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日本循環器学会学術集会で日本発ホットバルーンアブレーションを公開


ジョリーグッド製VR臨床システム使い日米4拠点で手術を見学、360度撮影が可能

2021/4/13

 第85回日本循環器学会学術集会が、3月26~28日にパシフィコ横浜(横浜市)で開催された。3月27日には、学会長主催セミナー「VRによる最新医療体験~多拠点リモートVR国際医療セミナー」が開かれ、360度を見渡せるVR(仮想現実)技術を駆使した最新術式の臨床報告がなされた。

斎藤能彦 学会長
斎藤能彦 学会長
 学会長の奈良県立医科大学 循環器内科学教室教授の斎藤能彦氏は、学術集会全体について「医療や医学研究はもちろん社会全体が大きな転換期に差し掛かっている。2018年末に『脳卒中・循環器病対策基本法』が公布されたことを受け、学会のテーマを『NEXT STAGE-Future of Medicine and Community』としていたが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより世界が大きな変革を余儀なくされ、意に反して真の『NEXT STAGE』となった。本庶佑先生と山中伸弥先生の2人のノーベル医学・生理学賞受賞者からそれぞれ真下記念講演とWCC Special Lectureを、また現在循環器基礎研究の世界のトップリーダーであるEric Olson先生からMikamo Lectureを、さらに世界の著名な研究者から15の特別講演を賜ることは大変大きな喜びである」と語った。また「『医療と健康のMIRAI』を特別企画し、Big Data、AIを用いた未来の医療に関するシンポジウムや、健康寿命日本一を目指して奈良県医療行政をリードされている荒井正吾知事による特別講演も企画。21年3月発表の、脳卒中と循環器病克服第2次五カ年計画に焦点を当てたシンポジウム、日本循環器連合(循環器関連学会)による8つのシンポジウム、COVID-19に関連した2つのシンポジウム、若手医師によるU40心不全ネットワーク企画セッションや、ISHR U45企画セッション、初試みの完全ヴァーチャルの市民公開講座を開催するほか、2000題以上の一般演題を応募いただいた」と説明。

渡邉真言 医長
渡邉真言 医長
 学会長主催の「VRによる最新医療体験~多拠点リモートVR国際医療セミナー」(3月27日)では、リモートVR臨床システム(ジョリーグッド製)を使い、奈良県立医科大学附属病院 循環器内科 医長の渡邉真言氏がTAVI(経カテーテル的大動脈弁留置術)について、獨協医科大学 埼玉医療センター 循環器内科 准教授の中原志朗氏はホットバルーンアブレーションの臨床VR映像を用いた講演を行った。TAVIは、大動脈弁狭窄症の治療法で、通常手術が難しい高齢者や、重症疾患がある人、開胸手術や放射線照射の既往のある人向けに開発された術式。ホットバルーンアブレーションは、カテーテル先端に付けたバルーン(風船状の器具)内の液体を温め、その熱で心房細動の原因部位をアブレーション(焼灼)治療するという日本発の最新治療。会場のパシフィコ横浜と、獨協医科大学・埼玉医療センター、ラトガース・ニュージャージー州立医科大学、ハーバード大学ブリガムアンドウィメンズ病院研究室(ボストン)を結んでVR技術を使って手術を見学する体験セミナーが行われた。チーム医療を、医師や看護師、技師の視点から360度方向で臨床体験できるVR技術とシステムは絶賛され、米国の大学側からはホットバルーンアブレーションについて医師手元の術式作業をもっと詳細に見たかったなどの意見が出された。

中原志朗 准教授
中原志朗 准教授
 ジョリーグッドのVRは、技術や体験を本人視点で360度体験学習できる。多接続リモートVR臨床システムは、集まらない学会を実現し、また、離れていてもリアルな治療現場を共有できる。学会会場でタブレット端末を使ってVRゴーグルを遠隔操作、インターネットを介して各地の病院から、講師と会話をしながらVRでリアルな臨床体験(術者視点を360度体験)ができる。手術室に高精度360度カメラとサーバーを常設することで、医療スタッフが自ら360度撮影できる。クラウドにライブラリー化することで、医大・看護学校・診療所などで臨床実習できる。学術集会での「多拠点リモートVR国際医療セミナー」に参加した医師からは「コロナ禍で、臨床現場に入ることは難しい状況になっていることから、このオペクラウドVRシステムを使えば、遠隔地でもリアルな治療現場を体験・学習できる。研修医のほかに、現役医師にとっても有意義なVRシステムである」と称賛された。

 同社によると、21年3月期の省庁事業では、5事業で採択され、「外傷診療におけるVR遠隔臨床学習プラットフォームの構築」では、日本医療研究開発機構(AMED)が30施設以上へ導入、救急・外傷関連3学会とは共同開発に取り組んでいる。このほか、救急救命士、看護師、介護福祉士、調理師の教育にも用いられる。VR技術は、働き方改革(在院時間減)、コロナ禍(集まれない立ち入れない)、チーム医療(トレーニングの場がない)の医療課題解決で期待されている。同社は、制作、運用システム、AI行動解析を支援する。

(笹倉聖一記者)

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