（株）西鉄ストアは、福岡県内にバス・鉄道網を持つ西鉄グループの会社で、福岡県や佐賀県に60店のスーパーマーケット（SM）を展開している。ここ1年はコロナ禍の影響で、新規出店は抑制していたが、2022年度（23年3月期）からは出店を再開し、25年度までに営業収益1000億円を目指している。同社の代表取締役社長執行役員の秋澤壮一氏に話を聞いた。

―― 店舗数など現況を教えてください。
　秋澤　当社は、西日本鉄道（株）（以下、西鉄）のグループ会社で、福岡県や佐賀県でSMや酒屋など計93店を運営している。内訳としては60店がSMで、鉄道沿線であれば、高架下や駅前などに13店を立地している。加えて、西鉄グループは路線バスの運営も行っているので、公共交通機関の沿線も含めれば60店すべてが沿線にあるといえる。
　営業エリアは大きく3つに分かれており、1つ目は西鉄沿線のある福岡市内や福岡県南部のエリアで、「西鉄ストア」や「レガネット」というブランドで展開している。2つ目は北九州市エリアで、約12年前に合併した（株）スピナのSM事業の「スピナ」を承継して運営中だ。この店舗はもともと、新日鉄八幡製鉄所の福利厚生施設としてスタートしたものなので、立地としては新日鉄八幡製鉄所の社宅があったエリアに店舗が集中している。そして3つ目は佐賀県内で、4年前に合併した「あんくる夢市場」という屋号のSMを展開している。

―― 各ブランドの特徴は。
　秋澤　佐賀県で展開している「あんくる夢市場」は、市場から直送で鮮魚や野菜を仕入れ、鮮度を優先した売り場づくりを意識している。「西鉄ストア」や「レガネット」は、商材の安定供給に重点を置く。そして、「スピナ」は、「西鉄ストア」と同様に商材の安定供給に重点を置きつつも、北九州名物の「蒸しちゃんぽん麺」といった地元ならではの日配品や正月の商材などを取り揃え、地域に配慮した売り場づくりを行っている。

―― 店舗によっては通販サイトで購入した商品を受け取れるサービスも提供していますね。
　秋澤　鉄道などの公共交通機関の沿線に店舗が立地する利点を生かし、1～2年前から通販サイトの「Amazon」で購入した商品を預かる専用ロッカー「Amazon Hub」を20店に設置している。設置してみると、利用者も多く好調に稼働しているが、現時点では訴求不足なのか、SMで買い物するお客様の増加など相乗効果に十分つなげられていない。ただ、当社としては「Amazon Hub」や、購入から決済までネットで完結するネットスーパー事業なども含め、デジタル化への対応は急務だと考えているので、他社との提携も模索しながら、課題解決に取り組んでいきたい。

―― 今秋には西鉄グループの再編で外食企業も仲間入りします。
　秋澤　西鉄グループでは、コロナ禍により20年度に赤字になった事業も多いため、構造改革を行っている。その一環として10月1日付で、福岡県内でうどん屋など計27店を展開している（株）西鉄プラザを当社に合併し、外食事業も展開する。加えて、西鉄グループのホテルの元総料理長を4月に招聘した。外食とホテルのノウハウを生かし、新たな惣菜メニューの開発や既存の惣菜商品の強化を図っていく。

―― 出店計画は。
　秋澤　ここ1年はコロナ禍による西鉄グループの赤字の影響で、グループ全体で設備投資が制限されていたが、22年度から本格的に出店を再開する。出店場所としては、西鉄大牟田線の一部駅舎の高架化など、6駅で今後出店余地が生まれるので、新店オープンを目指したい。また、福岡市周辺の地域で進む再開発に伴い、出店準備を進めている案件もある。
　同時に、北九州市や佐賀県内にある中小のSMで事業承継が困難な企業があれば、M＆Aなどを通じて店舗数の拡大を図る方針で、準備を進めている。その結果、今後5年間で10店以上は新たにオープンできると考えている。

―― 今後の抱負をお聞かせください。
　秋澤　20年度の当社の営業収益は約700億円であるが、ローカルスーパーマーケットとして生き残っていくために、25年度までに営業収益1000億円へと拡大する必要があると考えている。そのために、新規出店や中小SMの取得の準備、不採算店舗の退店や、外食ブランドへのFC加盟で外食事業の強化を図る。そして営業収益1000億円を達成した暁には、以前計画して断念した物流施設の開発なども、他社との提携を模索しながら、検討を進めていきたい。