商業施設新聞
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第325回

横浜ダイヤビルマネジメント(株) 企画運営部長 田中智枝氏


横浜ベイクォーター オープンモール独自の施策実施
テナント密着型の施設運営展開

2022/4/5

横浜ダイヤビルマネジメント(株) 企画運営部長 田中智枝氏
 横浜ダイヤビルマネジメント(株)は、横浜駅東口においてオープンモール型の商業施設「横浜ベイクォーター」を運営している。駅東口の顔とも言える施設であり、動向を同社企画運営部長の田中智枝氏に話を聞いた。

―― 施設の概要から。
 田中 横浜ベイクォーターは2006年に開業して以来、周辺住民の方や観光客など、幅広い層に利用いただいている。箱形の施設や地下街がメーンの横浜駅周辺の商業施設においては珍しいオープンモール型であり、水辺に面しているという環境からも、ちょっとしたリゾート感が味わえる。開業当初は、横浜駅東口から地下街の「ポルタ」や百貨店の「そごう」を経由して徒歩7分程度というアクセスだったが、09年に完成した横浜駅きた東口から直通の歩道橋「ベイクォーターウォーク」を利用すると、徒歩約3分でお越しいただけるようになった。

―― 足元の状況は。
 田中 21年度は、夏場が一番大変な時期となった。横浜ベイクォーターは飲食テナントも多い施設のため、緊急事態宣言下では酒類の提供ができなかったり、予約数が減った結果、全体の売上高も減少した。飲食カテゴリー単体で見ると、20年比で6割程度にまで落ち込んだ時期もあった。
 9月末に緊急事態宣言が解除されると、お客様もだんだんと戻ってきていただいて、売り上げ・客数ともに全館で20年を大きく超える月も出てきた。回復基調が続くと思いきや、22年2月からはオミクロン株の流行により、また厳しい状況に差し掛かってきた。

―― コロナ禍では大変なことが多いです。
 田中 コロナ前は、ワークショップや集客イベントを定期的に実施していたが、コロナ禍では人を集めることができなくなった。そこで我々は、一時一カ所に集客するのではなく、「分散型ダラダラ集客」に切り替えた。これは施設内に環境装飾を設置し、そこに自由に来ていただくというもの。もともとクリスマスツリーを設置したりしていたが、そういった取り組みをより強化した。
 21年の夏には「PINK SAND BEACH」として、海外リゾート気分を楽しめる装飾を施した。秋には、テナントとして出店しているドライフラワーと素材の店「noni」に協力いただき、本物のドライフラワーを詰め込んだボックスを敷いた「枯花テラス」を展開した。いずれもここでしか見ることができない写真映えする装飾のため、朝や夜など時間を変えて複数回訪れてくれる人もいた。天気や時間帯により見え方が変わるというところから、オープンモールである横浜ベイクォーターならではの企画だったと思う。

―― テナントへのサポートなどは。
 田中 オープンモールという特性上、それぞれの店舗ごとに鍵付きのドアがあるため、店舗の状況に合わせて営業時間の変更や休業にも柔軟に対応してきた。さらに地道ではあるが、マスクやコロナ対策方法を書いたカードを配布したりもした。また、店舗同士のコラボ支援というのも行った。普段は施設全体の販促に参加していただいているが、例えばターゲットの近いテナント同士でコラボ企画を立ててもらい、それにかかる費用を施設で負担するなどして支援した。相互送客にもなるし、店長同士の交流にもつながると考えた。

―― 20周年に向けて、何か取り組みなどは。
 田中 今後は“ものづくりに対するこだわり”のある店や、実店舗でお客様とコミュニケーションを図ろうとしている店を誘致したい。そのスタートとして、今春「マザーハウス」に増床していただいたほか、インテリアを販売する「BoConcept」に出店いただいく。また、テナント企業のサステナブルな取り組みを紹介する特設ページを公式HPに開設する予定だ。特設ページの第1弾として開業以来出店し続けていただいている「アクタス」、第2弾として増床した「マザーハウス」を取材し、その考えやエピソードなどを紹介する予定だ。

―― 今後の抱負は。
 田中 横浜ベイクォーターの周りのみなとみらい地区では、大規模再開事業が進行し、今後さらに街の様相は変わってくるだろう。我々も、周辺の施設やエリアと連携し、賑わいを創出することに取り組んでいきたい。
 我々は単館であり、その分スケールメリットが出しにくいなどの弱点はあるが、一方で現場に起きていることを即座に運営に反映できるなどの強みもある。立地も改札を出てすぐの施設というわけではないが、横浜駅には珍しい開放感ある施設であったりする。コロナ禍は改めて施設の存在意義や強みを考える良いきっかけになった。今後も横浜ベイクォーターでしか体験できないことを提供していきたい。


(聞き手・特別編集委員 松本顕介/新井谷千恵子記者)
商業施設新聞2439号(2022年3月29日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.372

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