公益社団法人 日本看護協会(東京都渋谷区神宮前5-8-2日本看護協会ビル、Tel.03-5778-8831)は記者会見し、2013(平成25)年度の事業活動方針について説明した。13年度の重点政策・重点事業計画は、(1)健康で安全に働き続けられる職場づくり~ワーク・ライフ・バランスの推進~、(2)看護職の役割拡大の推進、(3)長期療養の生活者を支える訪問看護などの機能強化、(4)労働と看護の質向上のためのデータベース事業の構築、(5)保健師活動の体制確保と機能強化、(6)助産実践能力強化とその体制整備、(7)東日本大震災復興支援事業~ニーズに即した看護・助産・保健活動のさらなる展開へ~の7点。
会長の坂本すが氏は「高齢化社会を迎えて看護の仕事の現場は、これまでの病院中心から在宅へと移っている。治す医療(病院)から支える医療(在宅)へ社会環境は変化しており、これにより看護と介護の仕事の境がなくなってきている。このため介護と看護職が連携しなければならない状況になっており、このような変化に応じた基礎教育を看護にも取り入れなければならない。病院には、暮らしの中での医療が期待され、地域社会での看護という機能分化が求められ、病院と地域が車の両輪のような役割で高齢化社会を支えなければならなくなっている。今後も看護の観点から日本の社会問題を指摘し、政策提言していきたい。夜勤交代制勤務の過酷な勤労条件の改善は、看護士の健康のために不可欠で、能動的に活動する」と述べた。
同協会は、13年度の重点事業(1)の健康で安全に働き続けられる職場づくりとして、「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」の普及による勤務体制改善、ワーク・ライフ・バランス推進ワークショップ事業で現場を支援しながら、「医療分野の質の向上プロジェクトチーム報告書」の取り組みに連携協力し、さらにナースセンターの機能強化に向けて県協会と連携して活動を進める。ガイドラインの普及では、勤務体制改善好事例を情報収集して分析する。ワーク・ライフ・バランス推進ワークショップ事業は、43都道府県看護協会と協働し、看護職のワーク・ライフ・バランス指標調査の分析を継続検討する。ナースセンターの機能強化では、同センターを看護職定着・確保の総合拠点とするために取り組み、ナースセンター・コンピューター・システム機能を改善・新開発する。
(2)看護職の役割拡大の推進では、看護師の能力認証に関する制度の確立と普及促進、看護職(保健師、助産師含む)の役割拡大のあり方を検討する。能力認証に関する制度は、具体的内容に関する規定整備、法制化・制度化に向けて関係団体と連携強化する。これは、国民が求める安心・安全でより効果的な医療・看護を提供する制度の創設に取り組むもの。患者の病態を確認した上で、特定行為を実施する看護師の質と安全性を確保するために、制度が保健師助産師看護師法に位置づけられ、具体的内容に関する規定が整備されるように国へ要望する。
(3)長期療養の生活者を支える訪問看護などの機能強化では、訪問介護事業所の大規模化、訪問介護の機能強化、介護施設での看護機能強化、認痴症対策に取り組む。事業所の大規模化では、複合型サービスの普及促進、管理者の経営能力強化、訪問看護養成カリキュラム(案)の試行・検証を行う。経営管理能力の強化では、経営データなどの情報提供を前提にした委託事業の実施と、Webなどを活用した開設支援セミナーを開催する。規模拡大のためには、経営能力強化が重要であるため、管理者を対象にした経営拡大戦略を思考する会議を開催、経営の醍醐味を味わえる人材を育成する。
訪問看護の機能強化では、地域でのネットワーク強化、基幹型訪問看護ステーション構想、新サービスモデル検討、整備計画状況の調査に取り組む。介護施設での看護機能強化は、看護の管理強化、先駆的活動の広報活動、政策課題への対応検討、看護師職能委員会IIでの「自然な死」への対応能力向上を検討する。認痴症対策への参画は、初期集中支援チームのモデル提案、ケア研修を実施する。
(4)労働と看護の質向上のためのデータベース事業の構築は、試行事業の実施、システム基本開発、データベース事業の普及啓発を行う。試行事業では、50病院を募って事前の集合研修、データ活用の体験型講座、事後の集合/個別聴取、課題抽出と対応策検討、評価指標の妥当性検討と修正、システムの機能改善などを行う。14年に開始する予定で、これにより看護の可視化と、現場の質の向上を図る。
(5)保健師活動の体制確保と機能強化では、保健師活動指針の普及、統括保健師の配置推進、市町村保健活動のあり方の検討と提言、統括保健師人材育成プログラムの開発、中堅期保健師相談プログラムの普及と県協会への支援、新任期を対象にした保健指導会合を開催する。このほかに、地域包括ケアシステムでの保健師機能と役割の実態を把握する。
(6)助産実践能力強化とその体制整備では、助産師就業先の偏在是正への提案、助産実践能力の強化支援、院内助産システムの推進、助産関連施策の検討・提言、実践能力強化とその体制整備に関する全国展開に取り組む。具体的には、助産師出向システムの制度化に向けた提案、助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー)と研修プログラムの普及啓発、評価制度の検討、新卒助産師研修ガイドの普及啓発、産科混合病棟でのユニット管理の提案、助産師の適正配置に関する検討と提言、助産関連事業の全国展開、妊産婦や女性に向けた情報発信と意見収集を行う。妊産婦が多いところに助産師が少ないという偏在問題を、出向システムで解決する狙い。
(7)東日本大震災復興支援事業では、被災した看護職の教育支援、被災県での看護職の研修支援、災害支援金配分団体の事業実施状況の把握と支援、東日本大震災復興フォーラム(仮称)の開催に取り組む。