(株)にしき食品(宮城県岩沼市)は、自社ブランド「NISHIKIYA KITCHEN」として、カレー、スープ、パスタソースなどのレトルト食品を販売している。40~60代の主婦層を中心に人気を集め、6月には東京都内2店目の直営店を東京ミッドタウンにオープンした。自社ブランドのNISHIKIYA KITCHENについて、営業本部 本部長の菊池洋一氏に聞いた。
―― 会社の歴史から。
菊池 創業からしばらくは佃煮などの惣菜を製造していたが、1975年に当時印刷会社に勤務していた現代表取締役・菊池洋氏が営業活動の一環としてレトルト殺菌装置を販売し、商品開発などのサポートを行っていた。その後菊池氏が当社に入社したことで、レトルト業界に本格参入した。当初はファミレスブームだったこともあり、飲食店や弁当屋向けに業務用のレトルト食品を卸していた。しかし、2000年代に入ると価格競争が激しくなったのに加え、業務用のカレー需要も減退し、業務用を継続していくことが難しくなった。そこで、高付加価値商品を小売用のプライベートブランド(PB)として卸す方針へ転換した。
―― 自社ブランド立ち上げの経緯は。
菊池 小売向けのPBは順調に売り上げを伸ばしていたが、品質よりも価格が先行することに疑問を持っていた。「販売価格にとらわれず自分たちが作りたい商品を作りたい」と思い、10年前に自社ブランド「にしきや」を立ち上げた。さらにその商品を自分たちで販売しようと考え、12年に初めての直営店「にしきや本店」をオープン。それに合わせて商品ラインアップも拡充した。
―― 店舗展開は。
菊池 自社ブランドの発信拠点は東京に置きたいと考え、13年、自由が丘に都内1号店を開店した。その後は創業地である宮城県内で出店を拡大。地元での認知度向上を目指した。昨年3月に「にしきや」から「NISHIKIYA KITCHEN」へとブランドをリニューアルし、今年に入ってから恵比寿や新宿、神戸など大都市圏で催事出店を加速している。6月には都内2店目の常設店「東京ミッドタウン店」をオープンした。現在は宮城5店、東京2店の計7店を運営している。
―― ブランドリニューアルを実施した経緯は。
菊池 自社ブランドが10周年を迎えたことと、イートインスペースを併設して規模の大きい「仙台パルコ店」をオープンしたのがきっかけとなった。味づくりには自信があったが商品の見せ方に不安を持っていたので、初めて外部のクリエイティブディレクターに当社のブランドを客観的に見ていただいた。
結果、ブランドの名称と商品のパッケージデザインが変わった。リニューアル前は可愛らしいデザインのパッケージを採用していたが、「本質を追求するという理念が伝わりづらい」との指摘から、スタイリッシュなデザインにシフトした。
6月にオープンした東京ミッドタウン店は、店内で温めたレトルトカレーをテイクアウトすることができる新たな業態として展開している。
―― 商品やブランドの特徴は。
菊池 丁寧にろ過した水や3種類の塩を使用するなど、レトルト食品を製造し始めた当初から素材にこだわりを持っている。今でも素材の味を大事にしており、全商品で化学調味料や着色料、香料は使っていない。また、10年ごろから約10年間、カレーの本場・インドへ出向き、作り方の研究やスパイスの厳選などを行い、さらなる美味しさを追求している。
NISHIKIYA KITCHENのコンセプトは〝世界の料理を「カンタン」に。〟であり、「忙しい毎日を送るお客様の料理が少しでも簡単になるように、でも手抜きとは思えない美味しい食品を提供したい」という想いを込めた。
―― 今後の展開を。
菊池 当社の認知度はまだ低いと認識している。そのため、商業施設内など人通りの多い場所で店舗を展開し、大阪など東京以外の大都市圏にも出店を拡大する意向だ。催事店を活用し、常設店を開くのにふさわしい場所を探っていく。店舗形態としては、20坪以上の場所を確保することができれば、イートインスペースも設けたい。
NISHIKIYA KITCHENを手土産やギフトとしても使っていただけるブランドに育て、競合との差別化を図っていく。またブランドコンセプトにもあるように、現在世界各国の料理をレトルト食品にできないか研究している。今後、商品ラインアップはさらに拡充するだろう。現状、自社ブランドの売り上げは全社約72億円(21年度)のうち10%程度であるが、将来的には30%まで引き上げたい。
(聞き手・安田遥香記者)
商業施設新聞2456号(2022年8月2日)(8面)
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