電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第469回

FICT(株) 代表取締役社長 三好清司氏


中長期で売上高1.5倍増へ
大型PKG基板投資を拡大

2022/4/1

FICT(株) 代表取締役社長 三好清司氏
 FICT(株)の高精度・高密度な多層プリント配線板事業が好調だ。半導体プローブカード向けなどの超高多層/高アスペクト比の基板受注が増加しているほか、大型パッケージ(PKG)基板向けの事業拡大に向けて設備投資も積極的に行う。2022年1月には旧・富士通インターコネクトテクノロジーズから現在の新社名に改めた。心機一転、再スタートした同社の三好清司社長に足元の市況ならびに22年以降の事業戦略を聞いた。

―― 現在の事業環境を教えて下さい。
 三好 当社は主に4つの事業領域で活動中だ。①高多層板事業、②半導体関連(プローブカード、テスター、半導体パッケージ基板など)事業、③微細加工(穴あけ・ルーター加工)事業、④ベトナムのFCV社事業で構成している。
 足元ではすべての分野で好調な受注が継続している。特に半導体テスター関連のプローブカード向けの高密度多層板が忙しい。また、大型のパッケージ基板向けも旺盛な受注が継続している。海外子会社のFCV社では車載基板・実装などを主に手がけているが、21年夏場に2カ月のロックダウンの影響があったにもかかわらず、秋口から車載向けが一気に回復、現在も好調な売り上げが継続する。
 22年3月期の全社売上高は過去最高の320億~330億円(前年度売上高は264億円)と大幅な成長を見込んでいる。

―― 難易度の高い基板製造が得意です。
 三好 特にプローブカードなどに搭載される高多層基板で、一般的にMLO(マルチ・レイヤー・オーガニック)と呼ばれている基板だが、当社は世界でもトップグループのシェアを確保している。同基板は当社の先端技術であるF-ALCS(エフ・アルシス)と呼ばれる技術をベースにしたもので、配線密度を大幅に向上できるとともに高速信号伝送にも対応可能な先端技術である。めっきを使わないビア接続を行っており、ペースト充填と金属間接合でビアを任意に形成できる。全層IVH構造が可能で、製造工程も従来比で半減でき、環境負荷の非常に小さい製品である。ルーターや高性能サーバー向けなどの次世代基板としても売り込む。

―― ―大型PKG基板にも注力しています。
 三好 サイズ60~70mm角以上の大型PKG基板事業を本格的に拡大させる。従来からこのサブストレート事業を手がけてきているが、今後は100mm角を超える超大型PKG基板の需要も出てくるといわれている。大規模ロジックICが低電圧化するなかで、大電流対応の設計・製造ノウハウを持っており、当社もこうした領域で大いに存在感を発揮できるとみている。
 ビルドアップ(BU)層も14~16層までの多段化が進んでいる。配線形成はSAPで行っている。ライン/スペースは14μm/14μmを量産できるが、さらなる細線化にも対応する。コア層ではビア径が150μmだが、100μmの試作開発も行っている。
 主にはサーバーやHPC用のCPUをはじめ、ASICなどのロジックIC、GPU、FPGA向けなどを狙う。

―― 同業他社も投資を拡大しています。
 三好 現在、大型PKG基板の穴あけやルーター加工などの生産能力を強化している。拠点の黒姫事業所(長野県信濃町)で新棟を建設中だ。5月には完成する。メカニカルドリル装置やルーター加工機などを順次増強する。新棟が稼働すれば従来比で1.5倍ほどの能力増強となる。また、中長期的な視点からさらなる新棟の建設も視野に入れている。長野本社工場でもSAP対応ラインの強化も行っていく。

―― 22年度の事業展望を教えて下さい。
 三好 22年度も足元の好調な受注が継続するとみている。特にPKG基板などの増収が寄与する。車載も伸長する。全社で10~20%増収を見込む。本格的なミリ波対応の5G向け基板の受注も増えるだろう。半導体テスター向けなど、下期の受注がどうなるか常に精査する必要はあるが、FCVの業績拡大も期待できる。ミリ波レーダーなどの基板受注も好調で、さらなる成長に期待している。
 FCVでは車載用途を含めてHDI基板などの製造から部品実装、樹脂成型までを一貫して手がける。

―― 中長期的な事業戦略について。
 三好 まずは大型PKG基板向けの投資を拡充する。黒姫でのドリル加工事業の拡大に加え、長野本社工場でSAPの新ライン導入などを中心に実施する。BU工程などを拡充、クリーンルームなどの新増設も計画する。一方、プローブカード向けなどの高多層基板事業も強化する。これら一連の投資として、24年度までの3年間で総額300億円の投資を計画している。
 これらの投資を積極的に行い、中長期的には今期見込みの1.5倍に売上高を拡大させたい。
 また4~5年先の技術・市場動向を視野に入れて、潜在顧客らと必要な技術開発を先行させておく必要がある。こうした開発投資型の側面も強化する。特に光と電気の融合技術を見据えて、次世代高速伝送対応基板の試作開発も加速させる。

―― 新社名に改めました。今後の意気込みを。
 三好 どの業種でもそうかも知れないがエレクトロニクス産業は特にスピードが命だ。経営判断を早めて、すぐ結果につなげることが大事になる。当社は20年1月には現在のファンドが資本構成の大半を握る大株主となり、経営体制も刷新している。需要動向を正確に把握しながら、機敏な投資戦略を推進していく。


(聞き手・特別編集委員 野村和広)
本紙2022年3月31日号5面 掲載

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