商業施設新聞
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第314回

東神開発(株) 代表取締役社長 倉本真祐氏


流山での開発 9つ目の施設開業へ
既存SCは次世代型に深化

2022/1/18

東神開発(株) 代表取締役社長 倉本真祐氏
 (株)高島屋グループの東神開発(株)は、1969年に日本の郊外型ショッピングセンター(SC)第1号となる玉川高島屋S・Cを開業した。そのノウハウを、流山おおたかの森駅周辺の開発に応用し、SCを中心とした街づくりを展開している。一方で、商業以外のアセットの多様化や、SDGsの視点を取り入れるとともに、国内既存施設の次世代型SCへの転換を進める。代表取締役社長の倉本真祐氏に聞いた。(取材は2021年に行いました)

―― 流山おおたかの森の開発に注力されています。
 倉本 流山おおたかの森駅周辺エリアを成長拠点と位置づける。SCを中心とした面開発に加え、地元行政や鉄道事業者と連携し、タウンマネジメントによる街のブランディングを行っている。今年3月には当社が開発した7つ目の「FLAPS」を開業、11月には商業とオフィスの複合施設「アゼリアテラス」が竣工し、来年夏には「アネックス2」の開業が控える。一連の面開発は一段落するが、開発の手を緩める考えはない。駅周辺は開発余地が限られるため、今後は外周へもエリアを拡大し、非商業の業態も強化していく。

―― 具体的には。
 倉本 オフィス、住宅、ホテル、教育施設などを含め、街に何が必要かを幅広く考えることで街の利便性が高まり、ブランディングにもつながる。商業を中心にコーディネートすることで、シナジーを高めていく。現在の当社の収益は大半が商業施設によるものだが、景気変動への耐性を高めるため、将来的には非商業アセット比率を4分の1程度まで引き上げたい。

―― その取り組みは。
 倉本 流山おおたかの森アゼリアテラスに加えて、日本橋三丁目スクエアが12月に竣工した。また、経験やノウハウを持つパートナーとの協業により、住宅系アセットにも注力する。SC送迎など入居者へのサービスを充実させたサービス付き高齢者住宅など、特徴のあるものを開発したい。

―― SCは厳しい環境に置かれています。
 倉本 これからのSCはモノを売るだけでは立ちゆかない。買い物+αの来店動機をいかに多面的に創出するかがカギ。我々が次世代型SCのキーワードに挙げているのが、「コミュニティ」「サステナビリティ」だ。特にコミュニティは最も重要だ。そこにいけば何かに出会える、体験できる、そういった動機で来店されるSCのファンを増やすべく、コミュニティの場を数多く生み出す。玉川では「たまがわLOOP」と銘打ち、コミュニティを生み出す活動を開始した。

―― コミュニティの取り組みにおける具体策は。
 倉本 3つある。1つ目がソーシャルウェルネスで、SDGsなどをテーマにエシカルな視点でコミュニティを創る。2つ目はウェルビーイングで、“大人の部活”。同好会や同じ趣味・興味など、同じものにはまっている人たちの交流の場を創るもの。3つ目がショップアクティビティ。テナントの商品やサービスの紹介を通じてブランドの世界観を体感していただく。老舗の料理長が教えるお料理教室など、テナント参加型でSCならではのメニューを提供していく。また、リアルな場での体験をオンラインで共有する。

―― サステナビリティは。
 倉本 消費者にエシカルな視点が広がっている。サステナビリティに向き合う姿勢を明確にすることが選ばれるSCの必要条件になる。当社の施設では、地球環境保全や地域の安心安全への積極的な取り組みを見える化し、お客様がSC内でそれを体感できるようにする。玉川や流山を先導的導入施設と位置づけ、地域のお客様の共感を獲得していきたい。また、単なる社会貢献ではなく、事業戦略としてSDGsに取り組む。SCデベロッパーとしての最大の資産とも言えるリアルな場を活かす。

―― SDGsの取り組みを詳しく。
 倉本 3つの「場」を創る。1つ目は「クリーン&グリーンな人間活動拠点」で、SCで使用する電力を再生可能エネルギーとするほか、施設内で創エネしたものをEV充電器に供給していく。また、従前より注力してきた都市緑化を圧倒的なスケールに拡大することでCO2削減に取り組む。
 2つ目は「有事の際の拠り所としての安心・安全拠点」である。気候変動で災害が頻発する中、SCは広い駐車場と大きな施設を持ち、非常時の電源や水も供給できる。避難所として帰宅困難者を受け入れられる。有事の際、地域にSCを開放するなど社会インフラ化する取り組みを進めており、今年7月には流山市と防災協定を締結した。
 3つ目が「循環型社会のターミナル」である。食品ロスや廃プラなどの社会問題に対し、お客様、テナント、デベロッパー、場合によっては行政も巻き込んで協働した取り組みを進めていく。3つの「場」を創造することでSCでしか体現できないSDGsへの取り組みにできればと考える。

―― 環境への取り組みが加速しますね。
 倉本 持続的な社会の実現に向き合わない企業やブランドは、消費者から見放され、市場から淘汰される時代。コスト増加要因もあるが、前向きに取り組むことで、社会、地域の皆様、テナント、従業員などすべてのステークホルダーから共感を得られる施設になる。今後は、SCからCC(コミュニティセンター)になるイメージ。お客様にSCのファンになってもらい末永く支持していただく。それこそが当社が目指す次世代型SCの姿である。


(聞き手・特別編集委員 松本顕介)
商業施設新聞2427号(2021年12月28日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.364

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