現在SCのフードコートでは様々な業態がしのぎを削っているが、その中でも近年存在感を増しているのが「ペッパーランチ」業態だ。同業態はフードコートへの進出を加速し、そのペースはコロナ禍でも衰えることがない。現在、事業を展開する(株)ホットパレットの代表取締役社長である松本純男氏に、事業の現在やコロナ後の外食産業の見通しなどについて話を聞いた。
―― ペッパーランチ事業の現状から。
松本 2020年6月に、従来ペッパーランチを展開していたペッパーフードサービスが事業を分割、新会社を設立し、その後売却された。2020年に社名をホットパレットとし、新たなスタートを切った。現在全国39都道府県で約180店出店しており、4割が直営、6割がFCだ。海外も含めれば500店程度に達している。
独立に当たっては基本的に多くは変えてはいないが、メニューの簡略化、提供時間の短縮化などに努め、回転率を上げている。
―― 業態の強みは。
松本 ペッパーランチというブランドの強さ、そして加熱した鉄皿に肉を盛り付けるというオペレーションのシンプルさだ。熱効率が非常に優れた特殊鉄皿と、電磁調理器は特許を取得しておりスピード提供を可能にしている。通常のレストランなどと比べて、オペレーションを半分程度に省力化できる。極端に言えばアルバイトのスタッフが1日で覚えられるくらいにシンプルで、少人数の店舗運営も可能なので、人件費や採用コストも抑制できている。
―― 出店予定は。
松本 21年は18店の新規出店予定で、ほぼ計画どおりに立地などが決定している。出店エリアにこだわりはないが、フードコート、沿線駅前を重視している。毎年の出店は、既存店の10~20%で計画しているが、数字を優先するのではなく、良い立地であることが前提である。また3~5年後には郊外ロードサイドでの展開も考えている。
―― フードコートへの出店が増加しています。
松本 21年に出店する多くがフードコート内の店舗である。フードコートへの出店はコスト効率面で優れている。フードコートへの出店はオペレーションや投資面で効率性が高く、現在は優先して出店をしている。
また鉄板で肉をジュージューと加熱し、音と香ばしい香りでアピールするというスタイルは、フードコートでの集客としてもインパクトが強い。施設側からオファーをいただいて出店が決まった店舗も多い。
―― 新型コロナの影響は。
松本 最初の緊急事態宣言の際には、施設の休業に伴いフードコートの店舗も休業を余儀なくされたりと大きな影響があった。20年の売り上げは、19年と比べると80%程度になっている。
―― コロナ後の外食産業について。
松本 テイクアウトやデリバリー需要が増えていくのは確実だ。現在全体では約15%がデリバリー・テイクアウトで、3~4割を占めている店舗もある。そしてこうした需要の変化は、コロナ後も完全に元には戻らず、外食需要の2~3割程度はテイクアウト・中食需要に流れていくのではないか。こうした需要を取りこぼさず捉えていくには、業態のブランド力の強化、DX化といった施策が必要だ。我々もDX化については、店舗アプリによるアピールやQRコード決済への対応など、様々な施策を講じている。
また人材の採用についても厳しさが増すと考えている。コロナの影響で一時的に人材不足感は緩和されたが、コロナ以後は以前外食産業にいた人材が戻ってこない状況が生まれ、より厳しくなる可能性が高い。こうした中では、我々の店舗オペレーションのシンプルさは大きな利点となるだろう。
出店についても、コロナの影響で出店判断基準が厳しくなっている。今後コロナの影響が緩和されていけば、そうした面でも影響が出てくると思う。
―― 中長期的なビジョン、海外への展開などは。
松本 25年までの中期経営計画にて、国内400店、海外600店の合計1000店程度にしたいと考えている。海外はサントリーグループのSFBI社と協力し、現在主にシンガポールやインドネシアなど東南アジアでFC出店している。コロナが落ち着いた後は、東南アジアの店舗は現在の300店から500店への増加が目標だ。
また中国本土への出店も課題だ。今は20店程度だが、出店形態も合わせて検討していきたい。さらなるステップとしてはオーストラリア、北米でも店舗を拡大したい。現在は主にアジア人街近くで展開しているが、肉の需要が大きいアメリカは大きなポテンシャルを秘めていると考えている。ただ、現地視察など本格的な検討はコロナ後になるだろう。
―― ペッパーランチ以外の業態は。
松本 現在4店を展開している「武蔵ハンバーグ」など、他ブランドも持っている。ハンバーグは大きなポテンシャルがある業態だと考えており、今後はペッパーランチにおける「ビーフペッパーライス」のような看板メニューを作りたい。
―― 抱負などを。
松本 まず食という点で多くの人に貢献したい。ご馳走である牛肉をリーズナブルに提供し、食の喜びを様々な人に感じてもらいたい。そして外食で働いている人たちに、外食で働くことの喜びや価値、社会的なステータスというものを高めていく、そういう事業を展開していきたい。
(聞き手・山田高裕記者)
※商業施設新聞2416号(2021年10月12日)(8面)
経営者の目線 外食インタビュー