商業施設新聞
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No.828

異例の札幌大開発


高橋直也

2021/10/19

 先日、札幌市の再開発まとめを紙面に掲載した。執筆したのは筆者ではないのだが、札幌出身として追記させてもらった。紙面でも触れたが、地方都市としては異例の規模で、案件数が多いだけでなく、「札幌駅交流拠点北5西1・西2地区市街地再開発」(以下、北5西1・西2地区)は延べ39万m²超におよぶなど、超大型案件も控える。商業記者としては、開発が大いに盛り上がる期待感がある一方、札幌出身としてはそんなに作ってリーシングは大丈夫……?と、思うところは多い。今回、『独り言』として、個人的な見解を踏まえて、札幌市の開発、将来を考える。

 個人的に、一連の開発で特に期待にしているのが外資系ホテルの出店である。現時点で札幌にはいわゆる国際級ホテルはない。2023年にヒルトンが開業する予定だが、コロナが落ち着いた後、観光客をいっそう呼び寄せるには、さらなる外資系ホテルの出店が求められる。現時点で、ハイクラスホテルのニーズは「JRタワーホテル日航札幌」や「札幌グランドホテル」が取り込んでいる。両方ともスパやレストランを利用したことがあり、大好きなホテルだ。ただ、国際的な知名度は外資系高級ブランドの方が高いだろう。出店の可能性が高いのは北5西1・西2地区か。もともと高層階に宿泊施設を導入する方針であり、隣接する「JRタワー」は日系のハイクラスとして「JRタワーホテル日航札幌」がある。そうなると北5西1・西2地区には外資系を導入してもいいと思うのだが……。

札幌駅前の風景(18年撮影)
札幌駅前の風景(18年撮影)
 導入するとしたらどのようなブランドか。現時点ではそもそも外資系ホテルの計画が少ないので、「W」のような尖ったホテルではなく、王道の外資系高級ホテルだろう。地方の大都市の中では、札幌市は何かと福岡市と比べられるが、福岡市にはザ・リッツ・カールトンが出店するので、ぜひ札幌にもと思っている。さてどうなるか。

 もう一つ、札幌について思うのが、この大規模開発を機会に大通公園地区をそぞろ歩きできる環境にしてはどうかということ。大通公園地区の札幌駅前通は様々なファッション店などが並ぶが、あくまで道。歩道はそれなりに広いが、特別歩くことが楽しい空間ではない。こうした道に、例えばオープンカフェが並ぶ、木々があふれて歩くこと自体が楽しめるような環境があれば、より多くの人が訪れる。大阪・御堂筋では、人中心のストリートとしてフルモール化する案を打ち出して話題となった。将来イメージではあるが、地上から車道は撤去され、全面が歩道となっている。街が持続的に賑わうようにするにはこれくらい大胆なことが必要なのかもしれない。

 というのも、大通公園地区はかつて、札幌一の商業施設を擁する商業地区だった。ところが、札幌駅直結の商業施設「札幌ステラプレイス」「大丸札幌店」などが完成してからは、札幌駅周辺が札幌一の商業地区となった。店舗数などは大通公園周辺の方が多いと思われるが、駅はなんといっても便利。こうした「便利」に勝つには、わざわざ訪れる目的が必要になる。近々、大通公園地区でも様々な開発が進むため、タイミングとしては悪くない。ただフルモール化するには相当な時間と労力、資金が必要になる。現実的かどうかはわからない。その意味でも御堂筋には「やればできる」ことを示してもらい、札幌に限らず、各地方都市のお手本となってほしいのだ。

 もはや東京で生活している期間の方が長くなってしまったが、いまだに札幌の話題は気になる。そういえば最近、商業施設のMDで「シビックプライド」(簡単にいうと地元愛)をテーマにする事例が少しずつ増えてきた。観光地に住む人の「あるある」かもしれないが、その土地を離れて初めて価値に気付くことがある。札幌に住んでいるときは雪まつりにまったく興味はなかったが、今になって行ってみたい。食べ物に関しても、東京に来てからいかに北海道は美味しいものが多いか分かった。札幌にも、もう少しシビックプライドをくすぐる取り組みがあってもいいのかもしれない。
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