「二子玉川ライズ・ショッピングセンター」(東京都世田谷区)が開業から10年を迎えた。開業以降、二子玉川駅の乗降客数は大きく伸び、街の賑わいは増した。10月からタウンマネジメントの一部業務を受託し、来館した人同士をつなげる施設を目指すなど、次の10年に向けて動き出している。(株)東急モールズデベロップメント二子玉川ライズ・ショッピングセンター総支配人の田中利行氏に話を聞いた。
―― 改めてコンセプトや事業の成り立ちを。
田中 もともと同施設は二子玉川東地区の再開発として計画されたが、二子玉川には長年多くの人に愛されている「玉川高島屋S・C」があった。そこで同じコンセプトの施設を作るのでなく、よりトレンドをとらえ、かつカジュアルな店舗などを揃えることで新しいマーケットを創出することとし、2011年3月に開業した。買い物をする場所というより、過ごす場所として使っていただきたいと思っており、15年には2期施設が開業し、「二子玉川 蔦屋家電」「109シネマズ 二子玉川」などがオープンした。これにより、時間を過ごすという当施設の特徴がより強まった。
―― 駅乗降客数がずいぶん増えたと聞いています。
田中 開業する前、二子玉川駅の乗降客数は1日平均10万人程度だったが、コロナ前は1日平均16万人程度まで伸びた年もある。玉川高島屋S・Cと競合するのでなく、新しいマーケットを創出できたということだと思う。
―― 年齢層ではどういう方が多いのでしょうか。
田中 ニューファミリーが比較的多い。開業から10年が経過したが、沿線の人口などを調べてみるとあまり高齢化が進んでいないようで、入れ替わりが進んでいるようだ。なので10年経ったからターゲットを10歳上げる、というわけではない。
―― 足元の状況は。
田中 20年度のレジ客数は約1665万人。売上高は325億円で、前年度比81%ほどだったが、休業期間を含まない20年6月~21年3月の対前年売上高は約91%とコロナ禍ながら健闘した。21年度も堅調で、21年6~9月の対19年度比は92%となっている。
総じて郊外に位置することから、都心の施設と比べると落ち込みは少ない。東急フードショーや東急ストアをはじめ、食物販系が豊富に揃っており、コロナ禍において非常に伸びている。コロナで不調な業態を取り返してくれるほどの勢いがある。
―― 今年は改装も実施しています。
田中 10周年を迎え、春にはファッション、化粧品関連、食物販などの店舗がオープンした。その後も継続的に改装しており、最近ではブランドファッションのリユースショップ「RAGTAG」がオープンした。当施設としてリユースを扱うのは初めて。二子玉川という場所でリユース業態がどういう反応を示すか、トライアルを含めて出店していただいた。非常に良い商品を揃えていただいていることもあり、堅調だ。
また、コロナ禍ということもあって、これまでは都心を中心に展開していたブランドも出店していただいた。
―― 秋には改装の目玉がオープンします。
田中 11月、タウンフロント8階にインドアプレイグラウンド施設「PLAY!PARK ERIC CARLE」をオープンする。『はらぺこあおむし』の作者であるエリック・カールが描く絵本の世界観に基づいてデザインされている。ファミリー層などで賑わうことを期待している。こうしたプレイグラウンドにより、さらなる賑わいを創出できる。
―― 次の10年に向けての取り組みは。
田中 「モノ」「コト」に加え、「ココ」、つまりココに来ないと得られない価値を提供していきたい。その一つが「PLAY!PARK ERIC CARLE」だ。
また、タウンマネジメント事業にも取り組んでいく。これまではタウンマネジメントは東急(株)が行っていたが、よりお客様に近い東急モールズデベロップメントが進めていくことになった。10月1日付で、イベントなどの企画・運営と、放送スタジオ・多目的ホール「iTSCOM STUDIO&HALL 二子玉川ライズ」の運営に関わる業務を受託した。
―― タウンマネジメントによりどのようなことを目指しますか。
田中 これまでは人が集まって過ごしてもらう場を作ってきたが、次の段階として、ショッピングセンターという枠を超えて集まった人同士をつなげる「コミュニティプラットフォーム」としての場になりたい。そのためにもタウンマネジメントによって街の賑わいを創出したい。
また、コミュニティプラットフォームとしての場を実現するためにも、今まで以上に多くの人に来館していただきたい。そのために、今後は売り上げでなく来館者数を最大の指標にする。
コロナによって急速にSCを取り巻く環境が変わった。集まった人同士をつなげることも含めて、次世代型SCを具現化していきたいと思う。
(聞き手・編集長 高橋直也)
※商業施設新聞2417号(2021年10月19日)(2面)