商業施設新聞
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No.1011

万博で思うSCの暑さ対策


高橋直也

2025/6/24

万博は天候にも恵まれ、楽しく過ごせた
万博は天候にも恵まれ、楽しく過ごせた
 大阪・関西万博に行ってきた。仕事として訪れたためじっくり回ることはできなかったが、大屋根リングは想像以上に大きく驚いた。リングの屋根に上ると緑があり、会場内を見渡せ、気持ちの良い風にも当たれた。パビリオンは一つしか訪れることはできなかったが、他の国の文化に触れるのは面白い。万博にはネガティブなニュースも多いが、筆者はかなり楽しく過ごす事ができた。とはいえ、気になったこともある。再来訪したいかと聞かれたとき、どんなパビリオンがあるか少し分かりにくかったので、二の足を踏んでしまうこと。もう一つある。複数人で訪れたのだが、方々から聞こえてきたのは「今日はいいけど真夏は大丈夫か」ということだった。大屋根リングの下は陽を遮ることはできるが、そのほかは陽を遮る場所が少なかった。東京では気温が30度を超えるようになってきたが、夏に訪れる人には少々過酷かもしれない。

 こうした暑さ対策は、商業施設や集客施設でも求められるようになってきた。筆者は学生のころ、何度も甲子園に高校野球を見に行ったが、今は果たして1試合すべて見ることができるだろうか。若いころは「かちわり氷」と帽子でしのいでいたが、今は自信がない。また、テーマパークでは並ぶ間の対策が求められるだろう。とはいえ、実際は水分補給を促すなど、やれることは限られており、難しいところだ。商業施設も酷暑といかに向き合うかが求められている。商業施設は昨今、屋外の遊び場が整備されることが増えているが、真夏に子どもを屋外で遊ばせることは危険につながる。こうした屋外の遊び場はファミリー層の集客につながるため、デベロッパーとしては対応に苦慮するところだろう。

 そうした中、新しい取り組みも出てきている。4月18日、愛知県安城市に「三井ショッピングパーク ららぽーと安城」がグランドオープンした。同施設には約3800m²におよぶルーフトップパークを設けたが、ポイントの一つが約2100m²は大屋根に覆われていること。雨もしのげるが、暑さの緩和にもつながる。このほか、様々なデベロッパーを取材する中で、2024年の夏は外で水遊びできるような空間が人気だったという声も聞こえてくる。

 商業施設を取り巻く環境は大きく変わっている。エリアによってはオーバーストアと言われ、モノ消費からコト消費へと需要が変化してきた。そして酷暑が当たり前になってきた近年、暑さ対策が求められるようになってきた。コンセプト作りやテナント構成などと比べると重要度は低いようにも感じるが、暑さは命に関わる話になる。今後の施設開発・運営において優先順位が上がっていくことは十分に考えられる。
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