商業施設新聞
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第316回

金沢ターミナル開発(株) 代表取締役社長 山越健司氏


地元客強化へ、食など拡充
金沢駅西口で街づくり加速

2022/2/1

金沢ターミナル開発(株) 代表取締役社長 山越健司氏
 JR西日本グループの金沢ターミナル開発(株)(石川県金沢市木ノ新保町1-1)は、金沢駅で「金沢百番街」、福井駅で「PRISM(プリズム)福井」を展開している。両施設の運営状況や今後の商業開発について、同社代表取締役社長の山越健司氏に聞いた。

―― 金沢百番街の運営状況から。
 山越 全館での売り上げは、2021年12月時点でコロナ前の9割水準に戻ってきている。今後も感染再拡大がなければ基本的にはさらに回復傾向が続くとみている。金沢百番街は、2015年3月の北陸新幹線金沢駅開業以来、想定を大幅に上回るレベルでビジネス客やインバウンドを含めた観光客が増えたため、特に地元の銘品・特産品を販売するテナントでは商品をお渡しして代金をいただくだけで手一杯という状態が続いていた。おもてなしのサービスを提供するというよりも、早くたくさん捌くことが優先されていたところへ新型コロナによって遠来のお客様が途絶えてしまい、結果として地元のお客様がいかに大切であるかを再認識した。そのため、今は売り場を従来の観光客に加えて、地元のお客様にも親しまれるように変更している。地域のお客様にちゃんと向き合うことに原点回帰する良い機会を与えられたと捉えている。

―― 金沢百番街について詳しく。
 山越 地元を代表する銘品・特産品や飲食店が主体の「あんと」、ファッション・ライフスタイルが主体の「Rinto(リント)」、デイリーサービスにお応えする「あんと西」で構成されている。あんとではこれまで修学旅行やツアー客をターゲットにしていた区画を21年3月に改装して、地元で人気のあるスイーツや洋菓子店などのゾーンを誕生させた。
 リントでも全国で話題の食物販の短期催事を連発することで、地元のお客様が毎日でも立ち寄りたくなるよう取り組んでいる。またEコマース、リサイクル、個人間取引、サブスクリプションなどファッション産業界を取り巻く環境が激変していることから、テナント様がどうやったら売りやすいか、どんな商品が購入につながるかなど、当社の担当者にはマーケティングについて常に考えるように促している。

―― 西口(港側)のまちづくりが活発だ。
 山越 狭域では、20年夏にホテルと食関連ショップの複合施設であるクロスゲート金沢が当館の西隣接地に開業し、また同時に金沢駅西口遊歩道が金沢市によって整備された。これらに合わせて当社のリントでも従来は窓のない重厚な壁だった西側の壁面を撤去し、新しい遊歩道に面して開放的なショーウィンドウとした。これら3つのプロジェクトは駅西地区の活性化を目指してお互いに連携を取りながら進めたもので、従来は何もなかった場所を市民が気持ちよく過ごせるエリアに一気に変身させることができた。
ショーウィンドウに作り変えたリント西側
ショーウィンドウに作り変えたリント西側
 また、駅西口の広域も、新幹線開業に合わせて地元地銀の本店や、NHK金沢放送局などの移転が進むなど、急速に開発が進むエリアとなっている。この広岡地区では、これまでにJR西日本グループによるオフィスやクリニックの開発が進み、さらに23年には日本銀行金沢支店が移転してくるなど、今後の西口のまちづくりの目玉エリアになると考える。リントから徒歩4分の場所では、600台分の立体駐車場を9月に開業させる。この立体駐車場は金沢百番街のお客様だけでなく、広岡地区の他施設と連携してまちづくりに寄与するものにしたい。

―― 隣県の福井駅でも商業施設「PRISM(プリズム)福井」を運営している。
 山越 現在、在来線駅高架下5000m²でおみやげ、飲食、スーパーなど日用品の店舗構成で展開している。24年春の新幹線敦賀延伸に向けて、新幹線福井駅が設置されるため、高架下床面積は今後50%増える予定だ。このタイミングに合わせ、在来線と新幹線の高架下を一体的に開発し、新しい商業空間を生み出したい。その際のキーワードは、「福井らしさ」「地元客」「駅周辺のまちづくりとの連動」だ。

―― 今後の事業拡大に向けた戦略について。
 山越 事業拡大には顧客の拡大を狙うマーケティング戦略と既存の顧客に提供する価値の拡大を狙うプロダクト戦略の2つのアプローチがあると考える。マーケティング戦略では、今取り組んでいる地元客の拡大に引き続き取り組みたい。これは観光客を排除することでは全くなく、目の肥えた地元客に愛されるくらいの施設になれば、結果としてさらに一見のお客様のご利用も増えるという、着眼点の話だ。プロダクト戦略では、当社の強みをブラッシュアップした上で、SC以外の領域に拡大できないか考えたい。例えば、施設管理力、イベント企画力を磨き上げることによって、他社施設のマネジメント業務受託などは検討する価値はあると考えている。


(聞き手・笹倉聖一記者)
商業施設新聞2429号(2021年1月18日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.366

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