1969年にPARCOの1号店として開業した池袋PARCO。大ターミナル駅の池袋駅に直結し、街の顔でもある同施設は、昨秋から大規模改装を進めており、この春グランドオープンした。地上1階を16年ぶりに改装して時代に合わせて一新するなど、新たな方向性を打ち出している。(株)パルコ池袋店店長の掛谷亮介氏に改装の狙いなどを聞いた。
―― 池袋PARCOの客層を教えてください。
掛谷 ハウスカードの購入履歴をみると30代が約35%、20代が約26%、40代が約22%。ただあくまで購入データなので実際いらしている方はもう少し幅広いかもしれない。年齢層は他のパルコと比べても大きな違いはないが、特徴として男性比率が高く、約3割におよぶ。
―― 商圏は。
掛谷 池袋は様々な路線が乗り入れるターミナル駅で、池袋駅を拠点とする沿線にお住まいの方や、乗り換えの方などに利用していただいている。東京城北エリア、埼玉南部の方にとっては都心への玄関口のような場所なので、多く来館していただいている。
―― 大規模改装を実施しています。
掛谷 昨年秋には30区画900坪改装した。池袋PARCOでもおうち需要の高まりを感じ、「Francfranc」を池袋エリア最大級に増床したたほか、Seriaが他の館からP'PARCOに移転するかたちでオープンした。これらの店は好調に推移している。
また2階はフロアコンセプトを変えた。もともとレディスフロアだったがユニセックスのフロアとし、「PUBLIC TOKYO」が新規オープンしたほか、「FREAK'S STORE」を5階から移転していただいた。池袋PARCOにおける強みの一つは、男性比率が比較的高く、カップルや夫婦で来られる方も多いなど、幅広い層を受け入れられること。より幅広いお客様を受け入れる施設にしたかった。リニューアル後は、ユニセックスフロアである3、4階と2階の買い回りが増えた。
―― 続いてこの春にも大型リニューアルを実施しました。
掛谷 低層階を中心にリニューアルし、そのうち地上1階は16年ぶりの改装となった。従前はレディスフロアで、どちらかというと特定の顧客がついているブランドが多かった。ただ1階は明治通りに面し、ここには毎日非常に多くの方が歩いている。そこで『集い』をテーマに男女問わず、幅広い方に利用いただけるフロアとした。
テナントとしてはコスメブランドの「Cosme Kitchen」やスマホケースなどを販売する「CASETiFY STUDiO」などを誘致した。また、生キャラメルシフォンケーキの専門店「MERCER bis」も池袋エリア初として誘致している。こちらもユニセックスフロアであり、1~4階の回遊が期待できる。
―― 1階ではショーウィンドウをなくしました。この狙いは。
掛谷 これまではウィンドウによりファッションを提案してきたが、今は事前にSNSなどでチェックするお客様も多く、ウィンドウによる訴求力が弱まっていると感じていた。そこで、いっそウィンドウをなくし、館内のMERCER bisが見えるようにし、来館するきっかけを作ろうと思った。
館の前を行き交う方々への情報発信という意味では1階にオープンした「atmos pink」の取り組みも面白い。スニーカーなどを販売するだけでなく、店内でダンスのワークショップなどを行う。明治通りに面しており、店内もピンクでインパクトが強いため、エネルギッシュな印象を感じていただけると思う。
―― コロナ禍という厳しい時期に改装をした狙いは。
掛谷 ジェンダーレスなど時代に合わせた対応を進めたかったことが一つ。また、館を発信するチャンスでもあった。景気が悪化すると一般的に投資する施設も少なくなり、こうした時期にリニューアルをすることで池袋PARCOの存在や、新しくなったことをアピールできる。3月、「SNIDEL」が地下1階に移転オープンしたが、初日には400人もの行列ができた。こうした有力なテナントに力を貸していただくことで、厳しい時期でも館の魅力を上げられる。
―― 地上1階の改装で館の雰囲気が変わりそうです。
掛谷 池袋という街自体もずいぶん変わってきた。駅周辺に高層マンションができ、公園の整備も進み、都市生活者が緑を感じながら生活ができるようになった。この春の改装で、2階に「A+ TOKYO」がオープンしたが、こちらの店ではアクティブウェアを展開していただいており、都市生活者の取り込みも期待している。
―― 今後の方向性について。
掛谷 改装を検討する会議で何度も出てきたキーワードが『心の豊かさ』だった。改装中、ウィンドウなど使ってアートの展示を行ったが、すごく反応が良かった。テナント構成に加え、アートなども含めて、心の豊かさを提案する商業施設でありたい。こうした心の豊かさを時代とともに変化させながら運営していくのが池袋PARCOの役割の一つだと思う。
(聞き手・編集長 高橋直也)
商業施設新聞2446号(2022年5月24日)(2面)