TRNグループは店舗リース事業、不動産事業、プロモーション事業などを手がけており、その中核を担うのが店舗流通ネット(株)である。同社は中小企業のテナントを対象に、強みであるテナントリーシング力を生かし、店舗リース事業や店舗不動産ファンド事業を展開。店舗不動産ファンド事業では、既存のビルを取得しつつ、自社開発の商業ビルを複数展開するなど、コロナ禍でも事業拡大に積極的な姿勢を見せる。同社の店舗不動産ファンド事業部長を務める金子貴是氏に話を聞いた。
―― 貴社の概要を。
金子 物件の斡旋や保証金の流動化など、飲食店の開業支援を行う店舗リース事業を主軸とする。これまでに3000店ほど手がけてきたが、立地の良い物件確保の機会および収益機会の拡大を図るため、商業ビルの開発・取得を開始した。こうして誕生したのが店舗不動産ファンド事業である。
店舗不動産ファンド事業では、当社で仕上げた商業ビルでファンドを組成していく。このファンドは子会社のTRNインベストメント・マネジメントで運用を行い、ファンドの組成後も安定したビルの運営を行う。最近は既存のビルを取得する傍ら、自社開発の商業ビル「TRUNK(トランク)」を展開しており、業容はさらに拡大している。
―― 事業の強みは。
金子 独自に培ったテナントリーシング力だ。私も同じ道を歩んだが、当社に入社した新卒者は、まず飲食店をはじめとした店舗事業者との接点を持つことから始める。直接経営者と接点を持つことで、潜在的な出店ニーズを汲み取り、最適な出店計画を提案するのが狙いで、営業担当は1人で100~200社を持つ。このような仕組みを作ることで、新規の物件を開発する際には、出店需要の高いエリアを狙って取得するため、自社でリーシングすることができ、結果、投資効率の向上にもつながる。
―― 顧客の傾向について。
金子 飲食店は、100店以上を展開する大手チェーンを中心に出店意欲が落ちている。しかし、当社は1~10店程度を展開する中小企業がメーンターゲットのため、業態によっては勢いがあり、今が出店のチャンスと捉えるお客様も多い。具体的には、席が密集した大衆居酒屋は深刻なダメージを受けているケースが多いが、焼肉やラーメンはコロナ禍においても継続的に新規出店を行っている。
―― TRUNKは名古屋で誕生した。
金子 2019年に「椿町」(名古屋市中村区)と「福島」(大阪市福島区)、20年に「刈谷」(愛知県刈谷市)を開業している。1号店の椿町は、間口が狭い狭小地に立地する施設であったが、JR名古屋駅から徒歩1分と近く、間口は狭いものの、壁面看板や袖看板を目立たせることでリーシングはできると判断し、自社開発の商業ビル第1号としてオープンした。
実際、開業時は1階に「めしや 宮本むなし」、2階に「ダイコクドラッグ」が出店し、3階に居酒屋、4階にATMコーナー、5~6階に寿司と割烹の高級店、7~8階に居酒屋がテナントとして入居するなど、建物竣工前にリースアップした。現在は1~2階の店舗が撤退したが、内覧希望者は継続して視察に訪れており、再び満室になる日は近いと考えている。
―― 福島や刈谷の状況は。
金子 福島は1階に駐車場を備えるため、階段で上がる3階建ての建物を整備した。2階にステーキ店の「いきなり!ステーキ」、3階に美容室の「TERRACE」が出店しているが、いずれの店舗も売り上げは好調と聞いている。刈谷は20年2月にリーシングを完了したが、新型コロナウイルスの影響により、すべてキャンセルとなってしまった。その後、美容関連店舗やフィットネスジムから出店の引き合いがあり、現在、精査を進めている。
TRUNKは駅前の商業立地に特化し、飲食店に限らず、物販店やサービス店など、その地域に必要とされ、地域の発展に貢献する商業ビルとして位置づけている。なお、TRNグループは先ごろ、東京都港区麻布十番に開発用地を取得しており、同地には質の高いサービスを提供するテナントを誘致し、都内初のTRUNKとして整備する予定だ。
―― 今後の事業展開を。
金子 関東、関西、東海の3エリアを対象とし、積極的に駅前物件を取得する。先ごろ取得した「明大前ビル」のように、将来の開発が見込める既存ビルも積極的に取得する考えだ。
駅前に立地するビルは、個人もしくは中小企業で所有する施設が多く、遵法性が満たされていない劣悪な環境にある建物が多い。そのため、近年活発な証券化やファンドへの組み入れは、レジデンスやオフィスビルが中心であり、駅前商業ビルの組み入れは極めて稀であり、難しい状況だ。
当社はこうしたビルも、立地され良ければ取得対象としており、違反箇所を是正した上で、自社のリーシング力を生かしてバリューアップし、ファンドへと供給することで新たな投資商品を生み出す。このビジネスを循環させることで、同業他社の参入を促し、市場を活性化させ、商業ビル業界全体の健全化を牽引していく。
(聞き手・副編集長 岡田光)
※商業施設新聞2385号(2021年3月2日)(8面)