(株)東急モールズデベロップメントが運営する商業施設「たまプラーザ テラス」(横浜市青葉区)が10月に、グランドオープンから10周年を迎えた。開業当時、駅一体型の商業施設として話題になり、今では地域住民の生活拠点となっている。週5回来館する人が16%いるなど支持は厚く、東急グループを代表する商業施設に成長した。長く支持される理由や、直近の動向などを総支配人の西森義展氏に聞いた。
―― たまプラーザという地区について。
地域住民の生活拠点となっている
「たまプラーザ テラス」
西森 たまプラーザは、東急グループが田園都市の中心エリアとして開発した場所。周辺は住宅が多く、裕福な方が多いのも特徴。駅の乗降人員数は1日あたり8万3000人ほど(19年度実績)。1982年には駅前にたまプラーザ東急SC(現、東急百貨店)が完成し、その後、駅一体型の商業施設として、段階的にたまプラーザ テラスを開業していった。
―― 開発は3期にわたって行われました。
西森 07年1月に生活サービス店と大規模駐車場が入る「サウスプラザ」を整備し基盤を整え、07年10月に1期施設が開業し、「トゥモローランド」などの高感度なファッション店やカフェがオープンした。その後、09年10月に2期として南側エリアが開業した。ここは「フードテラス 東急ストア」など日常生活を意識した店やファッション店、雑貨店などを導入した。10年10月には3期としてフードコートなどニューファミリーの需要に応える店や、芝生広場があるゾーンが開業した。さらに13年にクリニックなどある「リンクプラザ」が開業して、現在の形となった。賃貸可能面積は約9500坪あり、百貨店も隣接するため、多様な店舗が揃っている。
―― 来館者について。
西森 19年度の来館者数は2092万人だった。属性でみると実購買層である40代が多いのが特徴。エリアでは施設のある横浜市青葉区が半分程度、隣接する川崎市宮前区が25%と、周辺住民の利用が非常に多い。利用頻度も高く、週に5回以上が16%、週に3~4回が18%、週に1~2回が31%と、毎週来る方が6割以上におよぶ。来館者数の土日、平日の差が少ないのも特徴だろう。
―― いわゆる地域密着ながらハイクラスなアパレルなども多いですね。
西森 駐車場の車をみると高級車が多く、裕福な来館者が多い実感はある。周辺は上質な生活を求める方も多いし、もともと東急百貨店があり、ハイクラスな商品を購入する土壌のようなものがあった。
ただ、2期、3期として開業したエリアには「ユニクロ」などがあり、こういう幅広い価格帯の店が揃っているのもポイントだ。当施設ができる前は上質なものは揃っている街だが、買い求めやすい価格の店が少なく、ニューファミリーや、一人暮らしの方は困ることもあった。そこで、買い求めやすい価格の店、フードコートなど日常的に利用できる店を設け、多くの人が暮らしやすい施設、街になった。当施設が10年間支持されている理由の一つに価格帯を含めて幅広い業種、業態が揃っていることが挙げられるだろう。
―― 開業以来、イベントに力を入れています。
西森 18年度の数字となるが、テナントが実施したものを含めると年間で716本のイベントを行った。いつ訪れても新鮮な気持ちになっていただけるように季節の装飾や、クリスマスイベントやコンサートなど様々なものを実施している。毎月第3土曜日には駅前の広場でマルシェも行っており、新型コロナの状況を見つつ、再開していきたい。
―― 足元の動向は。
西森 月によってばらつきがあるが、8月は遠方に行かずに地元で消費しようという動きもあったためか売上高は前年同月比で90%以上まで回復した。9月は昨年の増税によるかけこみ需要の反動もあって84%程度だった。ただ10月は95%まで回復した。昨年、増税の反動で売り上げが少し下がっていた面もあっただろう。10月はGo To イートが開始したことも大きい。Go To トラベルも、旅行前に服や雑貨などを購入することが多いので、売り上げに寄与したようだ。
―― 改めて施設やエリアのポテンシャルは。
西森 およそ10年後までは青葉区、宮前区は人口が増えていくと予想され、周辺は伸びしろがある。たまプラーザ テラスは「ライフスタイル・コミュニティ・センター」をコンセプトに掲げ、買い物するだけではなく、時間を過ごしてもらい、自分を磨いたり、すてきな時間を過ごす場所として運営してきた。19年度の売り上げは248億4300万円だったが、今年は大変な時期が続く。ただ、ライフスタイル・コミュニティ・センターとしてこの方向性は変えず、働く場の提供や交流機会の創出など新しい機能を取り入れ、時代の変化に対応した場として成長していきたい。
(聞き手・副編集長 高橋直也)
※商業施設新聞2374号(2020年12月8日)(2面)