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大阪府、大阪コロナ重症センターI期完成、吉村知事「夏から工事に着手」


23億円でICUやCT整備、ゾーン区分とガラス張りで全体俯瞰、II期の解体工事進行中

2021/1/5

 大阪府(大阪市中央区大手前2-1-22、Tel.06-6944-6198)は、新型コロナウイルス感染症の重症患者が急増した場合に備えて、大阪府立病院機構 大阪急性期・総合医療センターの敷地内に、臨時の医療施設「大阪コロナ重症センター」の整備を進めており、先ごろ、同センター(I期整備分)の内部を報道陣に公開した。規模は7棟総延べ1658m²で、整備費用は23億5000万円。12月15日から運用を開始しており、病床数は30床(重症病床)を数えるが、「いきなり30床を運用するのではなく、最初は少しずつ慣らしていく」(大阪府知事の吉村洋文氏)方針だ。

看護師募集を訴える吉村洋文大阪府知事
看護師募集を訴える吉村洋文大阪府知事
施設内を説明する藤見聡センター長
施設内を説明する藤見聡センター長

 設置場所は大阪市住吉区万代東3-1-56で、大阪急性期・総合医療センターの敷地内に開設した。規模は軽量S造り(プレハブ工法)7棟総延べ1658m²。平屋建ての集中治療ユニット棟、2階建てのスタッフサポートユニット棟、平屋建てのCT棟、平屋建ての管理棟、平屋建ての設備ユニット棟、平屋建ての渡り廊下棟、平屋建ての救急車車寄せ棟の計7棟で構成される。リース契約により整備したもので、整備費用は23.5億円(建物12.9億円、医療機器10.6億円)。設置期間は2年間(2020年11月30日~22年11月29日)。

 計画コンセプトは(1)色分け(レッド・イエロー・グリーン)による職員動線の明確化、(2)非個室、全体陰圧による効率的な患者管理、(3)スタッフステーション(グリーン)から全体管理の3つを掲げている。具体的には、患者と医療従事者・物品の出入り口を分離し、医療従事者の入室から退出および物品の搬入から廃棄・回収を一方通行とし、感染防止に配慮。なお、すべてのICUに人工呼吸器を配備しているが、ECMOは大阪急性期・総合医療センター内の機器を使用する。

 集中治療ユニット棟は中央にスタッフステーション、着衣スペース、脱衣スペース、防護具の着衣・脱衣室、物品・器材・リネン室、汚染回収室を設け、スタッフステーションを囲むようにICUを設置。ICUでは通常、個室のようなついたてを置くが、同センターでは「全体を俯瞰するため、スタッフステーションをガラス張りにした」(同センター長の藤見聡氏)という。これにより、通常は1ベッドを1人の看護師が見るが、同センターでは2ベッドを1人の看護師が見るなど、省人化も図っている。また、ガラス張りにすることで、危険なレッドゾーンで働く時間も短縮。逆に、個室はMRSAに感染した患者や、家族との面会を希望する患者に対し、使用する方針だ。

集中治療ユニット棟の外観
集中治療ユニット棟の外観
ICU(集中治療室)の風景
ICU(集中治療室)の風景

 吉村知事は、報道陣に対し、開設した理由について、「4月の緊急事態宣言が発令した際、いざという時のために、新型コロナウイルスに特化した施設をプレハブでも良いから作ろうと考え、20年夏から工事に着手し、このほど完成した」とコメント。「通常、ICUは個室が一般的であるが、当センターはガラス張りのスタッフステーションで、すべての患者の情報を、一覧で把握できる仕組みを採用。新型コロナウイルスの治療に特化し、重症化に対応する施設として、建設を決めて良かったと改めて感じている」と話した。

ガラス張りのスタッフステーション
ガラス張りのスタッフステーション
CT室の様子
CT室の様子

 その一方で、看護師不足の問題がある。同センターの最大稼働時には、30人の重症患者を受け入れるため、必要となる看護師は約130人を数えるが、現時点で80人程度しか確保できていない。そのため、「12月6日、防衛大臣に自衛隊の派遣を要請した」(吉村知事)と明かし、数人の派遣で合意したという。もちろん、大阪府看護協会とも特設サイトを立ち上げ、同センターで従事する看護師を緊急募集しており、「我こそはという人は連絡を下さい」(吉村知事)とコメントした。なお、II期整備分は30床を予定し、現在、解体工事を進めているが、「I期の運用状況を見てから判断するため、今は保留」(吉村知事)としている。

(岡田光記者)

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