イオンタウン(株)は、全国で地域密着型ショッピングセンター(NSC)を展開しており、施設数は4月開業の「イオンタウン旭」(千葉県旭市)を含め計151施設となった。近年はテーマやコンセプトを持たせた特色ある施設づくりを進めるほか、2022年度(23年2月期)はいよいよ東京23区内へ初出店を果たす。同社代表取締役社長の加藤久誠氏に聞いた。
―― 前期の振り返りから。
加藤 この2年間、新型コロナの感染拡大があったが、当社はNSCをメーンに展開し、オープンエアーの施設も多いため、コロナ禍においても既存店売り上げは前期水準をクリアした。当社にとって、新型コロナが特別大きなマイナスにはならず、逆にNSCの存在意義を再認識できたと言える。
22年度の立ち上がりについても3、4月は順調に推移した。ただし、社会情勢の不安や様々なものの値上げなどがあり、決して油断できない状況だ。
―― 現在好調な業種は。
加藤 新型コロナの影響もあると思うが、食物販や中食関連、ドラッグストアやクリニックなどのヘルス&ウエルネス関連といった、より生活に密着した業種は好調だ。また、21年度(22年2月期)の下半期からはアミューズメントや飲食にもお客さまが徐々に戻ってきたと感じる。
―― 今期の新規開設は。
加藤 22年度は、22年4月のイオンタウン旭に加え、6月の「毛呂山」(埼玉県入間郡毛呂山町)、今冬の「旗の台」(東京都品川区)と「豊中庄内」(大阪府豊中市)の計4施設を予定する。年度によって多少の変動はあるものの、新規開設数としては例年水準だ。毛呂山は複数棟で構成した、当社が最も得意でスタンダードなタイプのNSCとなる。
旗の台は、品川区という都心エリアへの出店となり、東京都内には「稲城長沼」(東京都稲城市)、「田無芝久保」(東京都西東京市)があるが、23区内への出店は初。従来の当社の都市型施設とも少し違う、新たな都市型モデルと位置づける。旗の台の核テナントにはドラッグストアを計画しており、クリニックや飲食店などを導入する予定である。
―― 新店はテーマを持つ施設が多い。その狙いは。
加藤 ありきたりな施設や平均的な施設づくりではなく、特徴がないと生き残っていけない。個人的に、地域のニーズに応えることも含めて、特色を持ったNSCを作れるかが、生き残れるかのキーだと思う。今後は平均的なNSCはあまり作らず、テーマやコンセプトがしっかりしたNSCを作っていく。金太郎飴のような施設は陳腐化し、劣化スピードも早い。
―― 既存施設の活性化にも注力しています。
加藤 店舗年齢が20年を超えた店を中心に、計100店規模の活性化・リニューアルを進めており、21年度は大規模、小規模を合わせ32施設で活性化・リニューアルを行った。「おゆみ野」(千葉市緑区)、「久御山」(京都府久世郡久御山町)、「弥富」(愛知県弥富市)、「盛岡駅前」(岩手県盛岡市)などは大規模改装を行い、弥富はユニクロや西松屋などアパレル店の面積の拡充、盛岡駅前は別敷地にウエルシア棟の増築と専門店ゾーン刷新、おゆみ野と久御山も専門店の入れ替えや施設設備の更新・修繕、エスカレーター新設などを実施した。今期の大型活性化・リニューアルに関しては10施設程度を計画しており、前期よりも多くなる。
また、25年度までに約250億円を投じて55~60施設の活性化・リニューアルを計画しており、前述した計100施設の活性化・リニューアルを達成するスケジュール感で動いている。一方、以前は活性化着手の目安を店舗年齢20年としていたが、今はそれでは少し遅いと感じ、店舗年齢14~15年の店から活性化を始めている。
―― 出店エリアや立地について。
加藤 ケースバイケースだが、なるべくお客さまに近いところへ出店していきたい。高齢化など様々な社会問題がある中で、例えば車で来てもらう来店手段は減ってくる。それならば、お客さまが住むところの近い場所へ出店して来店してもらい、お客さまや地域と一緒にSC運営をしていく。これが、これからのNSCのあり方だと思う。郊外、住宅地、都市部など様々なエリアや立地へバランス良く出店していきたい。
―― 最後に抱負をお願いします。
加藤 積極的な出店を継続し、中期目標である25年度(26年2月期)に175施設体制を達成したい。現在151施設なので、これまで以上に出店スピードを加速させる。ノウハウのある郊外型に加え、旗の台のような新しい都市型もあわせて展開していく。そして、その先の長期目標である30年度(31年2月期)の225施設体制を目指す。
(聞き手・副編集長 若山智令)
商業施設新聞2450号(2022年6月21日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.379