に活かせるのではないかと検証を進めている。

―― 最後に抱負をお願いします。
 吉田 駅ナカ事業を中心に伸びてきたが、地上に目を向けている。東京メトロは商業施設の開発を進める方針で、東京メトロが行う駅ビル開発への参画に加えて、地上用地を暫定的に利用するケースも含めて地上での開発を積極的に推進し、収益拡大の柱としたい。さらに外部物件のリーシングマネジメントやコンサル業務を積極的に受託していく考えだ。

(聞き手・特別編集委員 松本顕介)
商業施設新聞2460号(2022年8月30日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.384

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