(株)アデランスは、50年以上前からウィッグを販売するなど髪の悩みに寄り添ってきた。近年は髪にとどまらない「美」を提案する新ブランド「BeauStage(ビューステージ)」を立ち上げ、その中でアイブロウサロン事業を開始した。アイブロウサロンについて、同社ビューティ&ヘルス事業推進部長の岸富士雄氏に聞いた。
―― アイブロウサロン事業開発の経緯は。
岸 コロナ禍での外出自粛により、コア事業であるレディスアデランスのブースに空きが生じていた背景があった。そこでまず、既存店を有効に使えないか考え、顔周りのサービスやメニューを検討した。だが、すぐにアイブロウに辿り着いたわけではなく、試行錯誤を繰り返し、アデランスのメーンターゲット層ではない新たな顧客層に着目した。悩みが多く手入れがしにくいパーツとして眉が浮上したことをきっかけにアイブロウ専門事業を開発した。当時、眉毛専門店が少なかったため、専門性で他社との差別化を図った。
―― 現在のアデランス、アイブロウサロンの店舗数は。
岸 アデランスは全国に165店、アイブロウサロンは2020年11月開業の「新宿東口店」が1号店で、現在、26都道府県に51店を展開し、基本的にレディスアデランス既存店に併設する形で出店している。
―― 客数はどうか。
岸 20年11月~22年5月までで5万人の新規顧客が来店している。来客層は20~30代が多く、この数字は予想をはるかに上回る数だった。
―― 22年度の出店は。
岸 47都道府県への出店を目指している。そこで課題になるのが人材の確保だ。美容師免許を所有した、美容感度の高い20~30代の顧客層と世代の近いスタッフを採用し、来店しやすい環境をつくっている。基本的にアデランスの店舗に併設するためスピーディーに新規出店に踏み切りたい。
―― 他社との違いは。
岸 アデランス本来の魅力である「悩みの解決」に重きを置き、カウンセリングに時間をかけていること。1時間の施術時間のなかで十分なカウンセリング時間を設けている。例えば、お客様が平行眉を希望した場合でも、お客様の考える平行眉と、プロの目から見た平行眉は認識が違うこともある。そうすると希望と仕上がりに差ができてしまうが、これを防ぐことができる。また、お客様の希望するもの以外が似合うこともあるので、そのときはきちんと似合う形などを伝えることで、齟齬なく施術を進めていける。このほか、プレートを使わず、骨格を見ながらフリーハンドで眉を作ることでお客様ごとの眉を作ることができる。
―― 単体での出店予定は。
岸 現段階では、47都道府県への出店を実現するためにも、まずは併設店の出店を優先したい。設備投資がかからずスピード感のある出店ができるからだ。ただ、フランチャイズ化は視野に入れている。今後もマーケティング調査を行った上で、車で来店する地方の商業施設への出店なども検討している。地方都市はこうした商業施設にこそ需要があると考えている。可能性があれば、併設だけにとどまらず出店していきたい。
―― 社内で目指すポジションは。
岸 22年2月までの出店計画は33店だったが、実績として46店まで積み上げることができた。「予約が取れない」などのニーズに応えた結果、予想を超える出店スピードになった。今期の売り上げは前期の150%増を目指し、美容事業の売上構成比率を上げたい。
―― 今後のビューティ系のニーズをどう見るか。
岸 コロナ禍が終わったとしても顔周りのニーズ・関心は下がらないと予想する。またアイブロウサロン事業にとって、これからの顧客であるZ世代のニーズとして目元周りの施術メニューの人気があることから、アイブロウ以外のメニューやオリジナルコスメの販売なども検討し、幅広いニーズに応えていきたい。
―― 今後目指す方向性は。
岸 まずは、47都道府県に出店すること。ターゲットである20~30代を、アデランスの本事業の顧客になるまで長く利用してもらいたいと考えている。ここで大切になるのが40~60代へ向けたサービスだ。アイブロウサロンを入り口に当社を知ってもらえた顧客に長くお付き合いいただくため、新たなサービスの展開が必須になる。現段階では思案中だが、コミュニケーションを取り続けることができるサービスを提供していきたい。
(聞き手・副編集長 若山智令/鈴木さやか記者)
商業施設新聞2450号(2022年6月21日)(7面)