東急不動産(株)は、物流施設ブランド「LOGI'Q(ロジック)」を展開している。埼玉県狭山市では延べ3万坪超の大型案件を建設しているなど、各地で開発を控える。圏央道周辺の大型案件だけでなく、東京都市部など幅広い立地で開発しているほか、(株)東急ハンズと空間づくりで協業するなど同社ならではの取り組みもある。ロジスティクス事業部統括部長の佐藤公俊氏に話を聞いた。
―― 貴社の中でも物流事業は新しい事業です。
佐藤 当社は2016年、埼玉県春日部市と三重県桑名市の案件に、まずは他社との共同事業という形で物流事業に参入した。17年からは単独で開発できるノウハウも蓄積できたので、このタイミングで「ロジック」というブランドを作った。
―― ロジックの発表の際は複数物件の開発が発表されていました。
佐藤 大阪府枚方市、埼玉県白岡市や千葉県松戸市に2件の事業用地を取得した。また、大手通販系企業から埼玉県入間郡三芳町と福岡市の物流施設を取得して、三芳の案件は建て替えを実施した。
稼働済みの主な案件として、「ロジック枚方」は延べ約3700坪で19年6月に竣工、「ロジック白岡」は延べ約1.4万坪で19年10月に竣工、「ロジック三芳」は延べ2.1万坪で20年1月に竣工した。このほか、千葉県習志野市ではセールス&リースバック方式の案件として「ロジック習志野」が延べ5000坪で19年10月に竣工した。
―― 昨年には埼玉県で大型案件にも着手しました。
佐藤 「ロジック狭山日高」を20年8月に着工した。圏央道狭山日高ICから0.3km、国道407号線から0.2kmと関東全域に配送可能な立地。大手物流会社向けのBTS型施設として延べ約3.4万坪の規模で建設している。竣工は22年2月を予定。20年8月には「ロジック京都久御山」も着工した。こちらは延べ約7900坪の規模で、21年6月に竣工する予定だ。
―― 開発、取得案件を見ると、場所や規模が幅広いですね。
佐藤 ロジックは規模に関しての目安はなく、取得した用地に応じて柔軟に対応している。事業地に関しては東名阪が中心となるが、他の地方の大都市は機会があれば参画したい。例えば札幌市には当社の支店があるし、仙台市は仙台空港にも参画しているので、事業を行う体制がある。
―― 完成した案件をみると、グループの力を活かしています。
佐藤 三芳の案件では東急ハンズがプロデュースした屋上テラスや、東急スポーツオアシスが監修した軽い運動ができる「ちょいトレパーク」などを設けている。やはり物流施設は人が主役。先般、テナント企業にヒアリングしたところ、やはりこうした共用部の取り組みは働きやすさや、採用などにも重要であることがわかった。ロジックのコンセプトである、「関わるすべての人に優しい施設」でありたい。
―― 5Gに関する実証実験を行うようです。
佐藤 当社と東日本電信電話(株)、(株)PALでローカル5Gを物流倉庫内に整備する実験をすでに始めている。こうしたインフラを整備して、倉庫の自動化、作業の見える化、ロボットの遠隔操作など、次世代物流センターの構築につなげたい。まずはラボで実験に取り組み、その後当社が保有する倉庫でも実証実験などを行う予定だ。
―― 用地取得の動向は。
佐藤 我々が参入した以降も、新規参入する企業が増えており、競争は激しい。ただ、圏央道沿いでもまだ取得できる土地はあると思う。我々が重視しているのは配送性。30分、1時間でどれくらいの人口をカバーできるか。こうしたマーケティングをしっかりやった上で、取得したい。場所は圏央道にこだわってはおらず、ラストワンマイルを考えると外環道や都心部などでも考えないといけない。例えば、東京都江東区の南砂町でもロジックを開発しており、こちらは約4000坪と大きな施設ではないが、都心の配送に力を発揮する。
また、大きな方向性でいうと、我々は街づくりで成長した総合デベロッパーであり、街づくりのノウハウを開発に活かしていきたい。例えば、商業施設やデータセンターと共同開発など違ったアセットと組み合わせるノウハウは持ち合わせていると思う。例えばだが、食品スーパーとのコラボレーションはあり得る。物流施設の1階にスーパーを誘致し、上層の物流施設が協業するイメージだ。
―― 中長期的な目標は。
佐藤 数量目標はないが、会社の中の基幹事業の一つに成長させたい。開発施設数は現在開発中を含めて11件、稼働ベースで5件まで拡大したが、今後も積極的に取り組んでいきたい。現時点で発表しているものでは、狭山日高の延べ約3.4万坪が最大の規模だが、これを上回る案件も控えている。東名阪、大都市、大規模案件、コンパクトな案件など幅広く事業を展開していきたい。
(聞き手・編集長 高橋直也)
※商業施設新聞2389号(2021年3月30日)(1面)
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