平和堂グループの富山フューチャー開発(株)は、富山市で大規模SC「フューチャーシティ ファボーレ」を運営しており、2019年10月の増床リニューアルから2年半が経過した。これまでの状況について同社常務取締役営業企画部長の前田展宏氏に聞いた。
―― 増床リニューアルから現在までの状況は。
前田 19年10月のリニューアルでは、新規店86店に加えて、移転35店を合わせた121店(全体の約70%)が新しく生まれ変わった。ファッションやキッズワールドでショッピングの充実、食物販や飲食でエンターテインメントの充実、そしてトキ消費の充実にも取り組んだ。改装後は、若い人の来店が増え、必ずしも買い物をすることだけが目的でなく、アミューズメントやシネマなどへ遊びに来館する状況が20年からずっと続いている。ただし、その後は新型コロナの影響で、私たちが本来のターゲットとしている30代ファミリー層が来館を控える状況が続いてきた。
―― コロナ禍では、全国的におうち需要が旺盛だが、ファボーレはどうか。
前田 20年度は、コロナ禍で家の中でも快適に過ごすための巣ごもり需要で食品館の売り上げも好調であり、ホームセンターや家電量販店も伸びた。
21年度は、食品館と生活雑貨がお客様の巣ごもり消費によって好調だった。日用品、生活必需品の需要は高く、21年度の全館売り上げは前年度比116%だったが、目指してきた数値には届いていない。
―― コロナ禍では、アパレルと飲食店が大きな影響を受けた。
前田 そのためアパレルでは、インスタグラムを3月から開始しており、個々のお客様に訴求していくように、テナントをバックアップしている。飲食店では、お客様が店内で食べられなくても、ランチのテイクアウト需要があるため、施設内の太陽の広場で弁当マルシェを設置している。毎日200~300食が売れる名物企画となった。
―― 22年の春商戦の集客状況は。
前田 ファボーレがターゲットとする顧客層は、小学生や中学生のお子さんを持つ30~40代のファミリー層が中心である。その中で、5~12歳までの子供のワクチン接種にまだ時間がかかること、感染症の低年齢層化が進んでいることを考え、学校などから人が多い所へ行くことは控えるように指導があるため、子供連れのファミリー層の来館がなかなか進まない状況が続いている。お客様は発表される富山アラートや、感染者数の数字に敏感で、これによって来館者数が落ち込むこともあり、新型コロナの第1波から第6波までずっと振り回されてきたような気がする。
―― そのような中でも、WEB予約の反響は良かった。
前田 完全なECとは言えないが、WEBでの販売予約には注力している。WEBで購入予約を受け付け、お客様に商品を取りに来てもらっている。中でも正月の福袋の販売は毎年好調だ。富山県は正月の福袋を大切にする文化がある。1月1日の初売りでは、1袋1万円のファボーレ福袋を1000袋用意し、WEB予約を21年12月1日に開始したところ、即日で完売した。例年は888袋を用意しているのだが、コロナ禍でお客様のEC需要が進んでいると感じ、増加対応した。
―― 今後の事業をどう見通すか。
前田 リニューアルオープン直後の4カ月間は、計画以上の売り上げになったので、今後は当時と同等の状況を目指したいが、さらに変異したウイルスの登場もあり、先行きの不透明さが残る。お客様の衛生管理への感覚や、外出したいという欲求はコロナ以前の状態には戻らないと考えている。今後は、感染症の状況に合わせた対応が必要になる。テナントの皆様も経営が大変なため、早くお互いに、コロナ禍を乗り越えられて良かったねと言い合える状況に持っていきたい。
―― 今後の施設開発について。
前田 小売業にはお客様の役に立つような変化への対応が必要だ。ゾーニングでは、そのような時代に合わせた活性化を考えていく必要がある。近隣地域は人口が増えており、0歳から15歳の人口構成比が極端に高い。また、工業団地の拡張予定もあり、働く場所も増える。ファミリー層が訪れる中で、今後は家族の絆や環境配慮(リサイクルなど)、あるいは健康をテーマとするものの需要があると考えている。
富山市内では、3月に富山駅前に新しい商業施設ができ、商業環境に変化があったが、これは新型コロナで低迷している個人消費を引き上げる明るい話題だと感じる。新型コロナの状況にもよるが、GWの帰省客や行楽のファミリー層には、感染症対策を施したイベントで集客を図り、大好きな家族の絵の展示などを通して、家族の楽しい時間をたくさん提供していきたいと考えている。
(聞き手・笹倉聖一記者)
商業施設新聞2444号(2022年5月10日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.374