商業施設新聞
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No.867

家電量販店市場が冷え込む韓国


嚴在漢

2022/8/2

 新型コロナのパンデミックの最中は成長著しかった韓国家電量販店市場が、急速に冷え込んでいる。新型コロナの特需が消えつつある中、利上げやインフレなどマクロ経済のプレッシャーまで加わっているのだ。今年はサッカーのワールドカップといったビッグイベントも控え、グローバルで家電販促の機会があるが、成長の勢いが盛り返すかは未知数である。

 韓国家電流通市場において60%強のシェアを占めるロッテマート、サムスン電子販売(サムスンデジタルプラザー)、ハイプラザー(LGベストショップ)、電子ランドなどのいわゆるビッグ4は、新型コロナのパンデミックに合わせて高成長を持続してきた。ロッテハイマートを除いた3社は、2021年通年の業績が過去最高となり、新型コロナの特需を掴んだ。

 だが、22年に入ってこの4社は、1~3月期と4~6月期の2四半期連続での売り上げ下落を余儀なくされた。08年のリーマンショック以降、14年ぶりである。22年1~3月期は新型コロナの新規感染者数が1日に30万人を突破するなど、外出控えなどによる売り上げ減少が影響した。4~6月期にも失速が続いたのは、全般的な家電需要の鈍化によるものだ。パンデミックの過去2年間は、家電の新規購買や買い替えが活発だったが、これからは旅行やレジャーなどの趣味のほうに支出がシフトしている。

ソウル市内のある家電量販店の売り場。日曜日も客入りはまばらだ
ソウル市内のある家電量販店の売り場
日曜日も客入りはまばらだ
 韓国産業通商資源省が発表したオフライン流通企業の売上高は、22年5月ベースで児童スポーツが前年同月比26.8%増、ファッション雑貨が同19.3%増と上昇したものの、家電部門は同9.7%減少した。家電の需要はあるにもかかわらず、購買を先送りし、優先順位から外して購買を諦める事例が増えている。

 こうした低迷の要因には、利上げとインフレの影響が最も大きい。世界規模のインフレにより、韓国でも物価上昇率が6%台に達し、消費が滞っている。生活費の負担が大きくなった状況下、必需品ではない家電の購買は後回しにされている。各国の中央銀行がインフレの対応のため、公定金利を引き上げたのも家電市場に打撃を与えている。韓国銀行も公定金利を0.5%と大幅に引き上げて以降、追加的な引き上げ余地を残しており、主要銀行も貸し出し金利の引き上げに踏み切っている。このため利子の負担が増え、家電の購買量はさらに落ちるという構図になっている。大韓商工会議所がデパートや大型ディスカウント店など500社を対象に調査したところ、22年7~9月期の小売流通業の景気展望指数(RBSI)は84となった。RBSIが100以上ならば次期四半期の景気を前期四半期より肯定的に予測する企業は多く、100以下はその反対である。今回の調査結果は、前期四半期(99)より15ポイントも急落している。

 こうした需要の鈍化に加えて消費者心理の低下が重なり、家電の在庫が膨らんでいる。韓国金融監督院の資料によれば、22年1~3月期ベースでサムスン電子の在庫資産は49兆5907億ウォン(約5.2兆円)となり、前年同期比で55%も増えた。LG電子も同期に10兆2143億ウォン(約1.07兆円)の在庫資産となり、同28%増加したことが分かった。

22年上半期(1~6月期)に韓国のオフライン家電売り場のみならず、オンライン家電売り場の売上高も下落している。ロシアによるウクライナ侵攻が長期化するにつれて、消費財の物価指数は世界的に高まり続けている。インフレによる需要鈍化の影響が家電市場全般に広がることから、韓国の消費不振は当分の間続く見通しだ。
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